魔術ってすごいですわ
演習が始まった。
演習内容はわかりやすい。チームごとに分かれて、目的の魔物を討伐するというものだ。
それだけだと本格的な演習にならないので、教師が数人で魔術を行使して所謂バーチャルのような空間で行う。
場所としてはだだっ広い草原で行うのだけれど、魔術のおかげで高低差、森などさまざまな想定をした演習が出来るというわけだ。
バーチャルと決定的に違うのは、生身の体で戦うということ。もうなんか、すごい。魔術は前世の科学と似ていると思っていたけれど、ここに関しては完全に凌駕している。色々な魔術の組み合わせとは言え、何がどうなってそうなっているのだろう。
「これが魔術の力だなんて、信じられませんわ」
1人ボソリと呟く。チーム内ではわたくしが1番成績がいいのと、恐らく爵位でリーダーとなっている。
魔術師になったら、爵位に関係なく能力でリーダーになるとは聞いているけれど、初めての演習だし様子見ということで爵位も考慮されている気がする。
「スタンホープ侯爵令嬢、俺たちの目的とするポイントはここのようです」
地図を持って指し示してくれた方は、確か伯爵家の御子息ね。雷魔術が得意な家系だったはず。
「わかりましたわ。森の奥の方となっていますわね。……少し土がぬかるんでいますし、気をつけて行きましょう」
そう言って先頭に立ち、進む。と、伯爵令息が慌てたように言った。
「お待ちください。俺が先導します。いくら貴女がリーダーとは言え、危険な役目を負わせるわけにはいかないです」
「まあ、そうかしら?」
「リーダーと言えど色々な役割がありますし、スタンホープ侯爵令嬢は後ろで構えてくれればと思います」
伯爵令息の言うことも最もかもしれない。前に行くだけがリーダーではないし、参謀的なリーダーだと後ろから指示を飛ばすと言うことも大事ね。
わたくしは、どちらの方がうまく立ち回れるかしら。
殿下達との練習を思い出す。その時の立ち回りは、基本殿方が前に出ると言われた。確かにまだわたくし達は実践をしていなかったので、そうなるのも当然だわ。でも今は?
考えていると、他の令息が声を上げた。この方は子爵令息だったわね。冷や汗をかいている見たいだけれど、別に不敬と言ったりしないわよ?
わたくしの外から見た姿って、そんな感じなのかしら?
「あの、差し出がましいようですが僕もスタンホープ侯爵令嬢には、後ろに下がっていただけると嬉しいのですが」
「理由を聞いてもいいかしら?」
「はい。スタンホープ侯爵令嬢は、この中で1番爵位が高いので傷付いたら……その」
「ああ、責任が貴方方に行くことを懸念しているのね」
「……その通りです」
2人の言うことも理解できる。まだまだ身分差に関しては、発展途上だもの。
わたくしが前に行くことで、変に緊張されても困るし。ここは頷いておきましょう。
「良いでしょう。今回は基本的には後ろにいますわ。ただ、最初に言っておきますとわたくしが怪我をしたからといって、貴方方を訴える気は毛頭ございません」
「はい。ありがとうございます」
……まあ、魔物が襲ってきた場合は、皆を避難させてから単独行動の可能性が高いので断言はしないわ。
彼らも魔術はある程度使いこなせると言われているから、逃げるくらいは大丈夫でしょう。
そう考えながら、ちらと最後のチームメイトを見る。彼女は伯爵令嬢ね。
傍目から見れば緊張は見受けられない。結構しっかりした子なのね。
クラスメイトではあるけれど、皆そこまで交流はない。主にわたくしが、パトリシア様とメアリー様にべったりだからだけれど。
……貴族としては、やはり他の方との交流も大事よね。
これが落ち着いたら……いいえ、フラグを立てるようなことはやめましょう。
どうせフラグは立っているのだし、これ以上乱立する必要はないわ。
頭を振り、笑顔で号令する。
「ではよろしくお願いしますわ。行きましょう」
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