愛が重すぎます
そして約束の日。再び侍女たちに揉みくちゃにされていた。
今回は髪はそのまま下ろしている。ドレスは落ち着いた感じのオレンジ色だ。前回と違い、レース地の半袖タイプ。上半身には大きな黄色のガーベラの刺繍を施していくれている。ちなみにこれはヴァネッサさんがアレンジしてくれたものだ。黄色のガーベラの花言葉は‘’親しみやすい‘’らしい。なんて仕事ができるんだ。素晴らしすぎる。後、この世界にも花言葉ってあるのね。
スカート部分はボリュームが出るように何層にも重なっており、一部リボンの紐のように垂れている。
侍女のおかげでこの前とは違う可愛さに仕上がっている。さすがだ。
今回は仲良くなりに行くということで即ち、自分を売り込みに行くのだ。気合いは入れてナンボである。
前回と違う気合の入れように侍女たちも困惑している。しかし最終的には乗り気であることに喜んでいる。
扉がノックされた。返事をするとお母様が入ってくる。
お母様もオレンジ色のドレスを着ている。ストンと体に沿う様な美しいドレスだ。髪はサイドでまとめており、自分の母親とは思えないほど若々しく、美しかった。
「可愛いわね。ではそろそろ行きましょうか」
「ありがとうございます。お母様もとてもお綺麗ですわ」
そう言いながら笑い合う。
デザインは全く違うが同じオレンジ色のドレスということでなんだか恥ずかしいやら嬉しいやら。
もじもじしてしまうわたくしとは反対にお母様はご機嫌だ。すっごい笑顔だし、なんなら背景にお花が咲いてる。なんなんだ。この世界の人はお花を咲かせることが出来るのか。
そんな風に現実逃避していたら他の3人がやって来た。
「あら、今日は殿方は呼ばれて無くってよ?」
「……見送りくらいはいいでしょう? 父上、固まってないで何か言ってください」
わたくしたちの姿を見たお父様は石像と化している。お兄様がツンツンと突いてようやく我に帰った様だ。
「あーうゔん、2人ともよく似合っている。本当に……」
「あなた、若い頃より口下手になっておりますわよ」
「だっ、だって……」
お父様は顔を歪ませている。
「2人とも魅力的過ぎるよ。ヘティは将来いろんな男性から求婚されそうだし。いや私は中途半端な男は許さない。私より魔術も政治手腕も上の者しか許さない。アメリアだって年々魅力に深みが増して行くし仮に私がいなくなった後色んな人の後妻に望まれるに違いない。ああそんなことになったら私は天国から見張ってやる。アメリアを幸せにできない奴に任せられないからな」
「「…………」」
ちなみに息継ぎなし、ノンストップのお言葉である。
全員もれなくドン引きだ。
(お父様ってもしかしてヤンデレの気があるんじゃ……)
背筋が寒くなり、両腕で自身を抱きしめた。
「とりあえず、あまり娘大好きを公言していますと本人からそのうち嫌われますよ」
お母様、それはトドメです。ただ、すぐさま否定出来ないのは申し訳ない。
お父様は後ろにスダレを背負っている。
「それと、わたくしはたとえアレキサンダーが先に居なくなっても他の誰とも一緒になるつもりはありませんわ」
バッと音が鳴りそうなほどの勢いでお父様は顔を上げる。お母様は微笑んで両手でお父様の手を握った。
「アレキサンダーがわたくしの心に居続ける限りは……。だから、わたくしの心から居なくならないよう努力してくださいませね?」
「あ、ああ! 約束するよ! 必ず!」
完全に2人の世界に入ってしまっている。
わたくし達はどうすればいいか分からず、呆然と立つしかない。
もう色んな感情が駆け巡って本当に言葉にならなかったのだ。
トーマスが訝しげに呼びに来るまで、お父様とお母様は甘い雰囲気を纏っており、わたくしたち3兄弟は空気の様になっていた。




