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転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど!?  作者: 水月華
4章

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色々な思惑があるようです


「そう、殿下の指示だったのね。お母様に直前にお会いしたのに、何も教えてくださらなくて。このまま八つ当たりしてしまうところだったわ」

「母上は楽しんでおられるので、八つ当たりしても構わないと思います」

「やめておくわ。どうせ返り討ちに合うだけだもの」

「それもそうですね。家族で母上に勝てる人なんていませんし」

「ところで、この後はどうする? ダイニングでお話の続きをする?」

「そうしましょう。わざわざ部屋に行くのも、時間が微妙ですし」


 そういう結論を出し、ダイニングに向かう。

 話を続けながらなので、あっという間に到着する。いつもの席に着く。

 わたくしとトミーの席は近いので、話すのに特に不便はない。


「それで、姉上は実際に殿下とお会いしてどうでした?」

「……え、それ今聞く?」

「ええ。間近でお2人を見ていたら、明らかに変化があったようなので」


 なにその羞恥プレイ。いや、そもそもトミーに対して赤裸々に話すのも、トミーにとって拷問では?

 その思考はトミーに筒抜けだったらしい。


「まあ、思うところはありますが。僕の今後の行動も考えたいので、知りたいと言うのもあるんですよ」

「トミー……。ふう、そうね。自惚れかもしれないけれど、わざわざわたくしに会いにきて下さったのでしょう? パトリシア様のお手紙からも、関係が変わることを予感するわ」

「ようやく気がつきましたか。本当に、なぜ拗れてしまったんだか」

「うっ……」


 呆れの表情で言われてしまった。ええ。トミーからすれば、恨み言の1つや2つ……いや、もっとかも。言いたくなるのも当然だ。

 トミーは珍しくも行儀悪く、背もたれに体を預ける。


「ええ。僕は姉上を応援しております。けれど、今の殿下はヘタレです」

「ちょっ。そんなストレートに」

「ここは信頼できるものしかいません。聞かれたとしても、問題ありません」

「ええっと……」


 なにを言えば良いかわからない。

 

「僕は殿下や母上から、今回自由に動いていいと許可を得ております」

「え、ええ」


 一体わたくしの知らないところでなにがあったのだろう?


「なのでそもそも不敬罪で囚われることはありません」

「そうなのね?」

「安心してください。邪魔はしません」

「ええっと。信じるわ……?」


 とりあえず、何か目的があって、このような状態になっていると言うことか。

 ただこれ以上、詳しく話すことはなさそうなので、具体的にどうするのかわからない。けれど今までのこともあるし踏み込みづらい。

 危ないことはしなさそうなので、とりあえずトミーを信じよう。

 いつのまにか時間が経っていたらしく、お父様が入ってきた。


「おや、2人とも早いね」

「ええ。早めにここで話をしていたのです」

「そうか。……殿下は?」

「大丈夫ですよ」


 お父様もある程度知っていると言うことか。それにしても、今日のお父様は冷静だ。

 当主モードといったところかしら。


「お父様、今日はしっかりされていますわね」

「あ、ああ。私も殿下を迎えるにあたって準備していたからね」

「母上に脅されたのですよ」

「トミーっ」

「ああ、はい……」

「そんな目で見ないでくれっ」


 やはりお父様だった。

 もはやこの光景に安心すら覚える。


「大丈夫ですわ、お父様。わたくしはなにも聞いておりません」

「その言葉すら、今は痛いよ……」


 そうですよね。うん、知ってました。意地悪したかったんです。


「あら、揃っているわね」


 その時、お母様とお兄様、殿下も入ってきた。

 

「殿下。先に退席してしまい、申し訳ありませんでした。大丈夫でしたか?」

「ああ、問題ないよ。夫人に来てもらったしね」


(それはなにも安心できません。お母様、余計なことは……いえ、きっと余計ではないはずだけれど、何か言っているはず。とても気になるわ)


