これからを考えましょう
「ところで、その時にトミーの見た目に変化は起きなかったかな?」
突然そんなことを聞かれる。お兄様と顔を見合わせる。思い返せば、意識を失う寸前に髪の色が変わっていたような。
「そういえば……髪の色が金色に変わっていた気がします」
「やはりそうか」
「どういう事ですか?」
お父様の表情はなんともいえない。正の感情も負の感情もどちらも混ざったような表情をしている。
「暴走でも魔術でも膨大な魔力を放出すると見た目に変化が起きるということが判っている。人によって変化する箇所は違うらしい。身体変化が起きるほどの魔力保有量と言うのは珍しいことなんだ」
いかんせんそこまで魔力保有量がある者も珍しいからねと、お父様は肩をすくめる。
「施された魔術を食い破るほどだからもしかしてとは思ったが……どうしたものか」
「なにか問題があるのですか?」
「いや、問題ではないんだが今後の方向性をどうしようかと思ってね。この国では15歳になったら学園に入学できるだろう? それまでに暴走しないようにコントロールを身につけてもらわないといけないからね」
学園というのは基本は貴族が通う魔術学園のことだ。15歳から18歳までの3年間通うことができる。その名の通り主に魔術について学ぶ学園だ。
ここナトゥーラ王国は貴族の血筋を持つものが魔力を宿している。
そもそもナトゥーラ王国の成り立ちが作物が不作になり、餓死する者まで出てきてしまってどうしようもなくなって神に祈った。その時に神から魔力を授かったと言われている。その時に魔力を授かったのが今の王家だと。だから現在の貴族は元を辿れば王家の血が流れているのだ。かなり薄くなっても魔力を宿すことができるらしい。
なので学園には貴族の子息子女が通うのが基本だ。だが、例外もある。王国が誕生して全員が全員貴族として一生を終えた訳ではない。出奔したり、はたまた愛人と子供を作り認知しなかったりなど、近年は平民にも魔力を持つものが現れている。
今の国王は魔力を持つ平民にも学園に入学できるように尽力しているらしいが、成果が出るまではもう少しかかりそうだ。
閑話休題。
「しかし父上、先にコントロールのコツを学べばいいのなら早めに動くべきでは?」
お兄様がそう言うとお父様はホッとした表情に、お母様はうんうんと頷いている。
「そうだな。ではアルフィー。トミーと一緒にコントロールのコツを学んでほしい」
「え? 僕もですか?」
「ああ、きっとその方が良い。一緒にやる者がいると上手くいきやすいだろう」
「分かりました」
その時、お母様が私に耳打ちをしてきた。
「アレキサンダーったら、これでアルのプライドを刺激したらどうしようって悩んでたのよ。だからアルから提案してもらえて安心してるのね。ふふっ、アルは優しい子だから嫉妬したりしないのにねぇ」
わたくしも思わず笑ってしまう。元々他人に思いやりのあるお兄様だけど、トミーが来てからは特にそれが顕著だ。それを考えるのならお父様の心配は杞憂であることだろう。
「お父様も心配性ですね。ですが、ここはやはり男の問題という面でも心配になったのでしょうね」
「2人で何コソコソ話してるんだ?」
お父様から訝しげな声が聞こえる。良い話題ではないと思ったのだろうか。
「女同士の秘密ですわ」
お母様がツンと顔を逸らして言うと、お父様はしぶしぶ引き下がった。
その様子にまた笑えてしまった。




