32.エピローグ
ちょっと短め。
主人公以外の視点あり。
私の発明品、パソコンとタブレット、スマホ等の情報端末。
そして魔法デバイスの発売が開始された。
それと同時にネットワークの構築工事もエルカールメニア王国とその友好国で開始され、僅か一週間で全域を覆った。
土と創造の混成魔法で風化の魔素で消えない塔を建て、そこに魔道具を取り付けるだけだから早かったし、一本で大体都市の5倍の範囲を覆えるからな…数も少なく済んだようだ。
そして、それに伴い私の存在が世間に広まった。
パソコンや魔法デバイスの発明者、そして…魔王を救出した次の魔王、世界中の魔物の被害を減らした英雄、そして神殺しとして。
予想通り魔王関係も合わせて公表された。
普通ならこんな子供がそんなことをした、と言われても信じられなさそうだが…私の聖霊級の実力、二つの異能、免許と魔道具関連の実績が合わさり、多くの者に信じてもらえたようだ。
無論、全員とはいかないが…まあ当然だよな。
そして今の私は…直近のやることタスクが完了したため、部屋で邪神の力の解析に注力していた。
アリスに送る歯車機構はまだ時間あるし、早くてもこれが終わった後で。
後もうちょっとで終わりそうなんだよね…早く魔術使ってみたいし。
そうだな…三日間ぐらいあれば終わるかな。
~アンドリュー・フォン・インサニティside~
「はっ、はっ…はぁっ、ぁぁぁ…」
家の庭に張られた結界の中で、俺は痛む頭を押さえることもできずに、倒れ伏す。
それを見ていたエリサの回復魔術を受け、気合で再び立ち上がり、魔法の研鑽を再開する。
それを、エリサは理解できないものを見るような顔で眺めている。
「…理解、出来ないか」
「…ん、理解不能」
だろうな。
目を閉じ、思い出す。
俺がエリサに魔法の師事を頼んだ時言われた言葉を。
『…アンドリューがリコリスに追いつくことは不可能…追いすがることも、また。
差は開くのみ』
ああ、分かっている。
あの子は聖霊級の実力と成長速度を持っている。
それに対し俺はただの人間、異能すら持たない。
海と水たまりという表現すら生ぬるい、竜種が如き絶対的な差がそこに横たわっている。
それでも…ああ、それでもだ。
「『それでも、俺はあいつの親だ、諦めることは出来ん』!」
~ニーナ・フォン・インサニティside~
ズザァァ…
「はぁ、はぁ…」
結界の張られた我が家の庭で、私は投げ飛ばされ、立ち上がろうとしている。
それを私に指示してくれている獣人の方が、真剣な眼差しで見つめている。
高位獣人。
獣人種の高位種、絶対的な身体能力を有し、ただの人間では武術では逆立ちしても勝てない。
私はエリサが紹介してくれた彼女から、武術の指南を受けていた。
私と夫に戦場に出る気はない。
これはあの子たちのため。
私に魔法の才能はない、リコリスは夫に任せる。
私はアイリスのために、こうして鍛えている。
…いえ、違うわね。
これはただの我儘、自己満足のための行為。
あの子は、高位獣人が魔法かオーラで《身体強化》した時並みの力を持ってる。
成長速度も常人のそれじゃない、私が追いつくことは出来ない。
でも…ええ、それでも。
「諦めることは、出来ない…!」
~ムーンside~
それに、最初はまともな意思などなかった。
あるのはただ、訳の分からない同族以外への殺意のみ。
その衝動に従い、生まれて最初に目に入った、小さく脆弱そうな生き物を殺そうとした。
その時、自らの中に何かが入ってきた。
それは温かく…は、さほどなかった。
かと言って冷たくもなかった。
まさに中間、温かさと冷たさが同居しているような何か。
それでも、冷え切った殺意に塗れた身には興味を惹かれた。
そして…それは、あり方を変えられた。
同族以外への殺意を好意へ。
自らを生み出した…母へ親愛を。
それは分かっていた。
自らと母を繋ぐ魔力的パスから伝わる感情を。
母は…全てに何かを隠している、壁を作っている。
あの強き耳が長い者にさえも。
それは、母に寄り添うため、頼られるため、自らを作り替える。
全ては親愛なる母の為に。
かくして、それは目覚める。
親愛なる母のため、月を冠する狼はその目を、存在を開放する。
殺意から反転し希望に塗れ、母から月を追う狼の影響を色濃く受けた者。
その名は…イタフ。
月を追う狼の名、憎しみを意味する言葉である。




