日程が決まりました
トミーとの約束は一旦日程調整をすることにして、先にお母様との日程を決めることにした。
「というわけで、メアリー様と一緒にパトリシア様もお呼びしたいのですがよろしいでしょうか?」
「まあ、パトリシア嬢が自分から言うなんて。あの子も変わったわねぇ」
そう言いつつも、お母様はとても嬉しそうだ。
「もちろん、わたくしから断る理由なんてないわ。むしろよろしくと伝えてちょうだい」
「はい」
「では今度のお休みでもいいかしら?」
今度? 思ったより直ぐだ。トミーとの約束が延びるのは個人的には嬉しいが(心の準備があるので)、メアリー様たちは大丈夫だろうか。
「流石に早すぎませんか? メアリー様は準備が間に合わないのでは」
「わたくしが何も考えてないと思っているのかしら? あなた達は制服でいればいいのよ。そうすれば、ドレスとかわざわざ新調しなくても大丈夫でしょう?」
「なるほど、それはいいですね」
「ところでメアリー嬢の身長はどのくらいかしら?」
「わたくしたちよりは小さいでしょうか。体型は制服なので分かりづらいですが、華奢な感じだと思います」
なるほど、とお母様は考え込んでいる。
「最初はヘティより小さいのなら、着なくなったドレスをあげても良いかと思ったけれど……きっとパトリシア嬢が嫉妬してしまうわね」
クスクスと笑うお母様。
そういうことでしたか。確かに学園に入ったこともあって、ドレスを着る機会はグンと減った。2、3着あげても問題ない。
「そうですね。そうしたら今度はパトリシア様も、ドレスをあげそうです。しかもわざわざ採寸して、新調することにしそうですね」
「ふふ、それも見たいけれどメアリー嬢には荷が重くなりそうだから、辞めておきましょうか」
「そうですね。然るべきときに、お手伝いすることにしましょう」
お母様は流石の気遣いだ。わたくしよりキャンベル男爵家のことも詳しいのだろう。
それに合わせて、用意するものなどを選別している。
わたくしも一緒に考えながら、あっという間に時間は過ぎていった。
◇◇◇
トミーには、更に次のお休みの時にお出かけすることになった。
意外にもすんなり了承してくれたので、ありがたかった。とは言いつつもトミーが行ってしまった後に、わたくしが驚いた表情をしたのを見てお兄様はこっそり教えてくれた。
「トミーがさ、プランを凄く悩んでいるんだよね。ヘティが喜んでくれる様に考えているみたいで、中々決まらないんだ。だから時間がある方がトミーもいいんだよ」
可愛らしい理由に、思わず笑みが溢れる。
13歳という歳の割には大人な考えをする事が多いトミーだけど、こういうことは年相応の男の子だ。
「トミーには内緒だよ? 拗ねて更なる要求するだろうから」
「まあ、お兄様ったら。それならわたくしに教えない方が良かったのでは?」
「そうなんだろうけどね。妹も弟も両方を見れる身としては、なんだか教えたくなってしまってね」
「お兄様は意地悪ですわね」
そう言って笑う。気にすることはあるけれど、トミーとのお出かけは楽しみになってきた。
わたくしのために、色々考えてくれるのは純粋に嬉しい。
「ところで今度の集まりは僕たちも顔を出しても良いのかな?」
「ダメに決まっています。女の子同士の秘密ですわ。殿方は禁制です」
「ダメかぁ。僕もヘティと仲良くなってくれる、メアリー嬢の様子を見たかったんだけど」
「これからお昼休みなどで見れますわ。賑やかになる方が良いでしょう?」
「そうだねぇ」
お母様もお兄様も、そんなにわたくしが社交的でないのを気にしていたのか。確かに貴族は社交が何より大事だもんなぁ。
「大丈夫ですわ、お兄様。わたくしも社交界デビューとなったらしっかり社交しますもの。スタンホープ家のお荷物にはなりませんわ」
「そういうことじゃないんだよなぁ。まあそんなところがヘティの良いところだよね」
それはなんだか腑に落ちないのだけれど。




