またやってしまいました
「姉上、この際クラスが別れてしまったのは百歩……いえ一万歩譲って諦めます。けれど休み時間やお昼休み、放課後は迎えに行きますね。いいですよね?」
えっと、目がガンギマリで怖いんですが。後お昼休みや放課後は良いとして休み時間ごとに来る意味とは。
「トミー、休み時間ごとにくる必要はないでしょう? そんなことをしたらクラスメイトとの交流の時間が取れないでしょう?」
「何を言ってるんですか。姉上が1人だったらいつ狼に襲われるかわかりません。僕が守らなくては。クラスメイトよりも姉上が大事です」
こっわ。さらに瞳孔開いてるんですけれども。
「落ち着きなさい。ここは学園よ? 滅多なことがない限り安全なのよ? そんな確率が低いことに時間を割くなんて非効率だわ」
「非効率ではありません。姉上の安全が守られるなら、全く非効率ではありません」
やばい、これは止められないんだけど。なんか風が吹いているし。ここ室内なのに。窓ガラスがガタガタ揺れている。トミーの魔力ですか。
後、焚き付けたであろう殿下。笑い堪えているのがバレバレですからね。貴方がなんとか治めて欲しいんだけれど。
「トミー、感情を抑えなさい。安全を守ると言いながら、貴方が危険になっているわ」
「これでも抑えているんですよ。本当だったら窓ガラスは割れています」
こわ。もう怖いしか感想出てこないんですけれど。
確かに昔シスコンに育てようと奮闘したけれど、ここまでになるなんて誰が想像した。いや、わたくしが恋愛面を全く考えなかったのが落ち度なのか。
もはや実力行使しかないだろう。トミーの気持ちを利用することになるので心苦しいが、背に腹は変えられない。
暴走したトミーが悪いと棚上げして、わたくしはトミーの手を取った。上目遣いになるように角度を調整する。
「トミー……わたくしの可愛い弟。そんな風に周りを見ないで自分本位に動くだなんて悲しいわ。貴方は心優しい子だもの。冷静になれば大丈夫よ」
「姉上……」
よし、少し落ち着いたか?
風も止んだ。
手をトミーの背中に回して優しくさする。そう抱擁だ。耳元で囁くように言う。
トミーの体がびくりと反応して、耳が赤くなった。
「さあ、深呼吸して。わたくしの可愛い子。貴方は素晴らしい子よ。自分の目標のために努力を惜しまない、その姿勢は誰にでもできることではないわ」
「あ、姉上……あの」
もう少し。
トミーの頬を両手で挟んで、くっつきそうなくらいに近づく。
「ねぇ、トミー。大丈夫よ。クラスが違っても隣同士ですもの。何かあったら言うから、大丈夫。」
「っあっねうえ、少し離れ……」
「貴方にも学園でしか出来ないことをたくさん経験してほしいわ。姉としての願いを叶えてはくれないの?」
「〜〜っっ‼︎ わかりました! だから離れてください!」
よっしゃ! 勝った!
最後にダメ押しで頭を撫でる。トミーはフラフラと離れて壁に手をついて項垂れていた。
息を吐いて周りを見ると、パトリシア様は呆れた表情を、殿下はなんか先ほどのトミーの表情を、そして周りの生徒たちは多くが顔を赤くしていた。
あ、トミーのことに集中しすぎて周り見てなかった。
「あなた……だから公衆の面前でやめなさいと言ったのに」
「今回は仕方ないでしょう? わたくしだってやりたくてやったわけではありません」
もう開き直るしかない。やけくそだ。
「パトリシア様も、助けてくだされば良かったのですわ」
「わたくしに出来るとお思い? 無理ですわ」
「やらなくては分からないではないですか!」
「わたくし、勝算の低い勝負は避ける性分ですの」
ツンと顔を背け、そんなことを宣った。
相変わらず殿下が目線を送ってくるけれど、もう対応する気なんて起きず心の中で大きくため息をついた。
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