表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど!?  作者: 水月華
4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

162/282

自覚してしまいました


 その日、殿下とパトリシア様が戻ってくることはなかった。

 そのまま帰る時間が来てしまったので、帰路に着く。

 今日もメアリー様を寮まで送ろうとしたけれど、2人に止められて先にわたくしが帰ることになった。

 ダニエル様はわたくしを見送ったあと、メアリー様を送っていくらしい。二度手間なのに。

 道中もメアリー様とダニエル様が、何かを話していたようだけれどあまり頭に入ってこなかった。

 ただ生返事をしながら、馬車を停めている場所に着く。


「それではメアリー様、ダニエル様。また明日」

「……お気をつけて」

「ヘンリエッタ様……その……」


 何かを言おうとしているメアリー様だけれど、結局言葉にならないようだ。

 わたくしはダニエル様に向き合う。


「ダニエル様、メアリー様をしっかり送ってくださいね」

「はい。……ですが貴女の方が心配なのですが」


 ダニエル様にまでそんなことを言われるなんて、わたくしそんなにひどい顔をしているのかしら。

 そもそも何故こんなふうになっているのかしら。

 頭に靄がかかっているようだ。


「わたくしは大丈夫ですわ。馬車に乗れば、あとは邸まで安全ですし」

「そういうことではなくてですね」

 

 ダニエル様も考えあぐねているようだ。珍しい。

 けれどあまりにも2人が何も言わないので、そのまま別れた。

 馬車が動き出す。ガタゴト揺れる馬車に身を預ける。

 目を閉じて、身のうちにある感情を整理しようと努めた。

 通常、殿下と婚約者候補が2人きりになることはない。

 それは殿下のアピールだ。今は婚約者に決定する者はいないという無言のアピール。

 わたくしは殿下とは2人きりになったことは、何度かある。しかしそれは基本的に誰にも知られていない状態で、だ。誘われたことはない。

 いや。誘われたらのらりくらり避けていたので、それは致し方ないことかもしれない。

 それでも今回は、わざわざ他人の目があるところで殿下が誘った。いつもならお目付役として、ダニエル様も連れていくのに。

 それが示す意味は――。

 そこまで考えたところで、馬車が止まる。そして御者が扉を開けた。

 邸に着いたようだ。御者にお礼を言って、部屋に戻る。

 エマに夕飯はいらない。少し考えたいことがあるから1人にしてほしいと伝える。

 変に体調不良というと、お父様とお兄様がすっ飛んでくるから。こういえば、飛んではこないだろう。

 せめて部屋着に着替えてください、というエマに促されて着替える。

 そしてエマが退出するのを見送り、ベッドに倒れ込む。

 思考はまだ止まらない。

 そうして考え続けて、わたくしは1つの答えを導き出す。


(殿下は婚約者を、パトリシア様に決めたのね)


 やっとだ。ずっとパトリシア様を応援してきた。

 パトリシア様が努力してきたことを、隣で見てきた。その努力が報われたのだ。

 喜ぶことだ。わたくしが望み続けたことだから。

 なのに。


(胸が痛い。息の仕方も分からない。苦しい)


 シーツを握りしめる。指先が白くなっていても、なんの慰めにもならない。

 目から熱い液体が溢れている。

 何故。この涙はなんだ。

 身を切るような喪失感はなんだ。

 おかしい。これはわたくしが望んだ結果のはずなのに。

 そうなるように、動いてきたはずなのに。

 ああ、パトリシア様たちがいう事は正しかったのか。

 そんなはずはない。認めたくない。

 けれど、体が、感情が全身で叫んでいる。


 ――殿下のことが好きだと――


 失って初めて気がつくなんて、滑稽じゃないか。なんてお笑い種だ。

 こんな間抜けな話はない。

 昨日まで、本気でパトリシア様と殿下をくっつけようとしていたくせに。

 あまりの愚かさに笑いたくなった。けれど、口からこぼれるのは嗚咽だけ。

 そのまま気絶するように眠りに落ちるまで、わたくしは嗚咽を噛み殺し続けた。


ここまで想像以上に長くなりました……!

きっとこれからも長くなりますが、気長にお待ちください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