フレディ様がはしゃいでいるのは可愛いですね
これはどうしようかな。
どう言い繕っても、フレディ様は一番に祝福してほしかったよね。
一応流石だと一番に言ったけれど、その後のトミーへの対応で差が浮き彫りになってしまった。
それでも誰にいうわけでもないから言い訳させてほしい。
(どんなことがあろうと、トミーはわたくしの大切な家族なのよ! つい感動してしまうのも、仕方ないというか、普通のことだわ!)
と言い訳はここまでにしておこう。
心の中でひとしきり言いたいことを言って、気持ちを切り替える。
くるりとフレディ様の方へ体を向ける。
「殿下、失礼致しました。つい身内を贔屓してしまいましわ」
こういうのは謝ったもの勝ちだ。卑怯だけれど、謝罪されると向こうも怒るに怒れなくなるもの。
「……はあ。まったく。後で期待しとくよ」
「ええ。もちろんですわ。今日は殿下も王妃様に呼ばれているのでしょう?」
「ああ」
うん、今はやはり取り繕った状態で当たり障りない会話しかしないからね。
都合いいこと言えば、後の方がちゃんとお祝いできると思う。
そんな内心はおそらく全員にお見通しなのだろう。すこし呆れた視線を感じた。
◇◇◇
テスト関連のことが終わり、ひと段落つきたいところだけれど、もう卒業パーティーまで2ヶ月くらいしかない。
これからなんとドレスのことについて、話し合わなければならない。いえ、本来であればもっと早くに作るよう手配する予定だった。
それこそ、お母様の友人であるヴァネッサさんに依頼する予定だったのだ。時々彼女とはドレスを作る関係で顔を合わせていたこともあり、わたくしの寸法も理解していたので。
けれど、王妃様が言ったのだ。
「今、他国でさらに腕を磨いている、デザイナーがいるの。もうすぐ帰ってくる予定だから、彼女に任せたいわ」
「しかし、王妃様」
「名前で呼んでちょうだい」
「失礼しました。エリザベス様。そうなるとデザイナーの方にとって時間が足らないのでは?」
「大丈夫よ。他国に行っていた間は他のドレスの注文は受けていなかったの。本人にも確認したけれど、是非やらせてくださいと言っていたわ」
「そうでしたか。それではわたくしは異論ございませんわ。このパーティーは王国の威信をかけたものですもの。もてる力全てを結集させた方がいいですわ」
「ええ。さすがね。……もちろん、アメリア夫人にも許可はもらっているから安心してちょうだい」
そんなやりとりを経て、いよいよドレス採寸の日というのが今日というわけだ。
今回はフレディ様の意見を取り入れつつ、流行の最先端を行こうということでとても気合いが入っている。
後でフレディ様と話す時間……あるよね? と不安になるくらいには王妃様の気合が入っている。そしてフレディ様も。
「ヘンリエッタをようやく私の色に染めれるかと思うと、とてもわくわくするよ」
そう瞳をキラキラ輝かせながらいうフレディ様は、とても素敵だ。
「けれど領地でいきなりドレスを贈ってきたではありませんか」
「それとまた違うんだ。なによりヘンリエッタがそばにいるのが嬉しい」
「採寸の時は退出ですわよ」
「残念だ。その様子も見たかったのに」
「ええ……」
他の人がいる前で破廉恥な発言は控えていただきたい。
そう思うけれど、年相応にはしゃいでいるフレディ様が可愛らしいので、それ以上水を差すのはやめた。
扉をノックする音が聞こえる。
「来たわね。入ってきてちょうだい」
「失礼致します」
そして入室してきたのは、アッシュグレイの髪に、バイオレットの瞳の綺麗な女性。
ヴァネッサさんだった。
「この度は、王妃様直々の指名をいただき、とても名誉であります。今までで最高のドレスを作って見せます」
「ええ。期待しているわ。ふふっサプライズ成功ね」
「エリザベス様……これは」
