メアリー様に確認します
学園にて、わたくしは早速メアリー様に学んだことを話した。
ちなみにパトリシア様も、悪くいえば道連れにして話に加わってもらっている。
優しく、正義感のあるパトリシア様なら、わたくしが首を突っ込もうとしている時点で一緒に来てくれるので知っておいた方が良いと考えた結果でもある。
「夢……ですか。そんな夢に惑わされることはないと言いたいところですが、人の命も関わっていることですし対策は練っておいて損はありませんわね。それが外れれば問題ないのですから」
「そうですわ。やるだけやってみましょう。そもそも魔術がうまくなれば、成績も上がりますし」
結局、イベントのことはメアリー様の夢ということにした。口八丁手八丁で、本当に起こりそうだと不安を抱いているように見せる。
それならば、半信半疑でも協力してくれると考えたからだ。幸い、パトリシア様は納得してくれた。
「すいません。私のことで」
「メアリー様が気にすることではありませんわ。ヘンリエッタ様のいう通り、成績にも関わることですしわたくしも協力します」
「ありがとうございます」
なんだろう、わたくしがいうよりパトリシア様の方が頼り甲斐がある気がするのは。
くっそう、なんだか負けた気がする。わたくしも頑張らなくては。
「それで、父に聞いたのですけれどまずは魔術に関しての知識が基礎として大切なことだそうですわ。メアリー様は魔術の知識はどのくらいなのでしょう」
「えっと、私、ここに入学するまで魔術の勉強をあまりしていなくて。養父からは学園で習うことだし、今はマナーの方が重要と言われてしまっていたのもあり……」
なんと、わたくしの予想が当たってしまった。恐らく男爵の魔力保有量も、潤沢というわけではないのだろう。
だからこそ、マナーを優先した。うん。理屈はわかる。
そんな胸の内を悟られないようにしながら、話を続ける。
「そういうことですの。ではメアリー様、授業でわからないことはありますか?」
「恐らく大丈夫だと思います。たまにある小テストも合格はしていますし」
「そもそもメアリー様は特進クラスでしょう。地頭は悪くないはずですわ」
パトリシア様の言葉に、そうだったと思い直す。
「失礼しました。そうですわね。なんというかクラス分けの意味を忘れていましたわ」
「ヘンリエッタ様は……おかしなところが抜けていますわ」
「ええ、色々あったので気にしていませんでしたわ。申し訳ありません。では次の段階ですわね。もう一つ魔術に関してはイメージが大事なのだそうです」
「イメージ……ですか」
「はい。光とはどんなものか。一つの答えだけではなく、あらゆる方面から見た光をイメージできるとやりやすくなるそうですわ」
「なるほど……」
メアリー様は考え込んでいる。わたくしも光についてイメージしてみたが、あやふやになってしまう。なんだろう、意外と難しい感じがする。
「参考までに、お2人のイメージを聞きたいのですが……」
「それがいいですわね。わたくしは水属性ですが、流れるというふうにイメージしていました。水は流動的で形は一定ではない。そして時に強くこちらを道連れにするように、時に優しくこちらの傷を癒すように流れる勢いも変わるようなイメージを持っております」
これはあくまで今まで言語化していなかっただけで、わたくしの中にあったものだ。一緒にお兄様のイメージも伝える。
次にパトリシア様にもお願いする。
「パトリシア様は風属性ですね。どのようなイメージがありますの?」
「そうですわね。守るべきものは優しく、仇成すものには荒々しく……と言ったところでしょうか。風は一見穏やかなものに感じますが、一方で災害になるほどの強さを発揮することもあります。そのことを考えますと、決して甘くみてはいけないと思いますわ」
メアリー様はわたくしたちの話を聞いて、また考え込む。
やはり難しいな。もう少しヒントが欲しいけれど。
「……あとは……殿下にも聞いてみましょうか。学園で最強と言っても過言ではないお方ですから、また違った見方もあるかもしれません」
パトリシア様の言葉に、固まってしまった。




