表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど!?  作者: 水月華
4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

163/282

情けないですわ


 気がついたら、小鳥の囀りが聞こえた。カーテンを閉めていなかったので、朝日が入ってきてまぶしい。

 頭が痛い。体も鉛のように重かった。

 なんとか体を起こす。泣いたまま寝たせいで、水を体が求めていた。

 ベッドサイドに置いてある水差しに手を伸ばす。コップに水を入れて、一気に飲み干した。

 まだ頭は痛いけれど、少し楽になった。


「はあ……」


 大きくため息を吐いたのは水が染み渡るからか、自分の心情のせいか。今は後者だろう。

 外を見ると、眩しかった割にはまだ夜が明けたばかりのようだった。体のコンディションのせいで、眩しく感じたのかもしれない。

 まだ時間がある。今日も学園に行くので、気持ちを整理したい。休みたいという思いがないわけではないけれど、休んだらメアリー様とダニエル様が察してしまう気がするし、行かないと。

 あの2人には、わたくしの様子がおかしかったことは知られてしまっている。どう頑張っても、誤魔化せないだろう。

 

「情けない……」


 ポツリと溢れた言葉に、自嘲してしまう。意図せずして出た言葉だけれど、本当にその通りだからだ。

 それでももう、涙は出なかった。

 昨日。殿下がパトリシア様を呼ぶまで、わたくしは本気でパトリシア様を応援していた。

 本気で。自分は殿下を慕っていないと思っていた。むしろ避けていたのに。それがこの有様だ。

 パトリシア様やメアリー様のいう通り、気がついていなかった。その話を聞いた時も‘’あり得ない‘’と本気で思っていたのだ。

 ポンコツにも程があるだろう。確かに今世では恋愛経験はないけれど、前世ではあるのに。記憶が曖昧であることの弊害か。

 けれど今なら分かる。自分でも気がついていたんだ。その時のわたくしは、色々な理由を必死でつけて誤魔化していたけれど。

 それをわたくしにとっては、最悪な形で思い知らされたわけだ。アホだ。

 しかもここまでショック受ける? こんな一晩泣き明かすなんて。自業自得だわ。

 なんなら殿下とパトリシア様の方が枕を濡らしてるわ。わたくしの対応を思い出しなさい。ひどいにも程があるわよ、ヘンリエッタ。

 

「あぁ……。穴を掘って埋まりたい」


 穴があったらなんて、受け身ではない。もはや自分から埋まりたい。

 けれど土属性の魔術は使えないし、スコップで掘ろうにも今の(令嬢の)わたくしでは無理だ。きっと小動物も入れられない。

 情けない。

 そんな風に自己否定を繰り返していたけれど、途中ではっとなる。というか、わたくしはパトリシア様と普通に話せるのかしら、と。

 絶対に、絶対にこのことで傷つけたくない。だってパトリシア様は、わたくしを応援してくれていた。

 パトリシア様はきっと今のわたくし以上に、何度も傷ついたはず。ずっと悩んでいたし、話をしてくれた時のパトリシア様は本当に痛々しかった。

 それでも表面上は普通にしてくれていた。わたくしを気遣っていてくれた。

 ならば、わたくしも自分のことばかりではいられない。

 

「コンセプトは変わらないわ。()()()()()パトリシア様を応援しましょう」


 まさか自覚した瞬間、失恋するなんて。いえ、失恋した瞬間、自覚したのね。どちらにしてもお間抜けだわ。

 そんなことを周囲に悟られてはいけない。特にパトリシア様と殿下には。

 あの2人には、本当に迷惑をかけてしまった。そんなわたくしが、決断した2人を邪魔するわけにはいかない。

 その練習も何度もしている。淑女教育はこんなところで役に立つなんて思わなかったけれど。

 使えるものは、なんでも使わないと。

 関係が深いパトリシア様にも、悟られないように。大袈裟にかつ、慎重にしないと。些細なことで気がつかれてしまうだろう。

 絶対に、悟らせない。


「わたくしなら出来るわ。由緒正しき、スタンホープ侯爵家の長女ですもの」


 お父様とお母様のためにも、情けない姿を世に晒すわけにはいかないわ。

 これは戦いよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