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転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど!?  作者: 水月華
4章

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【終】物語は終われど……

本編最終回です!

今まで応援してくださった皆様には感謝しかありません!

ありがとうございました!


 パーティーのゴタゴタが終わり、ようやく平穏が訪れた。

 卒業パーティーと同時に、わたくし達は長期休みに入った。

 その間、パティ、メアリー、アンジーとお出かけしたりお互いの邸に遊びに行ったり、親交を深めていった。

 メアリーは正式にディグビー公爵家の養女となり、無事にダニエル様と婚約を結んだ。

 相変わらずたまにショートを起こしているようだけれど、ダニエル様が慣れたのかテキパキと介抱していて笑ってしまった。

 メアリー曰く、結ばれた後のダニエル様はあんな感じらしい。スパダリだ。

 パティもアンジーも、徐々に仲良くなっているようで何よりだ。

 たまに恋バナをするのが、とても楽しい。お兄様とトミーの知らなかった一面も見れて、寂しいような嬉しいような気持ちだ。

 そしてわたくしは、王太子妃教育が本格的に始まった。

 分かってはいたけれど、卒業パーティーの半年前に詰め込んだ知識はほんの序章だった。

 時折、弱気になりそうになりながらも、必死で食らいついていく。

 けれど本当に限界が近づくとフレディ様がやってきて、元気づけてくれるのだ。

 多分、王妃様が情報を流している。それがとてもありがたい。

 そんな風に過ごして、あっという間に長期休みは過ぎて行った。

 ついに、今日から2年生だ。

 トミーと2人で馬車に乗り込む。


「お兄様が乗らなくなっただけで、とても広く感じるわ」

「そうですね。寂しいです」


 お兄様はお父様と共に、当主になるための勉強が始まった。

 とても忙しそうにしていて、お互いにすれ違うことが増えてしまった。

 トミーも同じようだ。


「今度、お茶ができなくても、お菓子を持って行ってみましょうか」

「良いですね。あとメッセージカードも渡しましょう」

「ええ。そうだ、アンジーとはどう?」

「彼女から聞いているでしょう?」

「トミーの意見も聞きたいのよ。言えなければ無理しなくて良いけれど」

「……好きですよ。ちゃんと、婚約者として好きです」

「そう、良かった」


 トミーの表情は穏やかで、わたくしもホッとした。


「そうですね。たまに好きすぎて閉じ込めたくなるくらいにはちゃんと好きです」

「ねぇ。今ので一気に不安になったのだけれど」


 失恋を経験しても、ヤンデレ属性は消えなかったらしい。

 アンジーが嫌がったら、全力で止めよう。

 そう決意した。



 ◇◇◇



 今日は始業式。そしてクラス分けが発表されている。

 トミーと、途中で合流したパティ、アンジーと共にクラス分けの掲示板のところへ向かう。


 Aクラス

 フレディ・イル・ナトゥーラ

 ヘンリエッタ・スタンホープ

 メアリー・ディグビー

 ダニエル・バーナード……


 Bクラス

 パトリシア・ディグビー

 アンジェラ・スコット

 トミー・スタンホープ……


「意外と分かれましたね。わたくしとトミーは去年から別れるだろうとは思っていましたが」

「な、なんだか自分の名前みたいじゃないみたいです……!」


 メアリーはまだディグビーとなっていることに違和感感があるようだ。

 そのうち慣れるのを待つしかないでしょう。

 

「メアリーもわたくしと義姉妹になっているからクラスが別れたのでしょうか……」

「しかし、婚約者は離れていませんね」

「本当ですわね」


 パティとトミー、アンジーは冷静にクラス分けについて分析している。

 そうしているうちに、時間が迫っていた。


「そろそろ行きませんと、時間になってしまいますわ」

「本当ですわ。行きましょう」


 向かうところは生徒会室。

 ノックして中に入ると、既にフレディ様とダニエル様がいた。先輩の姿も何人か確認できる。


「おはよう。クラス分けは確認できたかな?」

「おはようございます、フレディ様。問題ありませんわ」

「良かった。それじゃあ、簡単に生徒会メンバーの確認をしようか」


 今年はフレディ様が生徒会長、わたくし達も生徒会メンバーとして招集された。

 卒業パーティーの話でもあったけれど、今年は特例だ。もちろん、不要な軋轢を生まないように3年生からもメンバーは選出されている。

 いよいよ人をまとめる立場として活動していくことになる。

 緊張はさほど感じない。

 それまでにいろいろな経験が糧になっているからだろう。

 ふと気になって、メアリーにこの世界の話を聞いた。


「メアリー、前世ではこの後どうなっていきましたの?」

「1年生が終わった後は、パトリシア様が本格的に暗躍し始めますよ。まあ、結構あっさり収束するんですけれど」


 1番盛り上がったのって1年次なので、とメアリーは言う。

 

