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転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど!?  作者: 水月華
4章

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甘えるとは?


 普通に考えたら、まだ正式な婚約者になっていないのだ。ということは、あまり2人きりになるようなことは歓迎できないということ。

 堅く考え過ぎと言われることもあるけれど、スタンホープ侯爵家の長女として、不利になるようなことはしたくない。

 うん。今は我慢の時ね。こういう時は。


「さて、もう少しやろうかしら」

「お嬢様、やりすぎではありませんか? 私、だいぶ頑張ったんですけれど」


 エマが顔を引き攣らせながら、恐る恐るという風に言ってくる。


「まあ、エマは今日初めてやったのだもの。わたくし1人でやるわ。ストレッチも終わったのだし」

「いいえ、お嬢様。私とやりながらでも1時間近く経っております。以前であれば、切り上げていた時間でしょう」


 流石エマ。よく見ている。


「さあ、今日は先に湯浴みをして、ご夕食を食べて早めにお休みしましょう。寝てしまえば、嫌なことも、寂しいことも考えなくて済みますから」

「……エマには敵いそうにないわ」


 そこまで見破られていたとは。


「お嬢様はもう少し我儘になって良いんです。婚約者の我儘をどれだけ叶えられるか、殿下の腕の見せ所です。あと、殿下にはお嬢様をしっかりリードしていただかないといけませんし」

