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転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど!?  作者: 水月華
4章

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勝負ですわ!


 その後は何事もなく……というか、殿下と話すことなく食事が終わった。

 家族皆で話すとかであればまだ話はしやすのだけれど、2人で話すとなるとなかなか難しい。

 家族の誰か(主にお父様かお母様)が話して、それに相槌を打つという状態になっていた。

 食事が終わり、殿下は早めに休むことにしたようだ。長旅の疲れもあるだろうから、ゆっくり休んでいただきたい。

 わたくしも部屋に戻ろうとしたけれど、お母様に呼び止められてしまった。


「へティ、よかったらこの後わたくしの部屋にいらっしゃい」

「……ええ。わかりましたわ」


 本音を言うと、あまり行きたくない。舌戦になった時に、お母様に勝てる気がしないからだ。

 けれどあんなことがあった手前、文句も言いたい。言いくるめられるのは目に見えているけれど。

 内心色々かんがえたけれど、断ると言う選択肢はないので大人しく頷いた。


「着替えてから参りますわ」

「ええ。わたくしも着替えるわ。待っているわね」


 もう食事は終わったのだから、いつまでもドレスでいるのは辛い。

 最近コルセットをしてなかったのもあり、だいぶ苦しいので楽な格好に着替えたかった。

 着替えの許可が降りたので、一先ず安心して部屋に戻る。

 エマに着替えの手伝いを頼むと、すぐに準備を始めた。

 その時、エマの様子にふと気がついた。


「エマも殿下がいらっしゃることをあらかじめ知っていたのでしょう?」

「ほあっ⁉︎」


 聞いたことのない素っ頓狂な声を上げて、全身で飛び跳ねている。

 そんなに驚くようなことを言ったつもりもないのだけれど。

 それにエマって感情表現は豊かだけれど、驚いたり、冷静さを欠くと言ったことはないのに。


「あ、あああああの、お嬢様っ」

「えっと、おちついてね? まだなにも言ってないわ」

「申し訳ありません‼︎」

「落ち着きなさいって」


 これでは小言も言えない。無理やり肩を掴み、目を合わせる。

 しかしなんとか目を逸らそうとしているのか、目が今まで見たことがないくらいに泳いでいる。

 眩暈を起こしそうなくらいに泳いでいるのは心配だ。

 肩をつかむ手に、思い切り力を込める。その痛みにエマはようやく落ち着いてきたようだ。


「あ……」

「もう、やっと落ち着いたわね。ある程度はトミーから聞いているわ。殿下の……この場合は当主であるお父様ね。エマの雇い主からの指示を無視するわけにもいかないでしょう。怒っていないわ」

