イチャラブが見たいそうです
段々収集がつかなくなってきた。結局、どうすることになるのだろう。
「ええっと、それでは殿下とへティは個別で話し合ってほしい。トミー、あまり揶揄いすぎるんじゃないぞ」
「なぜ名指しで注意されたのでしょう?」
「今までのトミー様を見ていれば当然かと思いますわ」
お兄様が一旦話を区切る。うん、ここはその方がいいななんて思っていたら、トミーは少し不満気だ。
パトリシア様があきれたように言っている。トミーも流石に旗色が悪いと思ったのか、それ以上文句はなかった。
「今回はとりあえず、このことを説明するために集まってもらいました。また後日、召集をかけますので解散しましょう」
「わかりました。内容が内容ですので、まだクラスメイトには黙っていた方が賢明ですね」
「ええ。そうですわね。ここの中だけの話にしましょう」
ダニエル様とパトリシア様の言葉に、頷く。余計なトラブルしか生まないし、ここの発表は学園長が頑張ってもらいたいものだ。
それじゃあ今日は帰ろうという空気になった時、トミーに背中を押される。
「トミー?」
「姉上は、殿下と先に話し合っておいた方がいいですよ。ちょうどここの生徒会室なんていい場所でしょう」
そう言いながら、トミーはフレディ様の方へわたくしを押す。
確かにこれはパーティ関係なく決められるだろうから、早めに話し合っておくべきかもしれない。
フレディ様の様子を見ていると、慣れも必要だろうし。
お兄様も頷いているので、許可してくれるようだ。
「幸い、今日は生徒会の集まりはないんだ。だから来て貰ったのものあるけれど。僕は別室で作業するから、ここを使って大丈夫だ」
「ありがとうございます。フレディ様はそれでよろしいでしょうか?」
「……」
「あ、だめですね。まだ意識がどこかへ行ってます。姉上、このまま既成じじ――」
「それ以上はストップですわ」
「むぐ」
トミーが紳士にあるまじきことを言い出しそうになったので、慌てて口を塞ぐ。
「いつもと立場が逆転してますわ」
「ヘンリエッタ様も止めるときは止めるんですね」
「パトリシア様とメアリー様は今日、茶々しか入れていない気がするのですが!」
フレディ様が意識を飛ばすほどに、追い討ちをかけたのは2人だと思う。
「気のせいですわ。ねぇメアリー様?」
「はい、気のせいです。決してヘンリエッタ様たちのイチャラブを見たいとか思っておりませんとも」
「本音がダダ漏れですわ! メアリー様に関しては予想の範疇でしたが、パトリシア様は止める側だと思いましたのに!」
「それこそ、ヘンリエッタ様の言葉とは思えませんわ。ええ、わたくしもメアリー様のように、他人のいちゃらぶを見て興奮する気持ちを味わって見たいとか思っておりませんとも」
「パトリシア様……なるほど、わかりました。ご期待に添えるよう頑張りますわ」
「それも殿下次第になりそうですけれどね、楽しみにしてますわ」
パトリシア様が見たいと言うのだから、心情面では大丈夫なのだろう。
あとイチャラブという言い方が少し舌ったらずなのが可愛かった。そういうなんていうか、俗物的な言葉を使ってこなかったのがわかる。
そうして4人は帰って行った。残ったのはわたくしとお兄様とフレディ様。
「それじゃあ、僕は向こうで作業しているよ。流石に役員が誰もいないのに、使わせるわけには行かないいから」
「ご配慮、ありがとうございます。こちらはお任せください。あ、けれどだれか来た場合は都合が悪いので、わたくしたちが別室を使わせてください」
「それもそうだね。今日は来客の予定はないけれど、万が一もあるからそうしよう」
「はい。フレディ様、行きましょう」
「あ、あれ? 皆は……」
「後で説明しますからとりあえず行きましょう」
そう言って、動きの鈍いフレディ様の手をとって歩き出す。幸い、まだ思考が働いていないようなので好都合だ。
生徒会室と繋がっている扉から、お兄様に言われた部屋へ入る。
生徒会室よりは狭いけれど、そもそも元の部屋が大きいだけなので十分に広い。
「生徒会って結構権力があるんでしょうか」
「そうだね。生徒の意見をまとめ上げ、反映する。生徒会に選ばれるには、日頃の成績、素行が大事だから選ばれるには名誉なことだろう。特に平民で入学していたり、爵位が低いものは絶好のチャンスだ。努力しているものも多いと聞く」
「まあ、そうなのですね。って殿下、戻ってきたのですか?」
「体はここにあっただろう……という言い方も変だね。すまない、迷惑をかけたようだ」
「いいえ、あれこそ陛下の受けた多勢に無勢だったのでは?」
「確かにそうかもしれない」
フレディ様は苦笑しながら言う。
「それよりヘンリエッタ嬢、いくらなんでも生徒会への興味がなさすぎじゃないか? 一応兄君が生徒会長なのに」
「……だって、生徒会ってどう考えてもわたくしの敵ではないかと言う疑念が拭えなかったので、関わりたくなかったんです」
「ああ、例の前世の記憶か。けれど今は違うだろう?」
「そうですね。流石にこれからはもう少し、周りに目を向けましょう」
「それに来年の生徒会にはヘンリエッタ嬢も呼ばれるはずだよ?」
「え? そうなのですか?」
「ああ。理由なんていくらでも上げられる。まず、先のテストで一位を取っただろう? 元々の素行も良い。魔術の才もある。選ばれない理由があるかな?」
「えっと、確かに……って、それでもおかしいですわ! だって基本的に生徒会って3年生から選ばれるでしょう? わたくしたちはまだ来年は2年生ですわ」
「そうなんだけれどね。王族が入学すると話が変わってくるんだ」
「ま、まさか」
「多分そのまさか。王族が2年生になったら生徒会長となることが暗黙のルールになっているんだ。将来国をまとめるためにも、いい練習になるだろうとね。役員もその時ばかりは同じ年から選ばれることも多い」
「学園は平等では⁉︎」
「そう言うところは貴族が色濃く出てしまうよね。元々貴族中心の学園だから」
ああ、まだ発展途上の弊害が……。いいえ、弊害ではないかもしれない。
よく考えたら、人の上に義務付けられている王族だ。例外は必要だろう。
王政が続く限りはそういうことになるだろう。
「けれど治安も考えたら、そういったことは続けたほうが安全かもしれませんね」
「そう言う考えも、もちろん大切だね。これは何が正解とかはないから難しいことだと思う」
「そうですね。わたくしたちがその時考える、最善手を打つことが大切なのでしょう」
「……ところで、どうして私たちは別室にいるのかな?」
フレディ様の言葉に、そういえばまだ説明をしていなかったことを思い出す。
「あ、申し訳ありません。説明しておりませんでしたね。端的に言えば、卒業パーティのために話し合いをしろと皆様に言われたもので」
「そうだったのか。最近皆が強かになってきて驚いているよ」
「わたくしも驚いていますわ。けれど先ほどのような殿下も、親近感があって良いと思いますわ」
「流石に大勢の前で見せるわけにはいかないけれどね。……ところで、今は2人きりと言うことでいいのかな?」
「そうですね? お兄様も隣にいますが、防音がしっかりしているみたいなので声が聞こえることもなさそうです」
「それじゃあ、ヘンリエッタ?」
「なんでしょうか、でん……いえ、フレディ様」
危ない。今殿下と呼んでいたら望まない展開になるところだった。
とはいえ、フレディ様も照れがあるのか、少し顔が赤い。
もっとやはり相手からこられると弱いのかしら。
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