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転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど!?  作者: 水月華
第3章

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イベント【魔物襲来】①

戦闘描写、怪我の描写が入ります。

苦手な方はご注意下さい。


 戦闘が始まって、おおむね順調と言っても差し支えない。

 話に聞いてはいたけれど、殿下の魔術の腕は圧巻の一言だった。

 トミーもついていってるのが凄い。

 既に10体ほどの魔物を討伐している。


「メアリー様、イベントではまだまだ魔物は来ますの?」

「はい。まだ序の口ですね。ここから段々魔物の数が増えていきます。それに今は2、3体ずつですが、一度に来る量も増えます」


 こっそり確認すると、メアリー様も声を潜めて返してくれた。

 やはり、まだ安心するのは早いのだろう。


「わかりましたわ。油断せずに行きましょう」


 気合を入れ直す。

 その時だ。地響きのような咆哮が辺りから聞こえた。


「っ今のは⁉︎」

「トミー! 来るぞ!」


 驚きの声をあげている間に、殿下の張り詰めた声が聞こえた。

 メアリー様のいう大群だろうか。


「……まさかっ。こんな風に来るなんて……っ」


 メアリー様の顔色が悪くなっている。


「メアリー様、落ち着いて」

「ヘンリエッタ様……っ。急にこんなに来ることはなかったです!」

「ええ、わたくし達の行動が変わったように、魔物の動きが変わったのかもしれないですわ」


 背中をさすりながら言うと、メアリー様は深呼吸した。


「すいません」

「いいえ、気にしないでください。とにかく今は目の前のことに集中しましょう。パトリシア様、いけますか?」

「誰に聞いているのですか? 問題ないですわ」


 パトリシア様と共に、少し前に出る。

 殿下とトミーの先には、さまざまな魔物が押し寄せていた。20体近くいるのだろうか。

 震えそうになる体を抑える。

 このまま迎え撃つのは、明らかに武が悪い。


「我に仇成すモノを捕えろ【流砂(りゅうさ)】」


 凛とした声が響き、殿下とトミーの前の地面が渦巻き状になった。ダニエル様の魔術だ。

 先頭にいた魔物が続々と足を取られて、動きが遅くなる。

 その気を逃さず、殿下が力強い詠唱を唱える。


「我に仇成すモノを燃やし尽くせ【猛炎(もうえん)】」


 足を取られた魔物が、炎に包まれる。断末魔と共に、肉が焼ける不快な匂いが鼻についた。

 しかし、まだ魔物は来ている。燃えた魔物を足場にして、進んできた。


「我らに仇成すとなるものを吹き飛ばせ 【大旋風(だいせんぷう)】」


 その魔物を、トミーの魔術が吹き飛ばす。半分は減ったようだけれど、後ろにさらにいるのが見えた。

 

「きゃあっ」

「パトリシア様⁉︎」


 悲鳴に目を向けると、上空からワイバーンが突進してきていた。

 地上の押し寄せてくる魔物に気を取られて、上空への警戒を怠ってしまったのだ。

 反射的に身をよじるけれど、躱しきれずに右腕に痛みが走り、地面に倒れ込む。視界の端にパトリシア様も倒れ込んでいるのが見えた。


「姉上⁉︎ ぐあっ」

「トミー‼︎」


 トミーがこちらに気を取られた隙に魔物の接近を許してしまい、吹っ飛ばされたのが見えた。

 木に体を強かに打ち付ける。気絶はしていないようだけれど、動きが鈍い。

 そのトミーに魔物が近づいていく。


「トミー‼︎ 我に仇成すモノを貫け 【環流(かんりゅう)】」


 咄嗟に魔術を放つ。冷静さを欠いてしまったために、コントロールはズレたけれど魔物に命中した。

 しかし、事態は最悪だ。

 パトリシア様にメアリー様が駆け寄っている。メアリー様の声に反応しているので、意識はあるようだ。

 その2人にも魔物は近づいている。


「我に仇成すモノを捕えろ【流砂】」


 ダニエル様が、2人に近づく魔物を捕らえた。


「我に仇成すモノを燃やし尽くせ【猛炎(もうえん)】」


 その直後に、魔物が炎に包まれる。殿下の魔術だ。


「ダニエル! 上にいる魔物を頼む!」


 土属性のダニエル様に空中の魔物を任せるの? と思ったけれど、ダニエル様は慌てることなく詠唱を開始した。


「宙から降りて彼モノを破壊せよ【流星(りゅうせい)】」


 空から隕石が降ってくる。 隕石⁉︎ そんな魔術あるの⁉︎

 空中にいたワイバーン1匹残らず命中し、空は静かになった。

 ほぼ同時にダニエル様が、膝をつく。


「ダニエル様⁉︎」

「……問題ありません。魔力が……きれただけです」


 駆け寄ると息も絶え絶えに答える。強がっているけれど、魔力切れは辛いだろう。もうダニエル様は戦えない。

 肩を支えて、近くの木に寄りかからせる。

 周囲を見渡す。立っているのは殿下と、わたくしだけ。パトリシア様も、トミーもすぐには動けないだろう。

 けれど状況はさらに悪い方に転がっていく。まだ、魔物がいるのだ。

 このままでは全滅の可能性もある。

 忍び寄る死の予感に、ブルリと震えた。

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