今世で初めての食事です
誤字報告ありがとうございます。
ひとしきり笑った後、お互いに選んだアクセサリーをプレゼントすることにした。
店主はニコニコ笑っている。
「お2人とも、仲がよろしいですね」
「ええ。まさか同じことを考えているとは思いませんでしたわ」
「では、ラッピングしてお渡ししますね」
そういうと、手際よくラッピングしていく。
あっという間にラッピングして、黄色のラッピングペーパーに包まれた物をわたくしに、緑色のラッピングペーパーに包まれた物をトミーに渡す。
「では、良い場所でお互いにプレゼントしてくださいね」
「はい」
「ありがとうございます」
店の外まで、丁寧に見送ってくれた。
「またのお越しをお待ちしております」
離れた後、時間を確認すると思ったよりも時間が過ぎていて驚く。
「まあ。もうこんな時間ですのね」
「本当ですね。少し早めですが、昼食にしますか?」
確かに早めの昼食にしたほうが、この後動きやすいかもしれない。
トミーの言葉に、わたくしは頷く。
「そうね、そうしましょう」
「それでは、えっと……。この先のようですね」
再び地図と睨めっこしながら、道を進む。
目的地が近づいてくると、香ばしい匂いが鼻腔をくすぐった。
屋台も並んでいる。串焼きの肉がジュウジュウと、いい音を奏でている。
「もう少し先のようですね」
「でもこちらも気になるわね。王都もあんまりこういうものはないし」
「姉上、串焼きの食べ方、知ってるんですか?」
「多分大丈夫よ……多分」
前世の記憶を引っ張り出す。確か食べたことあるはず……。うろ覚えだけれど。
「けれどやはり串焼きを食べたら、淑女としていけないかしら」
「……いいんじゃないですか? 今はプライベートで来ているわけですし」
「トミーは食べたことあるの?」
「いえ、僕も食べたことないです」
トミーも匂いに釣られているのか、食べたいとは思っている様子だ。
大丈夫……だよね。
「それじゃあ試しに買いましょう。何事もチャレンジね」
「そうですね。……って」
トミーが驚いたように、わたくしの向こうに視線を送っている。
振り返ると、エマが3本串焼きを持って立っていた。
「流石にお嬢様達に、串焼きの屋台に並んでもらうわけにはいきませんから。どうぞ」
「あ、ありがとう」
「お嬢様達は座って食べたほうがいいですよ。恐らく、お召し物を汚してしまうかと」
「あそこにベンチがあります。いきましょう、姉上」
トミーが串焼きを2本、エマから貰う。それにしても、わたくし達が話していたのはそんなに長い時間ではないはずなのに、エマの行動が早すぎるわ。
きっとわたくし達が、串焼きに惹かれるって分かってないとあのスピードで買ってくるのは無理ね。
ベンチに座ったところで、トミーから串焼きを受け取る。
と、エマが離れていくのが目に入った。
「エマ、流石に悪いから、串焼きを食べている間は隣にいて頂戴」
「ですが……」
「僕も気まずくなるので、いてください。後、食べ方を教えてください」
トミー、正直なのか、引き止めるための嘘なのかわからないけれど、グッジョブだわ。
「では……失礼します」
エマもそう言われては、引き下がれなかったので大人しくわたくしの隣に座った。
トミーはその反対側に座る。
「えっと、最初は真正面から食べても大丈夫ですが、途中から串が喉に刺さる恐れがあるので、横から齧り付いて引っ張る感じで食べるといいです」
「なるほど」
トミーがパクリと齧り付く。
わたくしも倣って、齧り付いた。
タレが香ばしく、少し焦げた部分がカリッとしていてとても美味しい。
ああ、なんだかとても懐かしい気分だわ。きっと前世の記憶ね。
「とても美味しいわ」
「食べたことない感じですが、クセになりますね」
「お2人とも、私が言うのも何ですが順応が早すぎます」
「そうなの?」
「普通、初めての方はもれなくタレをこぼしてますね」
エマに言われて、確かにわたくしは自然とタレがこぼれないようにしていたことに気がつく。
あれか、体が覚えているってことかしら。この体で食べたことないけれど。ああ、なんだかややこしくなってきた。
とりあえず考えることを放棄して、目の前のご馳走にありつくことにした。
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