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転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど!?  作者: 水月華
4章

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卒業パーティ②

遅刻しました

すいません


「友好的だとは伺っておりましたが、ここまで友好的でしたのね」

「向こうは学生時代から陛下と交流があったらしい。その息子である私にもきにかけてくれるのだから、嬉しいものだよ」

「後で有名な観光地を教えてくださいね」

「もちろんだよ。エッタが希望する場所だったら、どこでも行こう」


 友好的な国であれば、観光も肩肘を張ることなく楽しむことが出来そうだ。

 そしてフレディ様は暗にあの国でなくても、わたくしの希望するところで良いと言ってくれている。実際どうするかはさておき、その気持ちが嬉しかった。

 そして何度か挨拶を繰り返した後、その人達はやってきた。


 (きたわね……。今回一番自分の娘を推していた国。ご令嬢は……やっぱり一番視線が鋭かった方だわ)


 あらかじめ頭に入れていた情報と、今得た情報を繋ぎ合わせる。

 陛下達にまず挨拶をする。この挨拶はさすが王族の娘といったところで、とても綺麗だった。

 ただ、顔を上げる一瞬にこちらに視線を向け、嘲りの色を浮かべたのは台無しだけれど。

 そもそもわたくしの隣にフレディ様がいるのに、そういうことをしてバレないと思っているのか。

 そしてその王女の父親――国王が、陛下に言った。


「いやぁ。まさか王太子殿下に婚約者がいたとは。全く知りませんでしたよ」

「ははっ。我が息子が初恋を拗らせていましてね。我が国では公然の秘密ではあったのですよ」


 騙しやがったな的なニュアンスで文句を言う相手に、陛下は飄々とそちらの情報不足じゃと言い返す。

 一瞬表情を無くした相手。しかし瞬時に笑顔へ切り替えた。


「ははっ。まさかナトゥーラ王国は私情で王妃を極めようとしているとは意外でしたな」

「私情だけではないですよ。彼女は素晴らしいご令嬢です。家柄、教養、マナー……全てにおいて、王妃となるのに相応しい器なのですから」


 陛下に褒められるのは嬉しい。嬉しいが、目の前で繰り広げられる舌戦に引いてしまう。

 ここでわたくしを過大評価するのは得策ではないので、恐らく本心だと思う。

 それにしても、結構好戦的なのだな。こうも遠回しにとはいえ、文句を言ってくるのだから。

 普通は友好関係を築きたかったら、下手に喧嘩を売るべきではない。

 余程我が子が可愛いのか。

 あるいは……我が国を下に見ているか。

 どちらにしても、この国とは政治的に見て友好関係は築けないだろう。

 陛下も先ほどより視線が冷たい。青い瞳と相まって、ブリザードが吹いているようだ。


「ほう、それはそれは。随分と評価が高いようで。是非とも我が娘と友人になっていただきたいものだ。ほら、挨拶なさい」


 こちらの返答も聞かずに、王女は挨拶をする。

 うん、まあ予想はしてた。自分の思うように動かしたいから、相手に思考の余地を与えないで話を進める。

 よくある手だ。


「ご機嫌麗しゅうございますわ。フレディ王太子殿下。父がお世話になっております」


 これまた形だけ優雅なカーテシー。

 しかし、わたくしの名前は呼ばない。この招かれている場で凄いな。もはや尊敬するわ。


「随分幼い王女なことだ。それとも、目や耳に何かしら問題があるのだろうか」

「なっ」


 あからさまなフレディ様の言葉に、王女はサッと顔を朱に染める。


「先ほども陛下が宣言した通り、婚約発表も兼ねさせてもらった。それは聞いていたのだろうか」

「も、もちろんですわ。しかし――」

「では君は既に準王族である、ヘンリエッタを侮辱しているのだね。理解していて、その対応とは」

「それはっ」

「とても残念だよ」


 今度は顔を青くする。うん、普通こうなるのはわかると思うんだけれど。


