リーダー失格ですわ
辺りを見渡すけれど、他の誰かの気配は感じられない。
「他の方はいないのかしら?」
「そうですね、今のところいなさそうです。……いや、近づいてくる魔力を感じるので、もうすぐ来ますね」
「トミーは流石に魔物の気配は分からないかしら?」
「そうですね。魔力のある魔物ならわかりますが、よっぽど高位の魔物でないと魔力を持っていませんしわかりません」
そういうことなら、周りは警戒した方が良さそうね。
「では少し広がって、近づくものがいないか見張ります?」
「わかりました。姉上は他のご令嬢を見てあげてください。僕たちで見てきます」
「ええ。よろしくお願いしますね」
そう言うとトミー達は、少し離れたところにバラけていった。
わたくしはご令嬢2人と集まり、様子を確認した。
「お2人とも大丈夫かしら?」
「わ、私はスタンホープ侯爵令嬢のおかげで大丈夫です」
「私も特に問題ありません」
チームメイトだった伯爵令嬢は、人数が増えたからなのか少し安心しているのかな。魔物と遭遇した時より、顔色は格段に良くなっているわね。
もう1人は……初対面だけれど、しっかり目も合わせられて動いていない。大丈夫そう。
待って、この方も伯爵家だったはず。なんてこと。クラス違うから名前があやふやだわ。
「スタンホープ侯爵令嬢、スタンホープ家の方がお2人いるので今だけでもお名前で呼んでもよろしいでしょうか?」
「確かにまぎわらしいですね。かまいませんわ。あなた方も名前で呼んでもよろしいかしら?」
「はい、どうぞ。スコット伯爵家のアンジェラ。アンジェラとお呼びください」
「わ、私はブーリン伯爵家のジェニファーです」
お互いに今更ながら挨拶する。いや、ジェニファー様のことはクラスメイトですし、知っていましたわ? チーム分けのところに名前書いてありましたし。けれどどうしても魔物のことで頭がいっぱいで、名前を呼ぶということを全く意識できていなかったんです! というかチームメイトの誰も名前で呼んでいませんわ! あああ、わたくし自分で思っていたよりも緊張していたのね。そんな気遣いもできないなんて。
これではリーダー失格ですわ。
と心の中で落ち込んでいると、アンジェラ様が話しかけてきた。
「ヘンリエッタ様は、トミー様のことをとても誇らしく思っているのですね。見てるだけで愛情が伝わってきました」
「あら、そうですね。トミーは自慢の弟ですわ。けれどそう言われると流石に恥ずかしいですわ」
よく過激な愛情表現していると言われるけれど、先ほどは特に大きなことはしていないし(頭は撫でたけれど、許容範囲よね?)何気ない仕草にも現れているのかしら?
「クラスでもトミー様は、ヘンリエッタ様のお話ばかりしているんです。特進クラス全体に、お2人の中の良さは広まっています」
「それは……流石にトミーに自重してもらいたいですわ」
いや、確かに。クラスメイトにもシスコンが広まっているなとは感じていたけれど。改めて第三者から言われると恥ずかしい。
思わず顔を赤くすると、ジェニファー様は笑った。
「先ほどまでのヘンリエッタ様は、近寄りがたく高潔な方に感じていましたが……やはり同じ人間ですね」
「ジェニファー様にはきついことも言ってしまったと思っております。余裕がなくて申し訳ないですわ」
「いいえ。ヘンリエッタ様は私たちが生きて帰れるようにと考えてくださっていたのは、理解しております。それに甘えてしまって私の方が申し訳ないです」
「ありがとうございます。そう言われると、救われますわ」
なんていい子。思わず頭を撫でたくなったけれど、流石に自重する。そんな場合でもないし。
「次こそはお役に立ちますと言いたいところですが……先ほどのことを考えると難しいかもしれません。なので私は皆様の迷惑にならないように、逃げられるようにします」
「私もお話を聞いていると、足手まといになりそうですから逃げることに集中します」
「……ええ、ありがとうございます」
そんな会話が終わった頃。トミーの声が聞こえた。
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