「で、ですが……私は、お嬢様の専属なのに」

「確かにエマは私の専属よ。けれどそれはお父様、当主の指示なのだから、力関係は歴然としているわ。貴女は侍女として正しいことをしているのよ」

「は、はい……」


 一言くらい恨み言を言うなんて発想は、すでに無くなっていた。そもそもここまで悩んでいた人間に追い打ちをかけるほど、わたくしは鬼畜ではない。

 なんというか、エマがここまで追い詰められているのに、気がつかなかったのにも罪悪感がある。


「わたくしこそ、ごめんなさいね。エマがそんなに悩んでいたのに、気がつかなくって」

「そんな……」


 まだエマは後ろめたさがあるらしい。ここは話をずらそう。気にしていないと主張するためにも。

 それから着替えよう。エマに着替えの続きを促して、エマもそちらに意識がいく。


「それにしてもエマはお姉さまだと思っていたけれど、一気に親近感が出てきたわ」

「え?」

「そんなに慌てているの、初めて見たわ。きっとエマのファンが見たら、悲鳴が上がるわね」

「私にファンなんていませんよ。お嬢様に、というのならおかしいことではありませんが」

「あら、エマったら意外と鈍いのね」


 使用人、特に男性陣の噂話は意識すれば入ってくる。流石に下世話な話は仕事中ということもあって入ってこないけれど。

 それでも密かにエマに人気があるのは、すぐにわかりそうなものなのに。

 わたくしと同じように、自分のことになる鈍くなるのね。意外と人間ってそんなものなのかも。

 エマも落ち着いたようなので、何よりだ。ちょうど着替えも終わる。


「ありがとう。それじゃ、わたくしはお母様のところに行ってくるわ」

「はい。行ってらっしゃいませ。……あの、お嬢様」

「何かしら?」

「私、いつかお嬢様に忠誠を誓えるくらいに、偉くなって見せます!」


 それはそれで問題があるけれど、エマの気持ちはとても嬉しい。


「まあ、楽しみにしているわ」


 そう言って、お母様のところへ向かった。


◇◇◇


「お母様、ヘンリエッタですわ」

「お入りなさい」


 許可されて、入室する。

 先ほどの侯爵夫人たる姿とは違い、簡素なワンピースだ。とはいえ、刺繍やらレースやらとても繊細な作りをしている。

 わたくしも似たような姿だけれど、お母様の方が比べるべくもなく美しい。


「寝る前だし、お茶だけ用意させたわ。どうぞ、座りなさいな」

「ありがとうございます。失礼します」


 ソファに座り、お茶を飲むことなく本題に入る。


「それで、お話とはなんでしょう?」

「まあ、せっかちね」

「ええ。わたくし、お母様に聞きたいことがありますの。そのためにもお母様の用件を済ましていただきたいのです」

「そう。けれど安心なさい。きっと貴女の聞きたいことと、被っているわ」

「では、殿下のことですね?」

「その通りよ。どうだったのかしら?」

「そうですね。やはり殿下といえど、長旅の疲れは多少あるようですわ」

「まあ、違うでしょう?」


 ええ。内心勝てるとは思っていないものの、ちょっとくらい勝負を挑んだっていいでしょう?


「あら、大切なお客さまである殿下のご様子をお知りになりたいと思ったのですが、違うのでしょうか?」

「そうねぇ。最近へティのお悩み相談を受けたでしょう? その答えも知りたいのだけれど」

「なるほど。しかし、お母様は確かに相談に乗ってくださいましたが、こちらの反応を見て楽しむ意地悪な様子もありました。そのようなお方においそれと話したくない心境も、お母様であれば理解できるでしょう?」

「では深刻そうにしていた方がよろしかったかしら?」

「いいえ。この場合の最適解は、表情を見せないことだと思いますわ。それならばわたくしもまだ心穏やかに、ここに座っていたことでしょう」

「人の色恋沙汰につい首を突っ込んでしまうのは、人間の性ではなくて?」

「お母様は、若い頃から恋愛相談を受けてそうですものね」

「ええ。何人のカップルを誕生させたかしら」


 それはもはや恋愛相談所を開いてもいいと思う。

 ハッタリの可能性もあるけれど、お母様のことだ。嘘ではないはず。


「お母様、副業として恋愛相談所を開いてはどうでしょう? きっとお母様の好奇心を満たせると思いますよ」

「あら、素敵ね。やってみようかしら」

「いいですね。発案者としてわたくしにも収入を分けてくれてもいいですよ」

「発案者だけではダメね。へティも相談を受けたらどうかしら?」

「そんな、自分のことも見れないわたくしごときでは荷が勝ちすぎていますよ」

「その割にはいい表情をしているわ。殿下とお話しできたのでしょう?」

「ええ。トミーのおかげですわ。空気が重くなるたびに、助け舟を出してくれました。重い空気の半分はあの子からも出ていましたけれど」

「うふふ。貴女のことを一番に心配していたもの。それは殿下への目も厳しくなるわ」

「トミーのことは、お母様が提案したのですか?」

「いいえ。あの子から言われたのよ。本当、子供の成長は早いわ。精神的にはトミーが1番成熟してそうね」

「それは同感です。わたくしはともかく、お兄様の場合は適材適所、ということも当てはまりそうですが」

「アルはアレキサンダーの性格を継いでるわね。そこが魅力ではあるけれど」


 お母様も困ったように眉根を寄せている。

 もしかして、お兄様の件で1番苦労したのはお母様では。と思った。


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