ツンデレは良いものですね
つい悪戯心が湧いてしまう。
わたくしは顔がニヤつくのを必死に抑えながら、ダニエル様に話しかける。
「まあまあ。厄介なこととはわたくしが不快な思いをしないようにということでしょうか? やはりダニエル様はお優しい。ほとんど交流のなかったわたくしにまで気遣っていただけるとは、感激ですわ。今までの態度を心からお詫び申し上げます」
「ちっ違う! いや、スタンホープ侯爵令嬢、その顔をやめなさい! 謝る態度かそれが!」
「どうしても笑ってしまうのは申し訳ありません。ダニエル様があまりにも微笑ましいもので、つい顔が綻んでしまうのですわ。それにわたくしの名前はヘンリエッタですわ。先ほど家名よびはやめようと話したばかりではありませんか」
「ほほえまっ⁉︎」
ダニエル様は顔を真っ赤にして、絶句した。メガネを何度も押し上げているのがまたチャーミングですわ。
本当にメアリー様が虜になってしまうのも頷ける。いや、恋に落ちているわけではないんだけれども。
なんだろう、あ、猫か。嫌がられるほどに構いたい衝動が抑えられない的な。愛でたい。ツンとされるのも喜びに変換されてしまう。
わたくしマゾに目覚めてしまったのかしら。
その時、練習場に奇声が響きわたった。
「あああああっ⁉︎ 二次創作であったダニヘリがここにいいぃぃぃぃ‼︎」
「メアリー様⁉︎」
どうやらメアリー様が運悪く起きてしまったようだ。
悶えて転げ回っているメアリー様に、パトリシア様は驚いている。いや当たり前か。一般人でも地面に転げ回っていたらドン引きするわ。
後、ちょっとわかってはいましたが、メアリー様って結構なオタクですわね。
本編でなかったであろうわたくしたちの絡みであんな風になってしまうとは、ガチ勢ですわね。
と、急に体が引っ張られた。驚いて振り向こうとするけれど、目の前が真っ暗になる。
「ダニエル……少し向こうで話そうか」
「殿下、落ち着いてください。スタ……ヘンリエッタ嬢が暴走したんです。俺は巻き込まれたんです」
「ああああああっ⁉︎ 親密にならないと聞けないダニエル様の俺いただきましたあああああ⁉︎」
「メアリー様がご乱心ですわ⁉︎ だっ誰かあぁぁぁ」
「姉上? 僕はもう姉上を閉じ込めた方がいいんじゃないかと思ってしまいますよ? きっと兄上と父上も賛同してくれるでしょう。本格的に行動に移しましょうか」
一言で表すなら阿鼻叫喚。
殿下はなんか殺気放っているし、ダニエル様は顔面蒼白だ。メアリー様は鼻血吹いているし、パトリシア様はパニック状態。トミーは闇堕ちしてます?
トミーの最後の言葉は幻聴だと信じたい。上から聴こえているからトミーに抱きしめられているらしい。力強いです。え、幻聴ではない?
やばいやばいやばい。
この状況は流石にまずい。元凶はなんだ? はい、わたくしです。まごうことなき、わたくしが戦犯ですわ。
なんとかしてこの場を収めないと。
主にダニエル様の命とメアリー様の尊厳が危ない。
わたくしは渾身の力で引き剥がし、叫んだ。
「わたくしが悪かったです‼︎ どうか皆様、落ち着いてください‼︎」
ここで冷静ではないわたくしの思考は、1つの理論を思い出した。
――自分以上に乱心している者を見ると落ち着くの法則――
冷静ではないわたくし。周りを見るが、特に目ぼしいものはない。この周りに何もない状況で皆以上に乱心する方法はと考えて、咄嗟にスカートを掴んだ。
もう一度言おう。この時のわたくしは全くもって冷静ではない。だからこそ貴族令嬢であることなんて頭からすっぽ抜けている。
「皆様、お詫びにわたくし、脱ぎます! わたくしの羞恥心と引き換えにお許しくださいませ‼︎」
その言葉と共に、スカートを捲り上げようと腕に力を入れた。
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