また一波乱ありそうですわ
ということで殿下直々の指導のもと、メアリー様の魔術練習にわたくしたちも加わることになった。
メアリー様は目を白黒させていて、飲み込んだ頃には殿下もバーナード様もいなくなっていた。
自分に何が起こったのか信じられないようで、頬をつねり始めている。
「メアリー様、赤くなりますわよ。おやめなさいな。気持ちはわかりますけれども」
「……どうしてこんなことに?」
「わたくしもよくわかりませんわね」
パトリシア様がメアリー様を現実に引き戻した。2人とも思うように本当に怒涛の展開だった。
とはいえ、これはいい感じだと思う。きっとゲームとは大きく異なった方向になっているだろう。
「とにかく、道筋が見えたということで喜んでおきましょう。そろそろ教室に戻らないと」
「そうですわね。行きましょう」
◇◇◇
昼休み。今日は忘れずにトミーを誘う。お兄様も迎えに来てくれて皆で食堂に向かった。
メアリー様もだいぶ緊張をしなくなったようで、食事を楽しむ余裕も出て来たようで何よりだ。
でも時々パトリシア様の手元を見ながら食事をしている。そろりと見ていて、なんだか可愛い。
食事を食べ終わる頃、なぜかトミーの顔が険しくなった。トミーが見る方向に視線を向けると、殿下とバーナード様が来ていた。
「やぁ、迎えに来たよ。善は急げとも言うし、早速始めようかと思うんだけれどどうかな?」
気のせいだろうか、いつもと笑顔が違う。なんだか、嫌な予感がする。
と、ちらとトミーを見た。そしてトミーから冷気が……。
あああああこれも目当てですか。あと主語を省いているのもわざとですね。
メアリー様のためなら、こういうことはしないでいただきたい。
「……姉上、なんのお話でしょう」
目が笑っておりませんわ。
最近、トミーをほったらかしてしまうことが多いので、これ以上刺激したら本当に恐ろしい。まだ日程は決まっていないけれどお出かけの予定もあるし、あまり刺激したくない。
よし、逃げよう。
「まあ、わざわざ迎えに来てくださるなんて、殿下は寛大ですわ。さあ、メアリー様、頑張ってきてくださいね」
「え?」
「パトリシア様、メアリー様のことよろしくお願いしますわ」
「え、ええ」
さすがパトリシア様。この流れでわたくしがどう動こうとしているか理解してくれた。
しかし、納得しない者もいる。
「おや、ヘンリエッタ嬢も行くと思っていたのだけれど」
「殿下、申し訳なく思っていますわ。しかし、わたくしお兄様とトミーと約束をしていましたの。わたくしは先に約束していた方を優先させていただきますわ」
「へぇ。ヘンリエッタ嬢は身分差を考慮しないのかな?」
こっちも圧がすごい! しかしここで負けるわけにはいかない!
「ふふ、もちろん殿下が‘’命令‘’するのであれば、わたくしは臣下としてお供いたしますわ。しかし、今回の場合は‘’お誘い‘‘ですもの。それに寛大な殿下であれば、わたくしごときが誘いを断ろうと不快に思うことはございませんでしょう?」
圧に負けないように、強気の態度を心がける。
ここで殿下が‘’命令‘’に変えたら、自分で狭量だって認めるようなものだからね!
さあ、どうする‼︎
「……そうか、私を信頼してくれているようで何よりだ」
(勝ったわ……‼︎)
「えぇ――」
「それじゃあ、放課後はまだ空いているかな?」
「へ?」
「どちらにせよ、時間は作らないといけないだろう? やることは山のようにあるからね。昼休みは兄弟での親睦を深めてもらって構わないけれど、放課後はキャンベル男爵令嬢のためにも時間をもらわないと」
そうですね。それはそうです。
ですが、ちょっと準備期間が欲しかったかなぁ⁉︎
同日の朝と昼よ⁉︎ 行動が早すぎてびっくりですわ。
お兄様とトミーにバレるのも時間の問題だから、なんとかそれっぽく言っておこうと思ったのにいえてないんですよおおおお!
ホラァ、殿下が煽るから、トミーからまた冷気が出てるじゃないですかあ。
ていうか、わたくしの返事待ってます?
ここは断ったらメアリー様にも悪い。うう、作戦をそのまま使われている。断れない空気にされた……。
「もちろんですわ。メアリー様のためですもの」
「ふふ、それじゃあ2人とも、行こうか」
「は、はい」
メアリー様は心配そうに、パトリシア様は複雑な表情で去っていった。今はパトリシア様の感情を読む余裕がない。
この後のことを考えて、思わずため息を吐いた。
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