「失礼しました、王太子殿下。娘は緊張しているようです」

「謝るべきは私ではないだろう? 一国の王がそんなこともわからないのかい?」

「っ! 失礼しました……婚約者殿」

「名前を先ほど発表しただろう? まさかもう忘れたのかい?」

「スタンホープ……侯爵令嬢……我が娘の無礼、お許しください」


 フレディ様、容赦がないわ。ここまでされて、さすがに分が悪いと感じたのか、謝罪してきた。

 しかし、それならば表情も作っておきましょうよ。わたくしだって心からもらえることなんて、はなから期待していないのだから。

 そんな不本意だみたいな前面に押し出して。王族がこの対応とは、程度が知れるわね。


「……貴国では、子の不始末は全て親が責任を取るのでしょうか?」

「は?」


 質問の意図が理解できなかったのか、口を開けてこちらを見る。

 

「わたくし、()()()からの謝罪でなければ認めませんわ。親からの謝罪だけで本人は心から反省致しますでしょうか? 仮にデビュタントを迎えた年頃なのでしょう? いつまでも親に守られていては、他国に嫁ぐなんて夢のまた夢でしてよ」

「っこの……」


 わたくしの煽りに、2人は怒りに顔を赤くする。さっきから面白いな。何度顔色変えるんだろう。

 言い返そうとして、しかしフレディ様の冷たい視線に気がついたのか、口を閉ざす。


「…………無礼をお許しくださいませ、スタンホープ侯爵令嬢」

「謝罪を受け入れますわ」


 もう少し追い詰めても良いかな、とも考えたけれど一旦ここで手打ちにする。

 この後も挨拶する人がいるからね。

 陛下達も一旦満足したようだ。

 睨みつけながら去っていった。これはまた一波乱あるな。


「全く。我々がいてこの対応とは。余程の命知らずだな」

「ええ。これは今日の結果によっては制裁を加える必要がありますわ。ヘンリエッタ、立派だったわ」

「大丈夫かい?」


 王族3人に心配の眼差しを送られる。

 わたくしは微笑んで言った。


「この程度、何もないに等しいですわ。それにしても、かの王は昔からあんな感じなのでしょうか?」

「いいや、もう少し利口だったはずだ。……娘を溺愛するが故、あのような態度なのだろう」

「確か、他は王子だったはずよ。遅れて生まれた末っ子だから余計でしょうね」

「そういうことですか」


 ため息を吐きたくなる。どこのテンプレ悪役令嬢だ。いや、悪役王女か。

 甘やかされた結果、あのように育ったのだろう。メアリー様曰く、わたくし(ヘンリエッタ)もそんな感じだったらしいから、甘やかしは良くないなと再認識した。

 話しているうちに、次の国賓がやってくる。

 この国も便乗していたはず。身近に歳の釣り合う令嬢がいないけれど、裏で協力関係にあるはずだ。

 同じような挨拶を受けたあと、先ほどの話をしてきた。


「先ほどは何かあったのでしょうか?」

「いや、何もないですよ」

「そうですか……。かの王女は本当に王太子殿下をお慕いしていたようですから、ショックだったのでしょう」


 王女を庇う発言は、多分そちらが不利になっていると勘づいているからか。

 こちらに少しでも罪悪感を植え付けたいのか、チラッと見てきた。

 なので微笑んで言った。


「あら、そうなのですね。しかし、その様を相手に悟られるようでは、やはりまだ幼い方のようですわね」

「そうだな。こんな誰の目があるかもわからないところで、自分の感情を表に出すとは。それがどんな不利をもたらすか、理解できていないのだな」


 全く動じないうえに、フレディ様も同意しては不味いと思ったのか、そそくさと退散していった。

 ため息を心の中で吐いた。

 その後も似たような者が何人かいた。フレディ様は人気者だな。

 そんな場違いな感想が出てくるくらいには多かった。


「さて、挨拶は大体終わったな。2人は下で楽しむといい」

「ええ。そして、見せつけてあげなさい」


 陛下と王妃様に言われて、フレディ様と頷き合う。

 むしろ本番はここからなのだ。

 気合を入れ直した。

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