「まあ……これからも何か問題が起きなければ良いのですけれど」

「そこは何とも言えませんが……。もうここは私が知っていた世界とは全く違う道を進んでいますし」

「そうですわよね」


 メアリーの言う通り、ゲームの通りなら悪役令嬢だったわたくしは既に物語から退場しているし。


「あ、そうですわ。前世では続編とかありませんでしたの? あの王女、すごく物語のヒーラー役みたいでしたけれど」

「私が知る限りないですねぇ。けれど間違った愛情が不幸にすることは、現実でもゼロではないですし難しいです」

「そうですわね」


 聞いたところで王女と会うことは2度とないのだけれど、つい気になってしまった。


「ふふっ! なのでこれからは私たちが道を考えていくんですよ! へティの思い描く未来のために、私も頑張りますから!」

「メアリー……っ。嬉しいですわ!」


 感極まって、メアリーに抱きつく。そういえば、最初の頃はもう少し華奢だったけれど、今は柔らかい。

 思う存分感触を楽しもうとしたら、パティからの叱責が飛んできた。


「お2人とも! 何をしているのです!」

「メアリーが可愛くて。あ、パティも来ます?」

「行きませんわ! ここをどこだと思っているのです!」


 パティのにべもない拒絶にしょんぼりしてしまう。

 と、メアリーが今度はアンジーに声をかけた。

 

「そんなぁ。ではアンジーも来てください! そうすればパティも来ますよ!」

「な、わたくしはそんな……くっ」


 パティより毒されていないけれど、ここは生粋の貴族子女。周りの目を気にしている。

 とはいえ、本音では来たいのか、もじもじしている様子が実に愛らしい。

 我慢できずに、わたくしがアンジーの手を引く。


「へ、へティ……様⁉︎」

「惜しいですわ。義姉妹になるのですから、様はいりません」


 そう言いながら、アンジーをメアリーと2人でサンドイッチする。

 ちら、とパティを見ると、怒りと寂しさと嫉妬と――いろんな感情に呑まれているのが分かった。


「ほら、パティも遠慮せず来てくださいな」


 手を伸ばすと、また百面相をするパティ。

 けれど誘惑に抗えなかったのか、ゆっくり近づいてくる。

 後少しで手が触れるところで、思わぬ邪魔が入った。


「はい、今日はここまで。それじゃあ行くよ、エッタ」

「ちょ、良いところでしたのに! 下ろしてください!」


 フレディ様がわたくしを横抱きにする。

 絶対狙ってた! そうでないと、このタイミングで抱える意味が分からない。


「ということでエッタは僕のだから、連れてくね」


 そう言うとさっさとわたくしを抱えたまま、生徒会室を後にした。

 

「フレディ様! わたくしの栄養源を奪わないでくださいませ」

「僕って結構嫉妬深いみたいなんだよね」

「はい?」

「……エッタがくっつくのは僕だけにして欲しいってことだよ」

「今同性だったんですけれど!」

「エッタの場合、どっちもいけそうだから信用ならないんだよね」


 く、過去にしてきたことのしっぺ返しがきている!

 わたくしも悪いかもしれないけれど、フレディ様も鈍くありませんか⁉︎

 意趣返しに首に手を回す。そのまま勢い良く唇を押し当てた。

 驚いたフレディ様が、危うくわたくしも落としそうになる。

 根性で踏ん張ってくれたけれど。


「エ、エッタ? 急に何を」

「もう。確かにわたくしも悪いですが、フレディ様も鈍感ですわ。こうして最後まで行動を起こすのは貴方だけですのに」


 パティたちにやっているのは、良く言えばスキンシップ、悪く言えばじゃれあいだ。向こうは心臓に悪いかもしれないけれど。

 パティも本気で嫌がっていないどころか、本当は仲間に入りたいのはさておき。


「友愛を教えてくれたのは彼女達ですが、純愛を教えてくれたのはフレディ様ですわ。似ているようで全く違うものですわ」


 以前のわたくしは。純愛なんてもう信じられなかった。

 無意識に目を逸らし、逃げていた。そんな臆病なわたくしの心の扉を開いてくれたのは、間違いなくフレディ様だ。


「フレディ様の想いが強かったからこそ、わたくしも変われたのです。フレディ様が思っているより、わたくしの気持ちも重くなっていますわ」

「エッタ……」


 フレディ様は微笑む。幸せそうな、それでいて獲物を捕らえた獣のような表情で。


「エッタには敵わないなあ。これが惚れた方が負けってやつかな?」

「おたがい様ですわ」


 そういうとフレディ様は声を上げて笑う。

 そしてお返しと言わんばかりにキスをしてきた。


 どこかで見ているかな、前世の私。

 夢で勇気づけてくれた私。

 ね、本当に大丈夫でしょう?

 幸せですわ。もう前世のあの苦い記憶も朧げになるほどに。

 わたくしは愛すること、愛されることを身をもって体験したのです。

 例え、この先どんなに辛いことがあっても。この思い出がわたくしを支えてくれるから。

 ありがとう。さようなら。


 私の残滓が、笑って霧散したような気がした。

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