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転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど!?  作者: 水月華
4章

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本当に褒められています?


 王妃様はにこやかに笑いながら、しかし威厳を漂わせながらその男性に話しかける。


「ねぇ? 陛下の留守を守るためというのも王妃の大切な仕事だとあなたは言ったけれど、その慢心が今回の事を助長させたのではなくて? あんなに“自分が宰相として陛下のサポートをします“なんて大口叩いていたのに」

「返す言葉もございません」


 宰相ということは、ダニエル様のお父様か。

 あ、深い緑の瞳が同じね。後、体型がよく似ている。背はそれなりにあるけれど、筋肉質ではない、いわゆるひょろっとしたかんじ。


「王妃よ。これに関しては私も悪い。バーナードばかり責めてくれるな」

 

 王妃様はああ言っているけれど、この宰相、バーナード公爵はかなりのやり手だ。

 というのはお父様の話だ。わたくしたちの方に直接その手腕を聞いたことはない。

 お父様曰く、影から支える宰相だと。目立つことはしない、その功績は全て陛下に向くように動いているのだと言っていた。

 後は堅物ではあるが、ユーモアセンスに溢れた人だということも評価していた。

 そういえば、入学式でダニエル様が似たような事を言っていた気がする、ともその時思ったものだ。


「まあ、けれど影の立役者と言われた宰相様ですわ。その手腕を信じてわたくしは納得しましたのに」

「あれは……本当に数の暴力だったのだ。申し訳ないが、後でまた聞こう。スタンホープ侯爵家が置いてかれている」

「ふう。仕方ありませんわ。今回はここまでにして差し上げます」

「ありがとう。さて、本題に入ろう。今回は私の不手際だ。しかし、ここで逆手にとって動けば、今後の国交で有利に進められるだろう。どうか協力してほしい」

「陛下の仰せのままに」


 お父様が代表して返事をする。


「そこで、だ。ヘンリエッタ嬢は聞いていると思うが、ここでこのような行動を2度と起こさせないよう、完膚なきまでに叩きのめしたい。そのためにも、ヘンリエッタ嬢の協力が必要だ」


 陛下直々の要請に、そこ知れぬ重圧を感じる。

 ゴクリ、と口の中に溜まっていた唾液を飲み込む。


「もちろんでございます。不肖の身ではありますが、このナトゥーラ王国のため全力を尽くす所存です」

「ふっ。さすがはアメリア夫人の娘だな。この堂々さたるや、一貴族の令嬢とは思えん」

「光栄ですわ、陛下。わたくしの技術の遂を詰め込みましたもの」


 陛下から見ても、わたくしは側から見たら堂々として見えるのか。

 いえ、これは貴族特有の遠回しな嫌味? けれどそうしたらお母様の返答がもう少し違うと思う。

 はっ。もしかして、お母様も陛下の御前だからいつものような返しをしないとか?

 内心はもう情緒がグラグラと今にも崩れ落ちそうだ。

 たかが一令嬢ごとき、陛下直々に褒められるなんておかしい。後、わたくしの緊張が伝わってないなんて、おかしい。

 そんなわたくしを他所に、会話は進んでいく。


「頼もしいな。それではそのヘンリエッタ嬢にやってもらいたいことはだな、ズバリ、フレディとの仲をどんどん深めてほしい」


 あ、本当に陛下はイチャラブ作戦を決行しようとしている。

 陛下自身の口から出ると、本当に考えていたのだと実感する。

 フレディ様は何か言いたげな表情はしているが、ここで口を挟まないように言われているのか何も言わない。


「陛下、恐れながらよろしいでしょうか?」

「なんだ?」

「わたくしも殿下とお話ししまして、異論はありません。しかし、殿下は違う様子。お言葉ではありますが、殿下の意志を無視したくはございません」

「ほう」


 フレディ様はこちらを見ている。その表情は複雑な表情をしていた。あの時もだいぶ複雑そうだったからな。


「と、いうことらしいが? レディにこんなことを言わせるとは、フレディは本当に恋愛では臆病なのだな」

「そ、そういう意味では……」

「良い。ヘンリエッタ嬢は愚息を想ってのこと。しかし、今までの愚息を思えば、意外すぎてな」


 言い方を間違えてしまったと、体の温度が下がる。

 しかし、陛下はわかっているとこちらを制した。

 その青い瞳がきらりと光った気がした。


「いやぁ。そうか、初恋を拗らせていたか」

「父上っ!」


 ついに人前なのに、取り繕わなくなってしまったフレディ様。それほど動揺されていますね。

 完全に揶揄われているし、そもそもこの場で言われるのはだいぶ恥ずかしいよね。

 

