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昔話

作者: 古狗

I’ll blow your house down!!

お前の家を吹き飛ばしてやる!!大きな声がしたかと思うと、オオカミは空高く吹き飛ばされてしまいました。オオカミにアメーバのような寄生虫が取り憑いていて、誰かがオオカミごと吹き飛ばしてしまったのです。


高く高く舞い上がったオオカミは遠い遠い国の野菜畑に落ちて蕪になりました。蕪はこうやって世界中に広がっていったのです。元オオカミの蕪がやってきた国には女王様がおりました。女王様は毎日、毎日鏡に向かって問いかけていました。

「鏡よ、鏡。世界で一番美しいのは誰。」

「女王様。それは貴女様にございます。」

その答えを聞くのが何よりの楽しみでした。


ある日のこと、いつものように女王様が鏡に聞くと鏡は答えました。

「蕪です。」

女王様は耳を疑いました。何かの聞き間違いでしょうか。もう一度聞くと

「蕪です。」

と同じ答えが返ってきました。心なしか口調も素気なく感じます。

「蕪って何よ。娘の白雪やら大臣の娘、百歩譲ってどこぞの村娘ならまだしも蕪って何よ。」

と女王様が詰め寄ると、鏡は至って冷静に答えます。

「蕪は蕪です。そんなこともご存知ないんですか。それにその美しさは、白雪様や大臣様のご息女、国中の娘供が束になっても敵いません。」

最近、めっきり大人っぽくなった義娘のことを気にしていた女王様は、妙に安心してしまい

「じゃあ妾と比べたらどうであろうの。」

と口走ってしまいました。

鏡はいとも冷静に

「足元にも及びませんな。むしろ蕪と張り合えると思ってたことに驚きですよ。」

と言い鼻で笑いました。女王様は叫びました。

「おのれ蕪め。今こそ蕪を根絶やしにしてくれる。地獄の果てまで追っていき、蕪を抹殺するのじゃ。」


蕪抹殺の密命を帯びた殺し屋はイワンの野菜畑にやってきました。大きな蕪をうんとこしょどっこいしょと引き抜くと、そのまま川に投げ捨てました。

「あばよ、二度と戻ってくるんじゃねーぞ。」


大きな蕪はどんぶらこ、どんぶらこと流れて行きそのまま海に出て、大きな大きな島に辿り着きました。

そう、鬼ヶ島です。


そのころ鬼ヶ島を支配していたのはキリギリスでした。数多いた鬼を蹴散らし鬼ヶ島に君臨していたのです。しかし、夏が過ぎ秋が冬になり食べるものに困ろうかという段になり、いよいよ我が天下もこれまでかと憂いを帯びるようになっていました。あてどなく歩いていた海岸で大きな大きな蕪を見つけたのです。キリギリスはこれぞ天の恵みと喜んで、持ち帰った蕪をそのままむしゃむしゃ食べました。

蕪はあまりに大きくその日では食べ終わらず、次の日にも食べ終わらずその次もその次もとうとう冬を越すほどになってもまだ残っていました。


元はオオカミの蕪です。キリギリスは食べる程に強くなり、春になる頃にはすっかり無敵の強さになっていました。

一方の蟻は夏の頃からの働き詰めが祟り、冬の間に一人倒れ一人倒れ、春一番の吹くその前に最後の一匹も旅立ってしまいました。鬼ヶ島は全てキリギリスのものになりました。


そこへやって来たのは桃太郎です。桃太郎はあまり賢くなかったので、キリギリスのことを知りませんでした。大きな緑の身体をして頭に二本の触覚が生えたキリギリスを鬼だと思い込んでしまいました。


キリギリスはとても強く、勇敢にも飛びかかった猿をいとも簡単に蹴飛ばしてしまいました。猿は大きな岩に体を打ち付け、そのまま気絶してしまいました。

キリギリスの並々ならぬ力を見て取り、奇襲を試みた雉が空高く飛び上がると、キリギリスはそれよりずっと高く跳び上がり雉を地面に叩き落としてしまいました。


誰より強い、桃太郎より強い犬はそれを見て、もうすっかり恐怖に打ち震えてしまいました。犬はいつだって打ち震える生き物なのです。

それを見て桃太郎はもう破れかぶれです。手にした桃太郎ソードを握りしめキリギリスに飛びかかって行きました。

桃太郎ソードは新聞紙を丸めて作ったものです。桃太郎はどうなってしまうのでしょうか。


桃太郎が斬りかかるとキリギリスの身体は真っ二つになりました。それもそのはずです。おばあさんが出発前に念を込めていたのです。


「桃太郎ソードに私の魔力を一つだけ宿すことができる。鬼を蹴散らす獄炎の力とキリギリスを真っ二つにする力、どちらを選ぶ。」

桃太郎は賢くなかったので、よく分からないままキリギリスを真っ二つにする力を選びました。

おばあさんはそれを見て桃太郎の行く末を案じましたが、まぁいいやとそのまま送り出したのです。


鬼ヶ島のキリギリスを退治して、宝物を山ほど積んで桃太郎は村に帰りました。宝の山を見て村人達は大喜び。鬼退治にはこれっぽっちも貢献していませんが、犬はとても嬉しそうです。尻尾を振り喜びに打ち震えています。犬はいつだって打ち震えるものですし、素直で可愛らしいものです。


桃太郎が持ち帰った鬼の死骸なるものを見ておばあさんは驚きました。何とあの憎き蕪が姿を変えたものだったからです。

そう、おばあさんとは名ばかり、その正体はあの美しき女王だったのです。


女王様は大層喜び、かの仇敵を退治た桃太郎を大変褒め称えました。特に働きのなかった犬も暖かい布団を与えられ大変可愛がられました。犬はいつだって可愛がられるべき生き物なのです。


女王様の魔法でキリギリスは蕪になり蕪はオオカミに戻り、寄生虫に感染していることが分かりまた吹き飛ばされてしまいました。

I’ll blow your house down!!

お前の家を吹き飛ばしてやる!!

国を治める者として公衆衛生に気を配る女王様は病原微生物がお嫌いだったのです。


こうしてまた歴史は繰り返すことになってしまいました。

おしまい。

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