「ふふ、ありがとう。エマにそう思ってもらえるだけで、とても楽になったわ。……今日は寝るまで、手を繋いでもらおうかしら」

「お嬢様が望むのであれば」


 当然のように返され、目を見開く。

 そこまで寂しそうにしていたのだろか。自覚がない。


「私だけでなく、旦那様、奥様もきっと叶えてくれますよ」

「……そうね。恥ずかしさが勝ってしまうけれど。昔は甘えていたのに」

「それだけ、お嬢様も成長されたのでしょう。時間的には長くない私でも、お嬢様の成長に驚くばかりです」

「もう、第二のお母様かしら」

「年齢的にそれはちょっと……19歳ですし」

「それじゃあお姉さまね」

「……私には勿体無いくらいですが、吝かではありません」

「ありがとう。それじゃあお姉さまのいう通り、湯浴みします」

「……準備しますね」


 そう言って、一旦退室するエマ。


「私に勿体無いくらい、か……。わたくしのセリフだわ。頑張ろう」


 1人になった部屋で、密かに決意した。


 ◇◇◇


 湯浴みを終えて、夕食の時間になった。

 ちなみに、妹ぶって思い切り甘えさせてもらった。普通なら許されないけれど、エマと一緒に入浴した。

 とても拒否されたけれど、顔が良いものの特権で上目遣いでお願いしたら了承してくれた。

 顔が良いってお得だ。

 恥ずかしがるエマが、一番可愛いと思ったのは内緒だ。

 うん、そうね。甘えてみて実感したけれど、とても良い。心が満たされた。

 これからは定期的に誰かに甘えても良いかもしれない。人の目を考えて、家族限定になりそうだけれど。

 パトリシア様とメアリー様も甘え、甘えさせたい。むくむくとやりたいことが出てくる。

 いかんせん、フレディ様を対象にするにはいろいろな意味でハードルが高いからね。

 鼻歌を歌いながら、ダイニングに向かう。

 入ると、お兄様とトミーが話していた。


「お兄様、トミー。なんのお話をされていたのです?」

「ああ、へティ。いや、ダニエル様の話をしていたんだ。目下の所、彼が一番青春をしているから」

「そういえば、アドバイスをもらったと言っていましたわね」

「全く、勘弁して欲しいですよ。僕の心情も考えて欲しいです」

「まあ、成り行きでそういう話になってしまったのだし」


 トミーの不服げな表情はとても可愛らしい。すごく庇護欲、母性をくすぐられる。

 わたくしより精神の成熟が早いとはいえ、元の顔の造形が愛らしいもの。仕方ない。


「けれどわたくしたちに相談するように言ったのは、トミーなのでしょう? とても優しいわね」

「それに乗じて、殿下にこれでもかと自慢してあげましたよ」

「ふふ、ダニエル様の話を聞いていた限り、お兄様も殿下も女性の扱いが惜しいようだったから、勉強にもなったんじゃないかしら?」

「え? 何かダメだった?」


 わたくしの言葉に、お兄様が身を乗り出して聞いてくる。

 わたくしは顔をツンと背けながら言った。


「いいえ? わたくしやパトリシア様でしたら、大きな問題ではありませんわ? とりあえず高級なものをプレゼントするという、俗物的なもの以外は」

「え? え?」

「兄上、考えてください。なぜ僕が、女性の意見も聞くべきだと言ったのかを。穴があるから提案したに決まっているじゃないですか」

「そ、そうなのか?」

「はい。お兄様。あながち間違いではありませんが、そもそも高級品をもらって嬉しいというのは、偏見が入っていますわ」


 これから現れるであろう、お兄様の婚約者のためにもちゃんと言っておかねば。


「そもそも、プレゼントを貰って()()()喜ばない方はおりません。お兄様、ご自身に置き換えて考えてください。もしご令嬢、それも憎からず想っている方が、“領地経営の本“や“武術に対する心構え“なんてプレゼントに送ってきたらどう思います?」

「え? なんか違くないかい?」

「……はあ。良いから、考えるのです」

「は、はいっ。……そうだな、嬉しいけれど何か違う気がする、かな。そもそも領地経営や武術って、基礎はあるけれど人によって違うところが出てくるし」

「そうですわ。淑女にとって、宝石は商売道具の一つ。自身が侮られないように、高価な宝石で自身をアピールするのです。わたくしは、この宝石を身につけられるくらいの人間なのだと」

「あ、ああ」

「裏を返せば、あまりに不相応な宝石を持っていると、影で言われます。まあ、そこまで言うつもりはありませんが。で、お話を戻しますわ。メアリー様の爵位は?」

「男爵位だ」

「ダニエル様の爵位は?」

「公爵位……ああ、なるほど、そう言うことか」


 分かってくれたらしい。


「後メアリー様の性格も把握していたら100点ですわ」

「いや、すまない。これは僕が悪い。まだ婚約者ではないのに、公爵家が購入できる宝石なんて買えばメアリー嬢が何されるか分かったものではないな。……それに彼女なら、遠慮するだろう。ああ、本当に、気がつかなかった」

「わかっていただけて何よりですわ。ただ、もちろん、お兄様や殿下が提案した計画が全く悪いと言うわけではありませんわ。及第点です。ただ、メアリー様相手ではよくなかっただけです。お兄様も、デートに誘う際は相手をちゃんと考えてくださいね」

「ああ、ありがとう」

「そう言う姉上は、僕のデートはいかがでした?」


 トミーの質問に、笑顔で答える。


「もちろん、100点満点ですわ。とても楽しかったですし、大切な思い出になりました」

「……良かったです」


 トミーはわたくしの言葉を噛み締めているようだ。うん、良い方向になっていると思う。


「2人は大人になったねぇ。僕が置いて行かれている気がするよ」

「まあ、お兄様ったら。女性と積極的に関わってこなかったからではないですか?」

「うん、否定しない。これから頑張るよ」

「応援していますわ。何か相談があれば、わたくしたちいつでも聞きますわ。ね、トミー」

「はい。兄上は大切な家族だから」

「へティ、トミー……」


 お兄様は目を潤ませている。ここでふと気がついた。

 ここでお兄様は昔なら、スキンシップをしてきたのだ。

 ふむ。


「お兄様、ここでハグのタイミングでは?」

「へあっ」

「……」


 お兄様はわかりやすく動揺した。トミーは無言。

 わたくしは小首を傾げながら言った。もちろん、あざとさ重視です。


「いけませんか? そう、わたくし、センチメンタルな気分だったんです。だから甘えさせてください」

「え、あ、うっ……ええ⁉︎」


 お兄様がもうパニックだ。トミー相手にも抱きついていたのだし、良いと思う。

 けれど、せっかくのチャンスなのだし、逃す気はさらさらなかった。

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