まずは情報収集からですわ
さて、目下の課題は2つだ。
まず一つ。イベントが「メアリーの覚醒」であることが目的ならば、メアリー様が光魔術を使いこなせるようになることが必要だ。
けれど、光魔術は他の魔術に比べてクセが強い。その分強力な魔術も多いのだけれど、使いこなせるのは一握りということだ。
もう一つはメアリー様だけでなく、周りの協力もあれば例え覚醒に至らなくても被害を最小限に抑えることが出来るのではないかと考えている。
とりあえずわたくしは邸の書庫で魔術に関する本をめくる。優先度としてはメアリー様が覚醒できる方が重要だと思うので。
「うーん……。光魔術……適正者は少なくないけれど、使いこなせるわけではないのね。他の属性では基本的な魔術は適性があれば、誰でも使うようになれるけれど、光魔術はその基本魔術すら使いこなすのが難しい……。やはり魔力の消費量が一番の課題なのね。膨大な魔力が必要……。この書き方だとわたくしの魔力保有量でも怪しいくらいなのね。トミーほどの魔力保有量なら行けそう。どちらにしても適正ではないのだけれど、比較はしやすいわ。ということはメアリー様の魔力保有量はトミー以上ということかしら。それを使いこなすとなると確かに難しいわ。トミーだってまず魔力コントロールから始まっているわけだし、それを踏まえると時間はほとんど無いのかも……」
「何をブツブツ言っているんだ?」
「きゃあっ」
突然の第3者の声に、わたくしは文字通り飛び上がった。
心臓が口から出そうなほどバクバクと音を立てている。
振り返るとお兄様が、こちらも驚いた顔で立っていた。
「そ、そんなに驚くとは思わなくて、ごめん」
「い、いえ。わたくしが気がつかなったのが悪いですわ」
気まずさを誤魔化すようにお兄様は咳払いをした。
「それで、どうしたんだ? 今になってそんな基礎的な本を読んでいるなんて珍しいじゃないか」
「メアリー様が悩んでおられるので、何か力になれないかと学び直しておりましたの」
「へティは優しいな。どれ、僕も一緒に調べようかな」
「え? ありがとうございます」
まさかそんな申し出をしてくれるとは。1人ではどうにもできないのでありがたい。
「メアリー嬢の適性はなんだい?」
「光だそうですわ」
「なるほどそれは確かに、悩むだろうね」
「そういえばお兄様は風と水の2属性持ちでしたわね。やはり違いはあるのですか?」
お兄さまは珍しい2属性持ちだ。基本1人1属性のことが多く、2属性持ちは稀だそうだ。
研究によると、属性によっても全く違う魔力の流れがあったりするため、案外使いこなすのは難しいらしい。
「ああ。今はだいぶ様になっているけれど、最初はひどかったな。一方ができるようになったと思ったら、もう一方ができなくなるんだ。中々2つを使いこなすのはコツが必要だったな」
「そうなのですね。その違いはどのような感じなのでしょう」
「言葉にするのは難しいが……そうだな。僕の感覚の話だけれど、風は自由に、水は包み込むようにかな」
「……申し訳ありません。わたくしには理解力が足りませんわ」
なんとなくわかるような気がするけれど、自信はない。
お兄様も苦笑している。
「いや、うまく説明できなくて申し訳ない。そうだ。父上に相談してみよう。父上は魔術のことは研究者並みに詳しいんだ。うまく説明してくれるかもしれない」
「そうですわね。あまりお手を煩わせたくありませんでしたが、この際手段は選んでいられませんわ」
「へティのこととなれば、父上は喜んで協力してくれるさ」
「そうですわね。忙しいでしょうけれど、わたくしたちを覗く余裕がお有りですもの。突撃しても特に問題はありませんわね」
「……だんだん父上への扱いが、母上に似てきている気がする。そのうち僕も同じ待遇になりそう」
「お兄様がシスコンを拗らせなければ大丈夫ですわ。それから、ポンコツを発揮しなければ」
「へティ、そう言いながら既に片鱗が見えているよ」
「ふふ、気のせいですわ。さあ行きましょう」
納得していなさそうなお兄様を引っ張って、お父様の執務室へ急いだ。
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