もしかして悪役令嬢では?
その後は修羅場だった。
お母様はいい笑顔でお父様に詰め寄っている。どうやらわたくしの性格が180度変わったことは触れないようにするという命令を出していたのによりによってお父様が破ってしまったらしい。
時々、周りの人たちがびっくりした表情をしていたのは、わたくしが前までは考えられない対応をしていたからだそうだ。最初は侍女たちは半信半疑だったらしい。当たり前だ。特に被害を被っていたのは彼女たちのはずだから。
ちなみにお父様とお兄様がわたくしを甘やかしてしまったらしく、我儘に拍車をかけてしまったらしい。この半年で二人は大いに反省していたそうだ。
お母様はわたくしのために厳しくしようとしたが、二人のせいでうまく行かなかったらしい。うん、疑ってはいたけどお父様は家族のことになるとポンコツになってしまうことを確信してしまった。
そして急に叫んだわたくしにお兄様とトミーが飛んできた。お兄様は今は変わってるんだから大丈夫だといってくれている。
トミーはなんと影で侍女たちが話していたのを聞いたらしい。そこでトミーのスゴいところは侍女に話に行ったらしい。話を聞いて今は変わってるということで納得したらしい。それとわたくしの対応も納得できる要因だったようだ。人間不信気味だったのに凄すぎる。
とりあえず、ご飯どころではなくなり解散となった。お父様は謝ってきたので、大丈夫だと答えておく。
お兄様もトミーもわたくしから離れようとしなかったけれど、一人にしてほしいというと渋々下がってくれた。とにかく今は一人で考えたい。
部屋に入り、ソファに倒れ込む。座る余裕がなかった。とにかく頭の中を整理したい。
(いや、まだわたくしが悪役令嬢ポジションと決まった訳ではない。でも転生しているのは事実。それだけで絶対にそんな訳ないと言い切れない)
ならばどうするべきか。
(とにかく、いろんな可能性を考えて対策を講じる必要があるわ。俄知識だろうと考えなくちゃ)
起き上がり、机に向かう。羽ペンにインクをつけて紙に書き付けていく。
(とにかく気をつけるべきは攻略対象となるであろう人たちね。多分わたくし以上に高貴な身分で……そう! イケメン!)
そこでハッとする。ポタリと紙にインクが落ちる。
(お兄様もトミーももう少し成長したら絶対イケメンだわ! もしかして二人も攻略対象? でも悪役令嬢の家族が攻略対象ってあるのかしら)
いや、念には念を入れた方がいい。違ったら違ったで問題はない。
必死に朧げな記憶から引っ張り出そうとする。しかし、元々恋愛ゲームも小説もそんなに読んでいないと思うので出なくなってしまった。
こめかみを指でトンと叩く。
(うーん……確か、公爵家の嫡男も殿下もわたくしと歳が変わらなかったはず……。ということは攻略対象の可能性があるかな)
この二人には必要以上に付き合わない方がいいかもしれない。わたくしも侯爵家の長女なので避けることは無理だろうけど踏み込む必要もなさそうだ。
多分だけど、どちらかというとお兄様が近い立ち位置になると思う。それならば当たり障りない距離を保てるはず。
という訳でなんとなくの方針は決まった。あとはお兄様とトミーか。
(……二人とも今のわたくしに悪い感情はないはず。むしろさっきの反応を見る限り、愛されているわよね)
それならば、二人にはシスコンになってもらおう。
そしてわたくしもブラコンになれば問題はない。相思相愛(兄弟愛)は平和への第一歩だ。
そうすれば仮に破滅フラグが立ったとしても、ひとりぼっちになる可能性は低くなるはず。
(よし! 目指せ! 悪役令嬢回避人生!)
わたくしはえいえいおー! と拳を高く突き上げた。
これで第1章完結です!
続きが気になる!面白かった!と思って頂けたら、ブックマークや広告下にある⭐︎評価して下さると励みになります!