「アメリア夫人からの推薦なの。彼女の作るドレスは最高だとね」
ニコニコ笑いながら、王妃様はヴァネッサさんをわたくしの前へ案内する。
「恐悦至極に存じます。ヘンリエッタ様、お久しぶりでございます」
「本当にお久しぶりですわ。他国に行っていたのですか? お母様から聞いておりませんでした」
「はい。アメリア夫人がヘンリエッタに秘密にした方が、後々面白いことになるだろうと言われましたがこういうことだったのですね」
お母様、きっと全てを予知していたのでしょう。流石です。
「ヴァネッサさんなら、安心ですわ。よろしくお願いします」
「はい。それでは採寸から始めましょう」
フレディ様は退出し、採寸が始まる。
テキパキと採寸するヴァネッサさんは感嘆の声を漏らす。
「ヘンリエッタ様は少し会わないうちに、とても魅力的な体になりましたね」
「本当ですか? 妃教育と並行して体作りもしていたので、嬉しいですわ」
「ええ。これは殿下も目を光らせないと、大変ですわね」
「それでこそ、2人の相思相愛ぶりが際立つわ。楽しみね」
王妃様の笑顔に邪悪なものが混ざる。
そして採寸が終わり、フレディ様も混ざってドレスのデザインの話になる。
「わたしの意見としましては、ヘンリエッタ様は実に理想的な体をしてらっしゃいます。この体型を活かすだけで、他の方を圧倒できると思います」
「なるほど。色は赤系統にしてくれ。生地はそうだな……ベルベットも艶やかなシルクも迷うな。シルクの場合は小さな宝石を散りばめるとより華やかになるか」
「赤系統ですと、殿下の髪色に合わせるか、瞳の色に合わせるかでも変わりますね。ヘンリエッタ様の色彩は、アリスブルーの髪に翡翠の瞳。ここで殿下の瞳のような明るめの赤ですと調和が取りづらいと思います。どちらかというと髪に合わせたダークレッドの方が、シックな感じを出せます」
「ふむ。そうするとベルベットのような重めの生地の方が良さそうか。ヘンリエッタはどう思う?」
「はい。わたくしも元々赤色と相性が良くないので、ここは調和の取れやすさを重視した方が良いかと思いますわ。重めにはなりますので、背中と胸は大きく開ける、グローブは細かめのレースにして抜け感を出すと良いのではないでしょうか」
「ヘンリエッタ様のいう通りですね。全体を重めにしてしまうとどうしても暗くなりやすいので。グローブの色は揃えて、統一感を出しましょう」
意外にもポンポン決まる。王妃様は満足げに頷いているので、及第点なのだろう。
「ドレスは限りなくシンプルにして、アクセサリーやヘアメイクで際立たせるのがよろしいかと」
「ああ。……ただ、胸元はレースでもいいから装飾してくれないだろうか」
「可能でございます」
「まあ。フレディったら、独占欲が強いのだから」
王妃様がフレディ様を揶揄う。顔を赤くしつつも否定しないあたり、図星なんだろう。
あ、なるほど。少しでもレースで肌を隠すのね。イブニングドレスって露出多くするものだけれど、やっぱり嫌なのか。
「ドレスの形は、体のラインに沿わせつつ、裾のあたりをふんわりさせるのはいかがでしょう?」
「良いですわね。ベルベットの生地的にも合いそうですわ」
顔を赤らめてしまったフレディ様の代わりに答える。
細かい調整をして、大体決めることができた。
「ではこれで作らせていただきます」
「よろしくお願いします」
そうしてヴァネッサさんは退出していった。
「わたくしも席を外すわ。今日は妃教育もないから、ゆっくりして言ってちょうだい」
「ありがとうございます」
2人きりになりテストの話をしようとしたけれど、なぜか甘えモードになったフレディ様を甘やかすことになり、結局流れてしまった。
……本人が満足そうだったので、まあ良いか。
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