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原初の魔人  作者: 彼岸花
第1章 転生と魔王
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03.桜

遅れました、申し訳ございません…先ほどまで寝ていました。

 さて、今の私は意識の片隅にムーンを捉えつつ、4属性の複合魔法である氷と雷、植物を習得、今は灼熱の練習中。

 そして休憩中、考えていることがある。

 件の魔力量を増やすトレーニングのことだ。


 オドを外に放出するのがダメなら、電池の様に物に込めるのはどうか、と考えたが、私の魔力量に耐えられるようなものが存在しない。

 そこで目を付けたのが、私とその物体の差だ。

 なぜ私はこれほどの魔力を持ちながら耐えられるのか?

 答えは、魂が魔力と体を安全な形で隔離しているためだ。


 ならば、魂を持つ存在に魔力を与えれば大丈夫だ。

 だが、ムーンは魔物の魔素の塊のため、下手にバランスを崩すとよくて体調不良、悪くて霧散する。

 そこで目を付けたのが、植物魔法を使った植物の改変である。

 植物であれば生き物ほどではなくとも物体よりもはるかに多くの魔力を蓄えられる。


「と、いう訳で実験を始めます」


 生まれてから1年と8か月ほど、場所はインサニティ領の我が家の前にある広場、中央にある大木付近である。

 両親に話したらこの木を使っていいと言われたので遠慮なく実験させてもらう。


「では…」


 大木に両手を触れる。

 水と土の属性魔力で植物の属性魔力を精製しながら、前世の人々からとある植物に関する記憶と、この世界で見た人々の記憶を見た記憶から知識を引っ張って来て設計図を組み立てる。


 外見はより大きな、この広場を7割覆う巨木、蕾ありで葉はなし。

 内蔵魔力が枯渇し始めたとき以外は周囲から魔力を吸わず、私の魔力のみを吸い取る、判別は個人によって違う魔力波長で。

 得た魔力を使い魔物の魔素は風化の魔素で強化と活性化の魔素へ変換、強化と活性化の魔素で根を張る地面の強化や栄養など諸々を調整。

 余った魔力を全て蕾に回し、あえて効率の悪い形式で花を咲かせる。


「…よし」


 設計図完成。

 これに沿って植物魔法で…完了。


「では、起動!」


 大木から手を離し魔法を起動させる。

 この魔法…すでにある植物の改造も離れた状態で魔法を維持するのも、離れた状態で魔法を起動するのも、全て【魔力支配】のある私ならではだ。


 大木がメキメキと音を立てながら大きくなっていく。

 まだ魔力を込めていないため周囲のマナを吸い、初めから生い茂っていた葉っぱを取り込んで栄養として大きくなっていき…設計図通り広場の7割を覆うほどになって止まる。

 葉っぱがないため光合成とか葉っぱから水を吸収することは出来ないが、その辺は魔力で補う。


「よしよし…」


 第一段階完了。

 次、私が魔力を全て込めても耐えられるか、だ。

 大きくなった巨木の幹に片手を添え、魔力を注ぐ。


 魔力が注がれたことでマナの吸収が停止し、蕾が花開く。

 その色は、淡紅色…つまり、外見は桜の巨木である、品種は伊豆多賀赤と呼ばれるものに近いか。


「「おおー!」」


 ちなみに、咲いている花は花弁が風化と魔物の魔素を除いた魔力で出来てるため、がくから離れたら3時間で霧散する。

 魔力を安全な形にしたうえで固め、花弁として徐々に放出することで溜め込んだ魔力を素早く放出するようにしている。

 ただし貯めた魔力が一定値まで減ったら、花弁が自然と落ちないようにすることで景観を保っている。

 あと、将来的に私の魔力が増えて溜め込ませる魔力が増えたらサクランボが採れるようにしようと考えている。


「きれいねー、これはなんていう木なの?」

「ん? いや、私の考えたオリジナルだから」


 そう、この世界には桜が存在しない。

 進化の途中で原型が無くなったのか、淘汰されたのか、端から誕生しなかったのかは不明だが、少なくとも私が見てきた人たちは全員聞いたこともないようだ。

 と、殆ど入れ終わったな。


「よしよし」


 溜め込んだ魔力…オドは、問題なし。

 花弁も、問題なさそうだな。

 ちゃんと強化と活性化の魔素のみで、属性魔力が顕現する程偏っていない。


「…リコリス」

「…んぇ? あ、はい」


 ああ、まだ私の名前の紐づけが完全じゃないな、他の人を呼んでるのかと思った。


「これ、同じデザインの普通の植物は作れる?」

「え? 出来るけど…いる?」


 エリサの持ってる植物とは性能面で比べるべくもない差があるが…


「ん」


 いるらしい。

 という訳で領地にある木を二本桜にして一本を丸ごと空間魔法で回収してもらい、もう一本は両親が領地に欲しいと言ったためそのまま。

 ちなみに、その時作ったのはまんま伊豆多賀赤と同じ…やつを、この世界ように調整したやつだ。

 まんまだとこの星の夏とか冬の寒暖差に耐えられん。


 夏は火属性の魔力が、冬はそれに加え水属性…つまり、氷属性が、強化と活性化の魔素で気温が両極端になる。

 具体的に言うと、夏は50とか60、冬は-30とか-40である…うん、無理。

 強化と活性化の魔素で耐えられてるだけでその恩寵が受けられないと生態系崩壊する。


 そういえば…この星の時間って前世と同じなんだよな。

 1秒は1秒だし、60秒は1分だし、60分は1時間だし、24時間は1日だし、28~31日は1か月だし、12か月は一年だし…7日は一週間だし。

 曜日、は私が勝手に翻訳してるだけで実際は違うけど…逆に言えば、それ以外はまんま前世の地球だ。


「そういえば、この木は何て名前にするの?」

「え?」


 思考の海に浸かっていたら、母さんに声をかけられる。


「私が名付けるの?」

「ええ、だってリコリスが作ったんだし」

「あ~…」


 どしよ。

 品種名の伊豆多賀赤をそのまま、はなんでそんな名前に、て感じだし…んじゃあまんま桜?

 んー…下手に変えると私が間違えそうだし、桜でいいや。


「桜で」

「桜、いいわねー」


 桜は変異しやすい植物だ、それは私が作った桜も変わらない。

 両親が広めるって言ってたし、ここから先様々な品種が生まれ名付けられていくだろうな。


 …とまあ、そんなわけで魔力量を増やすトレーニングとして、屋敷前に満開の桜が咲くようになりました。

 領民にも好評で、観客も来ているらしい。

 まあ、魔力の塊である花弁は淡く光っていて幻想的だしな。

 元日本人の私としては幹に注連縄巻いてどっかに鳥居作りたいなー、とか思ってたり。


 理想の位置は桜を挟んで屋敷の反対側だな。

 だが果たしてこの世界の人々の感性に合うのかが不明だ。

 考案した経緯は見た人の中にデザイン系の職業の人がいて、その人の知識を参考にした、とでも言えばいいのだが…広場の桜、彼岸桜と呼ばれ始めた木のおかげで遠くから人が集まり始めてるしな。

次回も書き溜めがまだ残っているため翌日に投稿予定です。

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