攻略対象者:トミー・スタンホープ
思わずふらりとしてしまったわたくしに、メアリー様は慌てて手を差し伸べてくれた。
「ごめんなさい。驚いてしまったもので」
「いいえ、あの、続きはまた今度にしますか?」
「いいえ、ぜひ聞かせてちょうだい。わたくしは心を強く持ってききますわ」
そう決意を込めていうと、メアリー様は話し始めてくれた。
「わかりました。トミー様は初め、どこか影のあるミステリアスな少年として、町で出逢います。ちなみにトミー様は名前を名乗るのもだいぶ後になり、家名はもっと後で知ることになります。最初の頃、メアリーは邪険にされてしまうのですが、何度か出会うたびにトミー様も自然と接するようになっていきます」
「そこからしても、だいぶ違いますわね。あの子は人当たりは素晴らしいですもの。名乗らないのも気になりますわね」
「ある時、虐められていた孤児の子を助けようとして、人攫いが現れます。トミー様が来て追い払ってくれました。そこでトミー様の過去を聞くことになります」
なんだか嫌な予感がする。口の中の唾液を飲み込んで、喉がこくりとなる。メアリー様は気遣うような眼差しをして続けた。
「トミー様は幼少期にスタンホープ侯爵家の養子に入りました。最初は義兄弟が良くしてくれていたそうですが、ある時魔力暴走を起こしてしまってそこから……ヘンリエッタ様に疎まれるようになってしまったということでした」
だんだんメアリー様の声が小さくなっていく。言いづらそうにしているが、予想していた通りだった。
予想はしていても胸が痛い。あの時が原作との分岐点だったということだろう。
「そして義家族から距離を取るようになってしまったということです」
「あああああ……。トミー。なんということなの」
「落ち着いてください。今のトミー様は幸せのはずですわ。ヘンリエッタ様と仲良しですから」
「ええ、ええ。そんなあの子を闇堕ちなんてさせないわ。……それにしてもあの子、わたくしの為に飛び級入学を決意するなんて、原作と全く違う行動をするあたり、本気ですのね」
「ヘンリエッタ様、トミー様は目がいつでも本気でしたよ。あれは獲物を虎視眈々と狙っている目です。ついでに言うと原作のメアリーに向ける目と同じです」
「……シスコンに育てたつもりが予想外の方向に行ってしまいましたわ。ちゃんと向き合わないといけないのですね」
「そうなりますね。けれど、無理して答えを急ぐ必要はないと思います」
「ありがとう、メアリー様。ところで、トミールートの魅力ってなんなのかしら?」
メアリー様は視線をずらした。え、何かまた嫌な予感がするのだけど。
「トミー様は……なんというか運営に愛された方といいますか。ルートが大きく分けて2つ用意されています」
「まあ、そうなのですね。と言うことは基本的には1つのルートということですか」
「はい、その……通称ハッピーエンドか、ヤンデレ監禁バッドエンドです」
「……ごめんなさい、もう一度言ってもらえます?」
「ヤンデレ監禁バッ――」
「あ、もう十分ですわっ。わたくしの耳がおかしくなっていてほしかったですわ」
なんでやねん。
前世の住んだこともないところの方言が出てしまった。
うちのトミーがヤンデレ。しかも監禁してしまうほどのガチヤンデレ。なんと言うことでしょう。お姉様許しませんわ。
「どうして……ヤンデレに」
「公式サイト情報ですと幼少期からの不遇な生い立ちから、執着気質になってしまっているようです。愛に飢えていると言うことですね。少し対応を間違えるとすぐにバッドエンド行きでした。けれどやはりショタ系からの執着と言う話は良かったので、コアなファンが多かったですよ」
信じたくない、けれど。なんだろう、今のトミーも執着気質はある気がする。もしかして対応を間違えたらわたくしも監禁されるのでは?
「とりあえず、今のトミー様は監禁しないと思いますよ。それで自分が幸せにならないと分かっていると思います。ヘンリエッタ様の幸せを1番に考えている感じがしますし。大体トミー様はこんな感じですが……。大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫ですわ。衝撃が強いですが、多分うまく教育できたということを言い聞かせております」
うん。お兄様もいるし、なんとかなる。きっと、多分。
ようやく恋愛要素を絡められる様になってきました……!
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