学生の戦場ですわ
わたくしがネチネチ嫌味を言い続けたおかげか、パトリシア様とメアリー様は大人しくなってくれた。
まあ他にも大人しくならざるを得ない状況にもなったから、というのもあるのだけれど。
そう、学生の戦場。テストだ。
本格的にテスト勉強の時間が増えて、空気がピリピリしている。
特にわたくしたちのいる特進クラスは、成績を落とすわけにはいかないので皆真剣だ。
絶賛悩んでいるであろうトミーも、流石にテスト勉強に集中できているようで安心する。
◇◇◇
そしてテストも何事もなく終わった。
テストの結果は掲示板に上位50名まで掲載される。
周りにわたくしより勉強ができる人がわんさかいるので、まあ10位以内に入っていれば良いなーなんて考えていた。
そしてパトリシア様とメアリー様と一緒に掲示板の前に行く。
……えっと、皆様。わたくしたちのために掲示板までの道を作らなくて大丈夫です。
やめてください。
お2人も戸惑ったけれど、とりあえずお礼をいいながら進むことにした。
ここで遠慮した方が、面倒臭いと感じてしまったからだ。
そして張り出された結果を見て、目を見開くことになる。
第1位 ヘンリエッタ・スタンホープ
第2位 フレディ・イル・ナトゥーラ
第3位 ダニエル・バーナード
第4位 トミー・スタンホープ
第5位 パトリシア・ディグビー
第6位 メアリーキャンベル……
気のせいかな? わたくしの名前が1番上にあるように見える。
あっれぇおかしいぞぉ。
「流石ヘンリエッタ様です!」
「くっ。そこまで点差がないのに、こんなに差が出るなんて……。もっと精進しなくては」
「……何かの間違いでは?」
思わず思ったことをそのまま言ってしまう。
小さい声だったけれど、2人はきちんと聞き取ったようだ。
「ヘンリエッタ様……本気で言ってますの?」
「3人で勉強会するときも、ヘンリエッタ様がほとんど教えてくれていたじゃないですか」
「……そんなはずは……」
思い返してみても、いまいちピンとこない。
首を傾げていると、パトリシア様にため息をつかれてしまった。
「本当にヘンリエッタ様は、自己評価が低いというか……。貴女は自分が思っているより、出来ていますのよ? どうして自分のことになるとそんなに盲目的になるのかしら」
「えぇ……」
「もう! 何故ヘンリエッタ様に負けたわたくしが、貴女を諭さないといけないのです! この結果こそ客観的な事実ですわ。もっと自分の見る目をかえないさい!」
「も、申し訳ありません……」
迫力に負けて、謝罪する。
「とりあえず、ここから離れましょう。他の方も見たいでしょうし」
メアリー様に言われて、離れた。
その時に、こそっとメアリー様に爆弾を落とされた。
「ヘンリエッタ様、良いこと教えてあげます。このテストってイベントの1つなんですよ」
「え?」
「ふふ、本当なら私が一番をとって、殿下の興味を引くんです」
「は?」
「乙女ゲームだと定番なんですよねぇ。勉強している時点で、予想していた通りになってしまいましたね」
「何故言ってくれませんの⁉︎」
「え? 真面目に勉強されているヘンリエッタ様に手を抜けなんて、言えるわけがないじゃないですか」
しれっというメアリー様。
はっまさか!
「メアリー様が手を抜いたのではなくて? そうでなければおかしいですわ!」
「いやいや、ヘンリエッタ様。私は最大限努力しましたよ。その先にヘンリエッタ様が行ってしまったんです。きっと原作のヘンリエッタも真面目に勉強すれば、こんな感じだったのかもしれないですし」
「お2人とも何を話していますの?」
パトリシア様が不思議そうに、こちらを見ている。
「パトリシア様、メアリー様がわたくしを虐めるんですぅ」
「ヘンリエッタ様が虐めるの間違いではないのですか?」
「ひどい!」
「日頃の行いでしょう」
「あはは」
わたくしに爆弾を落としたメアリー様は、無邪気に笑っていた。
くそぅ。今のわたくしには悪魔の笑みに見えてしまいますわ。




