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転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど!?  作者: 水月華
4章

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202/282

【幕間】公爵令嬢の後悔


――そして時は戻り、現在。

 パトリシアは真っ白な手紙を前に項垂れている。

 と言うより手紙の存在を忘れ、後悔の真っ只中である。


「ああ、本当にわたくしはっ」


 本当であれば、次の日にはヘンリエッタにそれとなく伝えるつもりだったのだ。

 それなのに、でしゃばってきたFクラスの生徒のおかげで、計画は丸潰れ。

 怒りのあまり魔力暴走をさせたヘンリエッタは早退してしまい、話すどころの状態ではない。

 そうこうしているうちに、ヘンリエッタがとんでもない誤解をしていることに気がついてパトリシアは気が遠くなった。

 メアリーにも相談して、とにかく誤解を解こうという話になったのだが。ここでも予想外のことが起きてしまう。

 夏休みまでの間、ヘンリエッタを心配したアルフィーとトミーが常にそばにいて込み入った話もできなくなってしまった。

 誰かの家に集まろうと思えば、全員が忙しくなりタイミングを失ってしまった。

 最後の登校日。ここで、誤解を最低限解いておかなければと意気込んでいたパトリシア。

 なんとか伝えた。ヘンリエッタも頷いていたので、誤解は解けたのだと安心したのも束の間。

 顔を真っ青にしたメアリーに、あの言い方ではまずいと言われ。

 すぐに後悔した。なぜ、あの言い方で伝わると思ったのか、自分自身でも今となっては全くわからない。

 そして最悪な状態で、夏休みに突入してしまった。

 フレディは公務やら外堀を埋めるために奔走したりと、ヘンリエッタと話す余裕はなかったと言っていた。

 その時にヘンリエッタが誤解をしていると伝えると、フレディも顔色を悪くした。

 しかし罪悪感で潰れそうなパトリシアを見て、深呼吸して慰めた。


「パトリシア嬢。気にするなと言うのは無理かもしれないが、気にしなくていい。今回は私がヘンリエッタ嬢と話さなかったのが原因だ」

「ですが、殿下……っ」

「……元々、ヘンリエッタ嬢は手強いと思っていたからな。一つ障害が増えたところで、問題ないさ」

「……」

「幸い、この夏休みにも行動ができそうなんだ。だから、そこで誤解だけは解くようにする。大丈夫だ」

「はい……」


 そうは言うものの、今回はパトリシアが止めを刺したようなものだ。

 なんとかしたいと言う気持ちは止められない。なので、まずは手紙で書こうとするのだけれど、何を書けば良いのかわからず全く進まない。

 ここ数日、ずっとこんな調子だ。

 1人で解決するのは無理だと思い、母親に相談したのだけれど。


「……これは……なんとも……」


 頭を抱えられてしまった。

 パトリシアの母親は、社交があまり得意ではない。それこそヘンリエッタの母親、アメリアにコンプレックスを抱いて、一時期はパトリシアとの仲もギクシャクしていた。

 アメリアの助けもあって、徐々に良くなってきたのだけれど。正直、この状態はパトリシアの母親にとっても荷が重い。

 結局、話を聞いてもらうだけになってしまった。

 と言う感じで、何も進んでいない。

 いいや、日が進んでいることをかんがえると、後退している気すらしてしまう。

 思考が限りなく、負に侵食されていた時。


「パトリシア」

「きゃっ! あ、お母様」

「ノックをしても返事がないものですから、心配しましたよ」

「申し訳ありません」


 しかし、今のパトリシアではある程度仕方ないと判断されたのか、それ以上怒られることはなかった。


「それより、あなたにとっての朗報を持ってきましたよ」

「朗報ですか?」

「アメリア侯爵夫人からのお手紙です」

「!」


 その手紙には、今のヘンリエッタの状態が書かれていた。

 相変わらず、その情報収集能力には舌を巻く。

 そして、最後にこう書かれていた。


‘’ヘンリエッタのことは、わたくしたち家族でなんとかします。それでヘンリエッタがどのような判断をするかも見守ります。なので、待っていてください。‘’


「あの人は、本当に……腹が立つくらいに優秀だわ」

「そうですね」

「でも、アメリア侯爵夫人がこう言っているのですから、パトリシアは自分の思いを伝えればいいのですよ。そうすれば、良い方向にいくはずです」

「……はい、ありがとうございます。お母様」


 わたくしの伝えたいこと。わたくしの気持ち。

 少し光明が見えたパトリシアは、再び机に向かった。

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