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転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど!?  作者: 水月華
4章

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トミーの成長


 パトリシア様と同じことを言った。


「まあ……」


 もはやなんと言えば良いかわからず、固まってしまう。

 お父様もお母様も、にこやかに笑っている。お父様の狂気はいつの間にか、霧散したようで安心だ。


「ええと……そうですわね。お父様、こういう時はどうするのが良いのでしょうか?」


 分からないので、お父様に丸投げする。

 その時、ノックの音が響く。入室を促すと、トミーが入ってきた。

 その表情は険しい。


「トミー、どうしたの?」

「すいません。姉上の様子が気になったので伺ったら、起きていたようなので。少し話を聞かせてもらいました」

「そうなのね。それよりトミー、学園ではありがとう。途中で気絶してしまって申し訳ないわ」

「僕は全く気にしていません。いいえ、彼女たちへは腑が煮えくり返っていますが」

「それじゃあ、トミーは何か考えがあるのかな?」


 お父様がトミーに尋ねる。トミーはお父様に向き合って言った。


「僕の考えとしては、彼女たちは退学でいいかと。理由としては父上と同じです」

「けれど……」


 わたくしの小さな反論は、トミーに届いたようだ。再びこちらを見るトミー。



「姉上。こういう時は、情状酌量の余地はない方が賢明です。今回のことだけではなく、これからのために。仮に今回、謝罪で済ませたとしてまた同じことが起こるかもしれません。それは内心、僕たちを侮っているから。‘’情に訴えれば、都合のいいように操れる‘’なんて思われるかもしれません。それを防ぐためにも、敵対するものには容赦しないと示すのも必要です」

「…………」


 わたくしは驚きのあまり、声が出なかった。

 トミーはわたくしより年下なのに、わたくしより広い視野で見ていた。わたくし個人のことだけではなく、侯爵家の未来も考えて。

 ……わたくしの中では、可愛くて後をついてくるような弟だったのに。

 まだ成人の年齢ではないけれど、立派な大人になっていたのね。


「トミーの言うことも勿論だね」


 お父様も、概ね同意のようだ。


「はい。わたくし、まだまだ未熟でしたわ。恥ずかしい限りです」


 軽く息を吐いて、お父様を見つめた。


「申し訳ありません、お父様。お父様の決定に従いますわ。スタンホープ家のために」

「わかった。パトリシア嬢もね、トミーに言われて考えを改めていたよ。というか彼女の考える罰が周りから見ると、優しかったからね」


 そういえば気を失う直前、ディグビー公爵家として後悔させてやるって言ってたわ。

 それより、今はトミーよね。

 トミーに向き合い、その手を取った。

 入学時にはまだ下にあった目線が、ほとんど同じになっている。琥珀の目を見つめて言う。


「あ、姉上?」

「トミー。ありがとう。貴方はいつの間にか、わたくしより大人になっていたのね」

「い、いえ。そんなことは」

「ごめんなさい。いつまでも子供扱いしてしまって。貴方がいれば、この先も安心だわ」

「……」


 顔を赤くして、黙り込んでしまうトミー。

 繋がった手から温もりを感じて、ふと思った。


「……そう言えばトミー。わたくしが寝ている間、そばにいてくれたのかしら?」

「え? 急にどうしたんですか?」

「左手が温かかったのを思い出したの。もしかしてトミーかしらって」

「それは……僕ではないです」

「そうなの? では誰かしら? お兄様?」

「えっと……とりあえず兄上は今、ここにいないので違います」


 お兄様がいない? だからまだ部屋に来ないのね。


「アルはこの件は自分に任せてほしいと、まだ学園にいるの。もうそろそろ帰ってくると思うけれど」


 お母様が教えてくれた。


「僕より話を聞いた兄上が怒り狂って、止める羽目になりました。前にもこんなことがありましたね」


 ああ、トミーが侮られていた時か。トミーが遠い目をしている。


「何から何まで、ごめんなさいねトミー」

「まあへティ。きっとその温もりの正体は、近いうちに気づくわよ」


 そうお母様は、ウインクした。

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