お兄様が暴走してます
遅ればせながら、誤字報告ありがとうございます!
「ち、違う‼︎ へティ、本当に違うんだ」
お兄様はわたくしの両手を包み込むように握る。わたくしはそれでも顔を上げない。
「本当にごめん。へティの気持ちを無視してしまって。僕は良かれと思ってやっていた。へティもトミーも、お互い大切に思っているから、一緒になれたら幸せになれるんじゃないかって。将来へティは魔術師になって自立したいと言っていたけれど、それよりも幸せになれると思ってやってしまったんだ」
まあ、そうだろう。先ほどはお兄様を追い詰めるためにあんな言葉を吐いたが、そういうことで動いたとはちっとも思っていない。
たった1回で信頼関係が崩れるほど、柔な関係ではないと断言できる。
それに、1年前からお兄様も積極的に動いてはいなかったのだ。お母様に諭されて、見守る姿勢に徹していた。
もしかしたら、こんな風に影では動いていたのかもしれないけれど、そこまでのことを咎める気はない。実質、わたくしにはなんの影響もなかったのだから。
「それから、トミーが僕に何かを頼んだと言うこともない。僕が勝手にやったことなんだ。だからトミーのことを責めないで欲しい」
「トミーの様子を見ていれば、わかりますわ。あの子は自分の力でなんとかしようとしてますもの」
だからこそ、今の状態に落ち着いているのだから。これでトミーが外堀を埋めようものなら、全力で抵抗していた。
我ながら酷い考えだとは思う。
「へティ、君は僕の大切な妹だ。何にも変え難い、君のためなら命だって捧げられる。だから、自分が道具だなんて思わないで」
ここまで言われたら、さすがに引き下がろうとは思う。けれど、自分が思っているよりストレスだったらしく、許すと言う言葉が出てこない。
言葉を探していると、手に雫が当たった。見るとお兄様が泣いている。
え⁉︎ 泣いている⁉︎
「本当に、本当にごめん。へティ、妹を傷つけてしまうなんて兄失格だ。言葉が信じられないのなら、何か行動で示そう。そうだ、指を落として渡せば信じてくれるかい?」
はい⁉︎ 指を落とす⁉︎
前世でも確かあった気がしますけれど! 確か遊女が自分の本気を知ってもらうために、指を切り落として送ったとか言う……。
ダメダメ‼︎ 指なんて切り落としたってトカゲのように生えてくるわけじゃないんだから。
「お兄様、それはダメですわ。行動で示すことは大事でも自分を傷つける必要はありません。もっと他のことを考えてください」
「けれど、1番説得力があるんじゃないか? 僕はへティのためなら指を切り落とす痛みだってなんともないよ」
いまだに大粒の涙をこぼしながら、お兄様は狂気じみたことを言う。
まずい、流石に追い詰めすぎたか。というか、お兄様ってもしかしてヤンデレ属性が眠っている?
やばい。絶対にそれは育ててはならない。主に将来嫁いでくる人のために、お兄様には清くいてほしい。
そのためにはこの状況を吹っ飛ばす何かが必要だ。いっそのこと本で殴って気絶させるか? いや、本だって十分な凶器だから当たりどころによっては重体になる可能性は捨てきれない。それにどこに当てれば安全かなんてわからない。危なすぎる。
半ばパニックになったわたくしは物理的にお兄様の口を塞ぐことにした。
お兄様から手を引き抜き、頭にその手を回す。そのまま引きよせて、自分の胸にお兄様の顔を埋めた。
「むぐっ」
お兄様は驚いたようにくぐもった声をあげて反射的にわたくしから離れようとする。もちろん、わたくしは逃げないようにさらにぎゅうぎゅうと抱き締める。
前にトミーを胸に埋めたことがあったけれど、あの頃は膨らみはなかった。しかし、今は第二次成長期を迎えたことに加えて、所作をきれいに保つためと女性らしい体のために筋トレを少しずつこなしている。その甲斐あってかまだ未成熟な体ではあるが、同年代より膨らみは大きく、ウエストはくびれている。我ながらナイスバディになっているのだ。
その膨らみに遠慮なくお兄様の顔を押し付ける。お兄様が大人しくなるまで力を緩めてはいけないと、抱きしめ続けた。
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