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義弟と仲良くなりたいです


 お父様の話を聞いて、わたくしとお兄様は異口同音で了承する。

 しかし、どうすればトミーは心を開いてくれるだろうか。


「お話は聞かせてもらいましたわ」


 その声と共にお母様が入ってきた。


「アメリア! いつから……」

「盗み聞きしたのは謝りますわ。しかし、わたくしもトミーのことを気にしてましたのよ。わたくしも話に加わらなくてどうするのです」


 ツンとすましているが、不機嫌なオーラが漂っている。


「そもそもトミーを養子にしようと提案したのはわたくしです。提案者であるわたくしが率先して動かないなんて有り得ませんわ」

「「そうだったのですか!?」」


 わたくしとお兄様は驚きの声をあげる。勝手にお父様が決めたものだとは思ってしまっていた。


「ええ、トミーと家族は関係改善のためには一旦距離を置くのが良いかと考えましたの。まずはわたくしたちで愛し、愛されることを学んでから元の家族と打ち明けるのがお互いに良いかと思いますわ」

「しかし、母上。それならばトミーは養子にはいらず、こちらが干渉するのでも良かったのでは?家族が離れるのは……」

「アル、それは難しいのです」


 反論するお兄様にお母様は答える。


「確かに一緒にいられて、関係を改善することが1番理想ではあるでしょう。しかし、もうそれで解決するタイミングは逃してしまったのです。それをするには時間が経ち過ぎてしまった。トミーは消極的に、家族はさらに距離がわからなくなってしまう。距離が近いからこそ、見えないものがあります。ここは一旦距離を置いて、お互いに冷静にみられる様にすることが今の最善策ですわ」


 そして痛ましそうにしながらお母様は言う。


「それにトミーはまだ幼い。その中で培われてしまった家族への不信感は簡単に拭えるものでは有りません。一度失われた信頼は取り戻すことは至難の業です。こう言ってはなんですが、両親だけの力で取り戻すことは無理でしょう」

「…………」


 お兄様は俯いてしまう。わたくしは前世の記憶があるのでお母様の言うことは納得できた。トミーの両親も苦渋の選択だったのだろう。それでもトミーのためを思い、一度手を離すことを選んだ。お兄様もお母様の言うことは理解しているはず。ただ、納得ができるかと言われればそれはまた別の話だ。わたくしだって、今は8歳。家族と離れて暮らすのは心細い。前世より早く大人になることを求められても、心まで早く成熟するかはその子次第だ。特に愛情が感じられず孤独を感じた子は、内面は歪んでしまうのではないだろうか。


「ここで暮らしてトミーが変わって、家族に会いたいと言えば、私たちに反対する理由は有りません。あくまで‘’今は‘’離れることが良いのです。この先ずっと会わないわけでは有りません」


 沈黙が訪れる。お兄様は暫く俯いていたが、グッと顔を上げる。その顔は決意に満ちている。


「わかりました。トミーの幸せのためにも、愛情を伝えてみせます!!」


 そのお言葉に、お父様もお母様もほっとした表情になった。


「では、トミーとどういう風に接すれば良いでしょうか? お兄様もわたくしも今のままでは距離が縮まらないと悩んでいたのです」


 そう言うと、お母様は少し得意げに言った。


「簡単な話ですわ。押してダメならさらに押せです!!」

「え」


 それは「押してダメなら引いてみろ」では。

 顔に出ていたのか、お母様はさらに続ける


「まあ、これは人によるでしょうが……。トミーの場合は押しに弱いでしょう。つまり、今はこちらからの押しがまだ足りないと言うことですわ!! 押しに弱い……押されたことのないトミーにはグイグイ行くのが良いのです!」

「うむ、一理あるね。こちらが仲良くなりたい!! と、押せばトミーも嫌がりはしないだろう。ただ、慣れてないからそこの匙加減は大事だけれどね」


 お兄様とわたくしは顔を見合わせる。押してダメならさらにおせ……。うん。


「「頑張ります!」」


 そして話が終わったわたくし達は早速トミーを探す。

と言ってもトミーはそこまで活動範囲が広くない。遠慮しているからなのか、庭にいることが殆どだ。

 程なくして、木陰にいるトミーを見つける。お兄様と頷きあい、突進していく。そう、突進だ。


「「トミイイイイイ!!」」


 満面の笑顔で呼んだわたくし達にトミーはビクッと体を跳ねさせる。こっちを見て、突進してくるわたくし達を呆然と見つめて――



 逃げ出した。



 まあ、それはそうだろう。今までと勢いが違いすぎる。

あと、やっているわたくし達が言うのも何だが若干の恐怖は感じると思う。それを緩和させるための満面の笑顔だ。

 作戦会議は念入りにしたのでここは許容範囲。

 逃げ出したトミーを追いかける。

 追いかけてくることにもトミーはびっくりしている。漫画で言えば目がぐるぐるしている状態だ。


「あら、お兄様。トミーは鬼ごっこがご所望のようですね」

「なるほど、トミーは運動が好きなんだな」


 白々しいやり取り。


「よし! トミー!! まずは鬼ごっこだな!! 行くぞー!」

 

 さあ、鬼ごっこの開始だ!

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