合流できました
「姉上! 殿下達が来ましたよ!」
その言葉を聞いて、わたくしは立ち上がる。いよいよ本格的な魔物との戦いが始まるのだ。
わたくしはそばに居る2人に、声をかけた。
「ではわたくしは言って参りますわ。あなた方はくれぐれも、自分の命を大切になさってください」
「はい」
「ヘンリエッタ様、お気をつけて」
そうして2人と別れた。
トミーのところに向かうと、殿下、ダニエル様、パトリシア様、メアリー様が揃っていた。皆、怪我はなさそうで安心する、
「皆様、ご無事で何よりですわ」
「ヘンリエッタ嬢も。メアリー嬢の夢が本当になってしまったね。できる限りのことはしておいて良かったよ」
メアリー様の方を見ると、目を合わせて頷いてくれた。緊張はしているようだけれど、不安や焦りは見えない。
取り繕っているだけかもしれないけれど、そもそも取り繕える余裕があるのだから、今のところ問題はなさそうだ。
「トミーから話は聞いた。熊、蛇、ワイバーン。私の方でも同じように見かけたよ。場所の関係も考えると、数はかなり多そうだ」
「そうですか……ちなみに殿下の方でも、これほどの数を相手にしたことはおありなのですか?」
「流石の私も、ここまでの数はないよ。けれど不安に思うことはない。皆今日まで努力してくれたからね。力を合わせれば乗り越えられるはずだ」
パトリシア様が、少し不安そうな様子で殿下に話しかける。殿下は初めてのことなのに、冷静だ。内心がどうであれ、リーダーとなるものは不安を見せない。自信を持っている姿を見せることは仲間の士気を上げることにも繋がると、殿下は知っているのだろう。わたくしよりもはるかに多くの実践で。
「メアリー嬢。夢では君が魔術を使いこなせるかで、結果が大きく変わると言っていたね」
「はい」
「今日のように、周りに助けてくれる人はいたかい?」
殿下の言葉に、メアリー様は力強い瞳を持って返した。
「いいえ。夢の中の私は、誰にも助けを求められませんでした。夢の中の私は孤独だったのです。けれど、今はこんなにも助けれくれる人がいます」
「そうだ。問題ないようだね。私は怪我人を0にするなんてことは約束できない。けれど、最悪の結果は防いで見せよう。ナトゥーラ王国の王子として。だから皆、協力してほしい」
そう宣言する殿下は、自然と人を従えるようなそんなオーラを纏っている。
わたくし達は、最上の礼をしてその言葉に応えた。
「「殿下の御心のままに」」
そして遠くから魔物の咆哮が響いた。
「さあ、行こう」
殿下の指揮で、わたくし達は動く。
わたくしのチームメイトを含めた、他の方々は後方支援に回ってもらう。その指示も的確に出す殿下に、最初は逃げ出したそうにしていたけれど覚悟を決めたようだ。
それに、王国での筆頭貴族のわたくし達が戦う意志を持っていたこともいい刺激になったようだ。
わたくしのチームメイトの方々は、わたくしを見て気合をいれていましたし。
「それじゃあ、作戦①だ。ベーシックに私とトミーが前線に立つ。その次にダニエル、戦況の把握に努めてくれ。パトリシア嬢とヘンリエッタ嬢は後方から、相手を足止めできるような魔術を頼む。余裕があれば、倒してくれて構わない。メアリー嬢は、魔物を一掃できると思ったら魔術を放ってほしい」
「「了解しました」」
殿下とトミーが前に立つ。
わたくしはパトリシア様と、メアリー様に向き合った。
「必ず、生きて帰りましょう」
「ええ。ヘンリエッタ様、張り切りすぎて前に出ないようお願いしますね」
「まあ、パトリシア様。わたくし、でしゃばるような真似は致しませんわ。それにわたくしよりメアリー様の方が飛び出してしまいそうですもの」
「否定はしません」
「メアリー様、そこは否定してほしいですわ。……ならばメアリー様が飛び出さないよう、しっかり手綱を握って差し上げます」
雰囲気は上々。戦いが始まる――




