パーティー終了です
そんな波乱に満ちたパーティーは終わった。
その日は陛下達も後処理があるからと言われたので、わたくしは邸に帰ることになった。
いや、わたくしも大いに関係あったので何か手伝いたいと申し出たけれど、令嬢が遅くまでいることは良くないと帰らされてしまった。
邸に帰ったのだけれど自分が思っていたより疲れが溜まっていたらしく、気絶するように眠ってしまった。
起きたのはなんと次の日のお昼過ぎ。慌てたけれど、皆に労われたことで少し安心した。
お父様とお兄様は王城で後処理に追われているそうだ。
申し訳ないのだけれど、皆にゆっくり休むように言われてしまったので何もできない。
というか、お兄様は確かに成人した。だから王城に行くのは理解できる。
けれどわたくしは一番の当事者だ。いくらまだ学生とはいえ、正式にデビュタントもしたのになぜわたくしはお留守番なのか。
納得がいかない。
不満を訴えたいところではあるが、わたくしのことを思っての言葉なので抑えることにした。
何もすることがないのでグダグダ過ごしていると、気がついたらディナーの時間になった。
お父様もお兄様も帰ってきたらしい。帰ってきたばかりで突撃するのは、流石に端たないので大人しく集まるのを待つことにした。
ソワソワしていると、皆が集まってくる。
「へティ、よく休めたかい?」
「お陰様で。けれどお父様、わたくしも当事者の1人なのですからのんびりするのは罪悪感がありますわ」
「責任感の強いへティらしいけれど、こういう時は甘える術も学ぶべきだよ」
「そうよ、今や社交界はフレディ王太子殿下の溺愛っぷりで、とても賑わっているのよ」
「目指した地点ではありますが、改めて聞くと恥ずかしいですわね……」
お父様とお母様に嗜められ、言い返せなくなる。
「そうだね。それに今回へティが事後処理に回らないのは、王太子殿下の意向もあるから。それで溺愛に拍車がかかっているよ」
「お兄様、それは知りたくなかったですわ……」
フレディ様、職権濫用はいけません。今度会った時に言わないと。
「それに、同年代の令嬢から尊敬されているみたいですよ。姉上のあの時の口上は、とても素晴らしいものだったと」
「まあ、アンジーからの情報かしら?」
「はい。それに、親世代でも好評だったようです。王太子殿下と王太子妃がいれば、次代の治世ももっと良いものになるだろうと期待されているみたいです」
「それは責任重大ね。期待に沿えるよう努力しないと」
親世代にも認められたのは、素直に嬉しい。ある意味、王太子妃として認められたに等しいから。
「あら、へティ。もちろん良いことだけれど、所詮相手は貴族よ。いつ寝首をかかれるかわからないから、全力投球はやめておきなさいね」
「それは、割と良くあることですが……。そういえばお母様は領地でも同じこと言ってましたね」
「ええ。もちろん、王侯貴族は民のために働くものだけれど、こちらに少しでも不利があれば直ぐに寝返られることも珍しくないわ。そしてそれで追い詰められてしまうこともね」
お母様の言うことは、真理でもある。結局人は自分の都合に良い人を良い人と呼ぶのだから。
「ご忠告、痛み入りますわ。自分の心は追い詰めないように、適度にガス抜きをするようにします」
「そうね。へティは頑張りすぎるきらいがあるから、多めにしたほうが良いわ」
「はい」
妃教育でそれは実体験として学んだ。
「そうだ、へティ。パトリシアが会いたがっていたよ」
「わたくしもお会いしたいですわ。いかんせん、パーティーでは接触できませんでしたもの。そうだ、遅れましたがお2人のダンスも素敵でしたわ」
「ありがとう。流石に緊張したけれど、へティ達に比べれば全然だったよ」
「とても緊張しているようには見えませんでしたわ。ああ、パティのドレス姿をもっと見たかったです。そうですわ、トミー達は踊れたのですか?」
もちろんメアリー様やアンジェラ様のドレス姿もちゃんと見たかった。それだけが心残りだ。