(あああああ。わたくしが余計な事を言ってしまったから。ごめんなさい、フレディ様)


「はっはっは。いや、ヘンリエッタ嬢には感謝しているんだ。王妃も言った通り、堅物だからな。それでだ、ヘンリエッタ嬢。よければ王妃と話してくれまいか」

「わ、わたくしがですか?」

「ああ。アメリア夫人よ、問題なかろう?」

「ええ。我が娘は問題ないですわ。さあ、ヘンリエッタ。いつも通りで良いのよ。頑張ってきなさい」

「お、お母様?」


 どんどん話が進んでいく。そしてお父様ではなくお母様に聞いたのも不思議だ。

 しかし拒否権なんてない。何せ親が許可しているのだから。

 緊張しながらも、立ち上がった王妃様についていくことになった。

 フレディ様も後ろに続く。


(え、いや。フレディ様がわたくしの後ろはまずいでしょう)


 そう思い、フレディ様が前になるように移動しようとしたら、なぜか首を横に振られた。

 仕方ないので、そのまま進むことになった。

 陛下やお父様たちはまだ話すことがあるらしく、引き続き会談するようだ。

 わたくしたちが出来ないことをカバーしてくれるのだろうか。


 ◇◇◇


 王妃様に連れられ、庭園に到着した。

 侯爵家の庭園も整備されているけれど、ここはその比ではない。

 薔薇を主体とした庭園か。色とりどりの薔薇が、芳醇な香りを振りまいている。

 ガゼボに案内されて、王宮の侍女に椅子に座るように促される。

 もう段取りは決まっていたのだろう。既にお茶の用意がされてあった。

 フレディ様はわたくしの隣に、王妃様はわたくしの正面へ座る。


「ふふ。ここはわたくし専用のお庭なの。わたくしは薔薇が好きで、自分で手入れしたりするのよ」

「まあ、ここまでの薔薇を王妃様が……。圧倒されますわ」

「流石にずっとではないけれどね。時間があれば足を運ぶようにしているわ」


 それでも凄い。そもそも王妃様も多忙なはずで、本来であればお花は鑑賞するだけでお世話する時間なんてほとんどないはず。

 庭園に見とれていると、お茶がカップに注がれる。

 普通の紅茶とは違う。お茶からも薔薇の香りがする。

 王妃様が一口のみ、微笑む。

 わたくしもお茶を口に含んだ。

 薔薇の香りは気のせいなどではなく、口に入れば鼻腔一杯に薔薇とお茶の香りが満たされた。

 よく見ると底に薔薇の花びらが沈んでいる。


「わたくしが開発したの。お味はいかがかしら?」

「とても素敵ですわ。この口に入れた瞬間、全身を包む薔薇とお茶の香り。それでいて、後に残らずスッと引いていくこの味。美味しいです。王妃様の才能には脱帽いたしますわ」

「ふふ、ありがとう。お茶菓子にも薔薇を使っているの。ヘンリエッタ嬢もお菓子のアイデアを出すと聞いて、ぜひ感想を聞きたいと思っていたのよ」

「わ、わたくしの感想ですか? とても恐れ多いですわ」

「フレディから聞いたのよ。肝心の味は覚えていないなんて言ったから叱ったけれど」


 そうクスクス笑う王妃様。まるで完成された絵画のよう。

 それよりフレディ様のお菓子というのは、あの2人が画策された“あーん事件“(ネーミングは適当)のことですね。

 確かにあの時は色々な意味で暴走していたから、味を忘れても仕方ない……って。あの時、かなり派手なことしましたわ?

 それなのに、なぜフレディ様はこんなに恥ずかしがっているのかしら。

 矛盾しているわ。

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