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転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど!?  作者: 水月華
第3章

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阿鼻叫喚ですわ


 スカートを持つ手に力を入れて、上に上げる。

 膝が見えるであろう位置まで上げた時、突然体に衝撃が走り、視界は青一色だった。

 何が起こったか理解する前に、眼前に鼻血を垂らすメアリー様が覗き込んできた。


「へへへへヘンリエッタ様、ダメダメダメです。落ち着いてください。ヘンリエッタ様の人生が終わります。止めてください」

 

 とりあえずメアリー様も、殿方の前で鼻血を出してしまうのは尊厳が危ない。

 ここでわずかに冷静さを取り戻したわたくし。

 メアリー様の鼻血はまだわたくし以外見ていないことを信じて、隠すために抱き込んだ。


「うぶっ⁉︎」


 くぐもった声を上げるメアリー様に小声で話しかける。


「メアリー様、まだ鼻血は誰にも見られていませんわね?」

「皆さんヘンリエッタ様に注目していましたので大丈夫かと……。ヘンリエッタ様、それより制服が汚れます! 離してください」

「いいえ、制服は紺色だしそんなに目立たないわ。淑女が鼻血を出すなんて、社交界で笑い者になってしまいます。隠さなければ」


 そんな風にボソボソ話していると、悲鳴のような声が聞こえた。


「ヘンリエッタ様! メアリー様! あなた方は何していますの⁉︎ いい加減に離れなさい!」

「私たちは何を見せられているんだ……?」

「パトリシア様、いけません。今は動けませんわ。動いたらメアリー様の人生が終わります」

「あなたたちの人生終わりかけているわよ! スカートが捲れていますわっ」


 パトリシア様はまだ混乱しているようだけれど、殿下たち男性陣は平静に戻ったようだ。良かった。後はメアリー様の鼻血を何とかしないと。

 いや、先にスカートか。見ると、わたくしもメアリー様も太ももの半ばまで捲れている。

 よし! 下着は見えてないからセーフっ!

 メアリー様も大分落ち着いたのか、鼻血も止まったみたいだ。鼻血って止まらない時は止まらないから、よかったわ。

 少し、金の刺繍のところに血が付いてしまったけれど、誤魔化せるでしょう。

 ……今度は男性陣が顔を茹蛸のようにして背けているけれど。冷静になったと思ったけれど、パトリシア様の言葉でスカートが捲れていたことに気がついたらしく、ウブな反応をされてしまったわ。

 トミーが意外とこういう時は無言になるのは発見ね。後で大変なことになるかもしれないけれど。

 わたくしとメアリー様は立ち上がってスカートを直す。


「まあまあ、殿方はこの程度で赤くならないでくださいませ」

「何を仰っているの⁉︎ 淑女が脚を見せるなんてはしたないですわ!」

「き、君たちには羞恥心がないのか⁉︎」


 パトリシア様とダニエル様が、顔を真っ赤にして怒っている。

 

「まあ、流石に失礼ですわ。わたくしたちにだって羞恥心がありますわ。けれどこういうときは周りの反応で羞恥心が助長されるものです。ですから皆様は恥ずかしがらないでくださいませ」

「言ってることがめちゃくちゃだぞ」

「もうわたくし、ついていけませんわ」


 ダニエル様はわたくしたちに大いに呆れたようだ。

 パトリシア様は疲れたように、大きくため息を吐いた。


「ぷっあははっ……! も、もう我慢できないっ。ハハハッ」


 そんな空気をぶち壊したのは、殿下の笑い声だ。

 そんな風に笑う殿下を見たことがないので、とても驚いた。

 わたくしが知らないだけかと思ったけれど、皆様驚いているので珍しいことのようだ。

 お腹を抱えて笑う殿下は、年相応というより幼く見える。

 なんだか一気に親近感が出てきた。今までは‘’上に立つ者‘’として隙のない殿下しか知らなかったから、殿下も人間なんだなと思った。

 殿下の笑い声は収まらない。どころか、今度はトミーも吹き出した。

 わたくしとメアリー様も釣られるようにして笑い出す。

 パトリシア様とダニエル様は、呆れた表情から仕方ないという風に。

 練習場には笑い声が響いた。

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