その後も自分のことに夢中で、1曲目は踊らなかったトミー達がどうなったのかわからなかった。
「姉上達が気になりすぎて踊れませんでしたよ。アンジェラ嬢も気になっていたようですし、僕たちは主役ではないのでまたの機会です」
「確かに本来であれば、わたくしたちはあの場にいませんでしたものね。……ところで」
「なんですか?」
「なぜまだ“アンジェラ嬢”と他人行儀なの? お兄様は変わったのに」
その言葉にお兄様の顔が赤くなった。もしかして無意識に言ってた? それは良いですね。良いもの見れました。
「……歳上なので?」
「なぜ疑問形になったの?」
「言われて気がついたんです」
「そ、そう」
本人達が良いならあまり口を出すべきではないけれど。わたくしが先に”アンジー“と愛称で呼んでいるので、なんだか横取りしてしまった気分だ。
「そうですね、今度会ったときに確認してみます」
「確認は良いことだと思うわ」
お兄様とトミーのことが気になってしまったけれど、一番大事な話をしたい。
「お父様、あの国王と王女はどうなるのですか?」
「今は事後処理に追われていてね。一応貴族牢に収監している。向こうは横暴だなんだと騒いでいるようだけれど、まず手を出してきたのは相手だからね」
「そうですわね。わたくしは一切手を出しておりませんし。……逆に傷つけられたら問答無用に出来ましたわね」
「やめてくれ。王太子殿下はそれでなくても気が立っているんだ。それに私も愛する娘が傷つけられたら、手が出てしまう」
「冗談ですわ。皆様のことを考えたらそんなことは致しません。それに傷がつけば、次期王太子妃から引き摺り下ろされる可能性もありますし」
「それはない。へティほど優秀な子はいないし、あの時の対応は素晴らしかった。それを引き摺り下ろそうなど身の程知らずだ。あの王女のようにね」
「勢いがすごいです」
お父様、瞳孔も開いていますわ。落ち着いてください。
「それはさておき、彼らは仮にも一国を担う方々ですわ。あまり拘束も長くは出来ないでしょう?」
「ああ。けれどね心強い助っ人もいるし、何より昨日のことはもう国中に広がっている。そして国賓もまだ滞在している。証人は掃いて捨てるほどいるんだ。無駄な抵抗と言うものだ」
「心強い助っ人……もしかして、フレディ様と懇意にしていた国王ですね?」
「その通りだ。陛下は2人で協力して、今後このようなことがないようにするつもりだそうだよ。もちろん、王女達以外の便乗した者たちにも釘を刺すつもりだ」
「あれは本当に常識外れというか、モラルの欠片もありませんでしたものね」
可能であれば、何かしらの制裁を加えたいだろう。やりすぎると今度はナトゥーラ王国が不利になるから、匙加減が大事だろうけれど。
「それでわたくしはいつ、王城に行けるのですか? フレディ様の暴走を止めませんと」
「王太子殿下は確かに暴走しているけれど、やることはとても冷静だ。冷徹と言っても良いくらいだよ。……けれどへティは行きたいのだろう?」
「もちろんですわ。フレディ様の体調も心配ですもの」
「元気に見えるが……何か心配でも?」
お父様は魔力暴走しかけたことに気がついていないのかしら?
「はい。あの時フレディ様は、魔力暴走を起こしかけておりましたの。その後お休みでなければ、強制的に休ませませんと倒れてしまいますわ」
「まさか……そうだったのかい? 確かに休んでおられていないと思う」
「では明日、わたくしも行きますわ。良いですわよね?」
「ああ。陛下に早馬で知らせておこう。王太子殿下にはうまく言い訳して貰おう。陛下の言うことなら強く出られないだろう」
陛下くらいにしか、今はフレディ様を止められないのかしら。
とにかく、無理するなと言っておきながら自分は無理するなんて、フレディ様、許しませんわ。
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