話します
「そうです。こことは全く違う世界でした。具体的に言えば、向こうには魔法なんて存在しなかったのです」
「魔法が……? ではどのように生活していたのですか?」
「科学というものです。正直、生活水準は向こうのほうが高かったですね。特に私たちが暮らしていた国との一番の違いは身分制度が無いことです」
「身分制度が無い……。今の学園のような状態が国全体にあったということ?」
「そういうことです」
パトリシア様は理解はしているようだけれど、感情が追いついていないみたい。
いきなりこんな話をされたら当然だとは思うけれど。
「私が生きていた時、あるものが流行していました。それがこの世界が舞台となった物語です。……自分で言うのも恥ずかしいですが、メアリー・キャンベルはヒロインとして登場して、今関わりがある方々と交流を深めていきます」
「メアリー様がヒロイン……?物語の主人公ということ?」
「はい。自分で言うのも恥ずかしいですが」
「いいえ、メアリー様の魅力を考えると納得しますわ」
「そこで納得するんですか」
パトリシア様の思わぬ言葉に、メアリー様は頬を朱に染める。
うん、パトリシア様に褒められることってあんまり無いから嬉しいよね。ではなく。
「……仮にその話が本当だという証拠はあるのでしょうか? いえ、メアリー様を疑っているわけではないのですが、なんだか信じられなくて」
「証拠、となるかはわかりませんが……。あの魔物襲撃事件。私は‘’夢‘’で見たと説明しました。あれが本当は前世の物語であったことなのです」
「なんですって?」
パトリシア様は驚きに、口を手で覆う。
考え込んだ後に、頷いた。
「だからですのね。あの時のメアリー様は、鬼気迫るものがありました。その様子でわたくしも協力することを決めましたが……」
「はい。あの時は前世の記憶で知っていると言っても、気が狂ったとしか思われなかったでしょうから説明しませんでした」
「……そうですわね。今だから、説得力になっていますわ。当時だったら信じなかったでしょう。……ヘンリエッタ様の話術にもよるでしょうけれど」
「そこでわたくしが出てくるあたり、とても信頼されていますわね。嬉しいですが、荷が重いですわ」
パトリシア様の中でわたくしって何者になっているんでしょう。ちょっと、いやかなり気になりますわ。
「……良いでしょう。それになんとなく、お2人には通ずるものがあると思っておりました。そう言うことでしたのね」
「通ずるもの」
なんだろう、すごく含みを感じる。
「これはさして重要なことではありませんわ。その前世というものが今のヘンリエッタ様とどのような関係が?」
「……ここからはヘンリエッタ様の問題ですね。大丈夫ですか?」
「先ほどメアリー様がおっしゃった通り、全ては話さなくても大丈夫ですわ。けれど、わたくしはヘンリエッタ様のことを知りたいですわ」
2人がこちらを見つめる。
別に誰に話すなんて、想像すらしていなかった。話して楽しいものではないし、相手も沈んでしまうと思っていたから。
貴族にとって恋愛感情は二の次だったこともある。
昔ほどでは無いにせよ、高位貴族であれば政略のしがらみから完全に抜けることはできない。
恋愛結婚が認められても、相手の家柄や能力が認められなければ結局認められない。
まあ、条件付きで恋愛結婚できるといえばいいか。実際、パトリシア様は心から殿下を慕っている。
だから話す機会なんてそうそう訪れないと思っていた。
けれどここまでお膳立てされたら、話さないわけにはいかない。
「先に言っておきますけれど、聞いていて気持ちがいいものではありませんわよ?」
「先ほどまでのヘンリエッタ様の様子を考えれば、何か辛いことがあったのは想像がつきます。わたくしは問題ありませんわ」
「私もです」
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