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転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど!?  作者: 水月華
4章

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センチメンタルな気分です


 そして邸に帰宅する。部屋に戻り、制服から着替える。楽な、けれど上等の布を使ったシンプルなワンピースだ。

 腰の辺りまで伸びた髪をそっと撫でる。アリスブルーの髪色はお父様似、ウェーブの髪質はお母様似。自慢の髪だ。

 そして引き出しからトミーから貰った髪飾りを取り出した。翡翠色のガラスが揺れる。

 指で髪飾りの輪郭をなぞりながら、物思いに耽る。


(当たり前だけれど、日々皆変化している。未来に向かって進んでいる。一抹の寂しさを感じるのは、どうしてかしら……)


 悪いことではないはずだ。だってわたくしたちは努力したうえで変化しているのだから。

 それでもこの言いようのない感情。センチメンタルな気分に浸る。

 気持ちを切り替えるように、髪飾りを机に置き両手で頬を勢いよく叩く。

 そしてトミーから貰った髪飾りで乱雑に髪を纏めて、気合を入れる。

 脚を大きく開き、腰に手を当ててゆっくり落とす。下がりきったところで数秒堪え、ゆっくり腰を上げる。

 ワイドスクワットだ。これがかなりきついのだ。


「3…………4…………5…………」


 雑念を払うように腰を落とし、お尻と内腿の筋肉の感覚に集中する。

 段々効いてる部分が重くなってくる。


「さん、じゅうっ……く、まだっまだ」


 ここだ。限界と感じてからさらに5回。もう脚がプルプルしている。

 けれど負けない。


「うっ、あああああ」


 雄叫び(声量は最小限)なんとか35回やりきって、大きく深呼吸する。

 今度は床に膝をつき、両肘をつく。膝を伸ばし体が一直線になるように意識する。

 お腹に力を入れて、その体勢をキープ。

 プランクだ。地味な見た目に反して、とてもきつい。

 ワイドスクワットしたことも相待って、汗がじんわりと額に滲む。

 秒数を数える。


「20……21……22」


 1分耐える。たった1分なのに、何倍にも感じるのが不思議だ。耐え切り、力を抜く。

 立ち上がり、再びワイドスクワット。終われば、プランク。それを3セット。かなりきつい。

 終わる頃には、呼吸がすっかり上がりきっていた。

 汗が頬を伝う。夏の盛りは過ぎたけれど、まだ暑い日が続いているのもあり、汗が止まらなくなった。

 タオルで吹き出た汗をぬぐいながら、最後に大きく深呼吸して呼吸が落ち着く。

 やはり筋トレはいい。余計な雑念を振り払うことができた。そして強制的に思考を変えたことで、センチメンタルな気分も和らぐ。


 (そうね。筋トレと同じように、築き上げてきた時間は裏切らないわ。そう、わたくしたちの肩書きが変わったとしても、積み上げた信頼、友情は変わらないわ)


