入学準備をします
第3章スタートです!
よろしくお願いします!
あれから2年。わたくしは15歳になった。そう、学園に入学するのである。
準備がいろいろあるので大変だ。制服の調整やら、小物の調達やら。おかげさまで忙しい日々を送っていた。
今日は小物を買いにパトリシア様とお出かけしている。下町には行かず、貴族街のお店だ。
「パトリシア様、このペン、綺麗ではありませんこと?」
「確かに綺麗ですわ。しかし、少し重心がズレていてなんだか書き心地がよろしくありませんわね」
「長時間書くと疲れますかしら。やはり見た目だけでは選べませんね」
「こちらはどうかしら?」
どの時代、世界でも友達と買い物するのは楽しい。せっかくなので、ペンは色違いのお揃いにしようと決まった。
その後、近くのカフェに寄り、休憩をすることにした。
「いい買い物ができました。パトリシア様のおかげですわ」
「わたくしもよ。これからの学園生活が楽しみだわ」
「はい! パトリシア様と一緒のクラスになれると嬉しいですわ」
「それならばまずは成績上位の者が入れる特進クラスを目指さなくてはね」
「入学試験で決まりますものね。ラストスパートですわ」
魔術学園は大きく2つのクラスに分かれる。特進クラスと、一般クラスだ。
これは、入学試験の結果によって分かれる。成績上位なら特進クラスというわけだ。前世でも同じようなシステムがあったので、わかりやすい。
わたくしが幼い頃は上位貴族と下級貴族で分かれていたらしい。しかし、平民にも魔力持ちが増えていること、下級貴族でも優秀な者がいることから今の体制になったそうだ。それによる軋轢がないわけではないが、いい傾向なのだとは思う。
どちらにせよ、改革が始まったばかりで特進クラスに入れるのは基本的に上位貴族、さらに平民はほとんど入学していないことを考えると成果が出るのはまだ先になりそうだ。
そして学園の改革にあたって一つの指針が発表された。‘’学園は貴族、平民を問わず平等である‘’と。
身分を嵩にきた言動や差別は認めない。それで問題が起きた場合は学園側が介入し、家の力は持ち込ませない。
身分が下のものが上のものに話しかける際も略式は可である。
しかし、これはあくまで建前。実際には階級は存在しており、平等ではない。
なんなら子供達から聞いたことで、相手の家に制裁を与えることは少なくない。その辺りはまだ地盤が整っていないというところか。
それに、これが通用するのは学生である間だけ。学園を卒業すれば、再び階級社会に戻ることになる。だからそこまで破天荒な者はいない。将来への希望がなくなることも大いにありうるからだ。
きっと、これも計算のうちでないだろうか、とわたくしは思う。天狗になっている者には喝を入れ、平民・下級貴族の者達へは卒業後も使えるようにパイプを作るために。仮にこのことで問題になったとしても、それを対処できるか見られているのかもしれない。特に我々上級貴族の器の大きさを試すいい機会にもなりそうだ、と捻くれた考えもしてしまう。
そんなことはさておき。
「わたくしは学園で優秀な成績を納め、魔術師になって見せますわ!!」
「貴女、本当に変わりませんわね」
「もちろん、パトリシア様のことは応援していますわ! お母様から伝授していただいた恋の駆け引きをパトリシア様に覚えて頂きたく!」
「なっ、何を言ってますの⁉︎ こ、恋だなんて……」
「まあまあ、こういうのは何事も実践が大事ですのよ。パトリシア様の美貌で駆け引きをすればイチコロですわ!」
「なんて下品な言葉を覚えているのです!」
「ふふ、話を逸らそうと必死ですわね? しかし、お顔が真っ赤ですわ! 何を想像していらっしゃるのかしら?」
「う、うるさいわね! そんなあなたには絶対に負けないんだから!」
「まあ、好戦的なパトリシア様も麗しいですわ」
「そんな目をしないでくださいません⁉︎」
「まあ、そんなにおかしな顔をしてしまったかしら」
「そんな熱っぽ……とにかく! もっと侯爵家長女としての自覚を持ちなさい!」
「失礼いたしました」
これ以上揶揄うと怒りそうなのでやめておく。
それよりも注文していたケーキセットが届いて、わたくし達は顔を輝かせた。