 そしてお母様と目があって、微笑まれる。

 確実に何か殿下と話したな。と確信した。

 ここで問い詰めるわけにもいかない。


「では揃ったところで食事にしましょう。殿下はこちらへ」


 お父様が自分の席の近くへ案内する。必然的にわたくしとは離れるけれど、立場を考えたら当然である。

 ここで疑問が出てきて、近くのトミーに問いかけた。


「そういえば、護衛の方を見ておりませんわ。どちらにいらっしゃるのかしら」

「ああ、基本的には使用人と一緒に食事を取るそうですよ。先ほどは我々の警護もいたので、他の準備をしていたそうです」

「……我がスタンホープ侯爵家の忠誠を信じていただけて何よりですが……。少し心配してしまいますわ」

「だからこそ、だと思いますよ。姉上のような考えであれば、警備も厳重になりますし」

「なるほど」


 確かにここで何かあれば、我がスタンホープ侯爵家の落ち度だ。

 なにも起こらないように、細心の注意が必要と。

 もちろん、信頼関係が大前提だけれどそういった意味合いも、少なからずあると言うことか。

 そして食事が運ばれてくる。

 お父様が食前酒を掲げて、音頭をとる。

 ちなみにわたくしたちは果実水だ。お酒は本格的なデビュタントを迎える、18歳から呑めるようになる。

 学園の卒業も18歳。卒業して改めて、貴族の世界で大人と認定されると言うことだ。

 平民、特に学園に通えないものはこの限りではないのが現状だけれど。

 閑話休題。


「殿下。改めてようこそ、我がスタンホープ侯爵領へ。ぜひ、日々の疲れを癒して、ごゆるりと過ごしていただければ幸いです。それでは乾杯」

「「「乾杯」」」


 シェフがいつも以上に力を入れた、食事を楽しみながら会話は進む。

 テーブルがいつも以上に大きいので、お父様やお母様、殿下の会話は少し聞き取りづらくなってしまう。

 必然的に、お兄様とトミーとの会話が進んだ。


「ところで、お兄様はいつまでお父様のお手伝いをするのですか? 流石に殿下とお話しすることもあるでしょう?」

「……いや、まだしばらくは手伝う予定だよ」

「まあ。わたくしたちの中でも1番殿下のお相手をした方が良いのでは?」

「いやぁ。その……」

「姉上、その辺りは父上の判断ですよ。仕方ありません」

「そうですか……」


 なんだろう。絶対に裏があるわ。

 流石にわかる。なぜならば、お兄様の様子もおかしかったからね。最近は落ち着いてきたと思うけれど。

 お父様の判断なら言えないけれど、それにしてもお兄様の存在感が薄すぎると思う。

 侯爵家嫡男ということを考えると、もう少しなんか……大きく出た方がいい気がする。

 大きくとは? と思ってしまうけれど。


「えっと……お父様の指示なら仕方ないですわね。けれど今までお兄様は殿下と交流を深めておりますし、大丈夫でしょう」

「ああ……ありがとう……。本当にへティは優しい子だ」

「お兄様、疲れてます?」


 このくらいで優しさを感じているの、だいぶ追い詰められていません?


「大丈夫だ。うん、大丈夫」

「目が虚ですが」

「姉上、今はそっとしておきましょう」

「流石にこの状態を放っておくのは心配だわ。お兄様、何かお手伝いできることはありますか?」

「へティ……」


 お兄様の顔が輝く。本当に大丈夫かな。


「今の姉上を取り巻く環境が、兄上の失態の巻き添えであると知っても?」

「あ、それでは仕方ありませんわ。お兄様、頑張ってくださいね」

「へティぃぃぃぃぃ」


 思わず上げて落としてしまった。まあ、しょうがない。

 お兄様の意思ではないとはいえ、色々隠し事されたし。これでおあいこということで。

 ふと見るとお父様たちは、少しお堅い空気が流れている。なにかあったのだろうか? それともお仕事のお話しだろうか?

 こちらで楽しんでいたことが、少し申し訳なくなってしまった。

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