12歳になりました
第2章スタートです!
よろしくお願いします
あれから4年。わたくしは12歳になった。マナーや勉強も頑張り、淑女らしくなってきたと思う。周りの目も負の感情は無くなり、慕ってくれる人も増えてきた。
(うんうん、今のところいい感じ。結局いまだにわたくしが悪役令嬢ポジションなのかはわからないままだけれど、周りの評価を考えるに"淑女"には近づいているはず)
もちろん家族との関係も良好だ。昔は鬼ごっこした庭に行くと――
「はい、そこで魔力を放出するイメージで。……うん、お2人とも素晴らしいです」
「先生のご指導のおかげです」
お兄様とトミーが魔力コントロールの練習をしていた。
教師の評価も良く、あれから魔力暴走は起きていない。(魔術の失敗は除く)
私もそろそろ簡単なコントロールをするようになるらしい。楽しみだ。
終わりを見計らって近づく。トミーがすぐに気がつき、パァッと表情を明るくした。なんならお花が飛び交っているエフェクトまで見えるようだ。
「あ、姉上! 先生、今日もありがとうございました! またよろしくお願いします」
教師に手を振り、こちらに近づいてくる。教師はニコニコと手を振りかえし、お兄様は肩をすくめている。
「姉上! 姉上のマナーレッスンは終わったのですか?」
「ええ、2人も終わるって聞いたからお茶に誘おうと思ったの」
「嬉しいです。いきまっぐぇ」
グイグイこちらに寄っていたトミーがカエルのような声を出して離れる。お兄様が首根っこを掴んで引き剥がしたようだ。
「トミー。少しはお兄様に譲ろうと言う気持ちがないのか?」
「ふふっこれが弟特権ですよ。あと兄上、引っ張るならもう少し優しくしてください」
「すまんすまん」
「棒読みじゃないですか!」
目の前で最早日常に繰り広げられるコント。見飽きないのかと言えば全くそんな事はない。
むしろ見た目麗しい2人に取り合いっこされてる身としては嬉しく感じてしまう。
お兄様がわたくしの髪を掬い、キスを落とす。
「わざわざ迎えに来てくれるなんて嬉しいよ。可愛い妹のお誘いなら喜んで行こう」
「お兄様ったら」
「兄上! 兄上だってズルイです!」
「はっはっは、兄の特権だな」
「ふふふっ」
そう、この4年で二人は立派なシスコンに成長した。それだけではなく、お兄様とトミーも強い絆で繋がれているのでブラコンもある。
そんな2人のやり取りをみて(尊っ!!)と内心悶える毎日である。
最初に立てた目標通り、立派な兄弟愛が我々の中で育った。おかげさまで充実した毎日を過ごしている。幸せホルモンが日々生成されているのだ。
(はあー幸せ……このままの日々が続くといいな)
そんなことを考えていると。
「ヘティ? 顔がにやけてるけどどうした?」
「い、いえ、なんでもありませんわ。オホホ」
慌てて顔を押さえて誤魔化す。いけない。恥ずかしい表情になっていた気がする。
表情を引き締めていると、トミーが何か呟いていた。その直後お兄様がチョップを食らわしている。頭を押さえるトミーが可愛い。
最近何故か2人のそんなやりとりが増えている。最初は何を言っていたか聞き返していたが、ほとんど誤魔化されるのでスルーするようになった。
あとそう言う時に周りからの生暖かい様な視線も感じる。お父様とお母様からも感じるが、やはり何も答えてはくれなかった。
ええ、多少不満がありますが、わたくしも淑女ですもの。特にお父様とお母様が教えてくださらないという事は知らない方が良いのでしょう。気にしないフリをしておきます。
……そろそろお母様への弟子入りを本格的にして空気を読めるスキルを磨こうかしら。
そんなことを考えた。