 やはり筋トレ。筋トレは全てを解決する。身体(フィジカル)と一種に(メンタル)も鍛える事ができる。

 身体も引き締まって綺麗に見えるし、淑女に大切な姿勢の綺麗さにも影響する。

 素晴らしい。

 1人頷いていると。


「お嬢様、どうぞ。汗もかいたのでしょう? 水分を取ってくださいね」

「まあ、ありがとう。気がきくわね、エマ」

「当然です」


 終わったタイミングでエマが冷たい水分を用意してくれる。

 多分、筋トレの途中からこちらの様子を確認して、水分を用意してくれたのだと思う。

 他の家はよく知らないけれど、わたくしは基本的に返事がなくても入室していいと伝えている。

 もちろんそれはエマ限定なのだけれど。専属侍女で濃密な時間を過ごしているので、信頼関係も築けている。

 さらにエマは気遣いの天才というのも、入室を気軽にしている理由でもある。

 わたくしの返事がない時は、大体において集中していて聞こえない時だ。そっと様子を伺って、わたくしが欲しいものをくれる。

 将来はとても良いお嫁さんになるに違いない。だからこそ、エマの相手はそれに見合った相手でなければ。

 わたくしに協力できることは、なんでもしたい。最も、本人はわたくしに一生を捧げようとしてくれているので、今は出番がない。

 わたくしのように変わることも十分に考えられるので、その時は頑張りたいと思っている。

 閑話休題。


「お嬢様、これ以上魅力的になってどうする気ですか」

「あら、筋トレは日々の継続が大事なのよ。どうしても学園などでやる時間が限られてしまうけれど、そもそも筋トレってストレス発散になるの」

「それは答えなのになっています? それにとても辛そうな顔をされていましたが」

「見た目だけの作用ではないという話よ。確かにやっている時はとても辛いわ。けれど終わるとスッキリするし、何より段々できること増えるのが明確にわかるの。理想の身体に変わっている過程も、モチベーションが上がるわ」

「そうなのですか……」

「興味ある?」

「流石にそこまで力説されると、気にはなりますね」

「それじゃあエマもやりましょうよ。一緒にやる相手がいると、わたくしも助かるわ。どうしてもサボってしまうこともあるし」


 エマは少し悩んで、了承してくれた。

 仲間ができて嬉しい。以前にお母様に勧めて一緒にやったけれど、お母様はギブアップしてしまったし。

 早速やろうというと、エマは驚いた。


「え。今ですか? この格好では流石に……」

「あ、そうよね。汗をかいたら、仕事に響くものね。わたくしの服を貸してあげるわ。身長は大きく変わらないのだし」

「そんな、お嬢様のものを借りるなんて」

「こういうのは思い立ったが吉日。勢いが大事なのよ。わたくしたちの秘密にすればいいでしょう?」

「ですが……」

「では、命令です」

「は、はい」


 わたくしの勢いに、目を白黒させながら押し付けた服を受け取るエマ。動きやすいと言えど、ゆったりしたワンピースである。

 この世界にスポーツウェアと言われるものはない。

 エマが着替えたところで、まずは簡単な(キツくないとは言っていない)筋トレを始める。

 最初は普通のスクワットだ。やはり、下半身の筋肉を鍛えることが、効率の良い道ではある。


「こ、これ、思ったよりきついですっ」

「けれどフォームは合っているわ。そのままあと3回、頑張って!」

「うああああっ」


 わたくしと同じように、最後は叫び声を上げながらエマはやり切った。


「はあっ」

「すごいわ、エマ。よく頑張ったわ」

「けれどお嬢様はこれの倍はやってますよね……」

「それは経験の差よ。続ければエマだって、同じようにできるようになるわ」

「……次をお願いします」

「! ええっ」


 そして30分後。

 エマは意外にもしっかり食らいついてきた。負けず嫌いなのかもしれない。


「今日はここまでにしましょう。今度はストレッチをしましょう。ちゃんと伸ばしておかないと、後で筋肉痛になるわ」

「筋肉痛ですか?」

「ええ。明日くらいには、階段も辛いくらいの痛みが出る事があるの。エマはお仕事があるし、念入りに伸ばしておかないと」

「時折、お嬢様が変な動きをしていたのは」

「ええ、筋肉痛よ。確かに痛いけれど、頑張った証とも取れちゃって嬉しいのよねえ」

「……えっと」


 エマが少し引いている。仕方ないだろう、痛い思いをする事が嬉しいと言っているようなものだから。


「けれど筋肉痛が必ずしも必要なことではないわ。だからストレッチして、しっかりご飯を食べてちょうだい」

「食事、ですか?」

「ええ。そうすると筋肉の回復も早いし、痛みも軽減するわ」

「わ、わかりました」


 エマも水分をとりながら、ポツリと言った。


「お嬢様、騎士団で筋トレを教えても良いのでは?」

「確かに、引き締まった殿方の身体を見れるのは良いかもしれないわね」

「そうではありません。あと、殿下が不憫なのでやめてあげてください」

「あらうっかり」


 けれどフレディ様は結構良い身体してたんだよなぁ。

 エスコートで触れた腕とか、固かったし。

 結局、フレディ様とあまり話せていないな、とふと思った。


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