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――静粛に!
裁判官が入廷しても、法廷が鎮まることはない。囁きが波紋のように法定内に広がっていく。殺人事件というありふれた裁判にもかかわらず聴衆の興奮が冷めやらないのは被告に理由があった。
原告人席には人間。そして被告人席には――太陽。
起訴状が読みあげられていくにつれ、囁きはどよめきとなって溢れていく。裁判官は何とか平静を装っているが、淡々と読み上げられる起訴状に、陪審員や傍聴人は驚愕と困惑とで理解が追いつかない。前代未聞の裁判が幕を開けた。
いたずら企画「真夏の裁判」――ここに開廷。
声の届く範囲に太陽があったら皆燃えてなくなるよね?
擬人化? 擬人化なのか? いやいやいや! 何でも擬人化すればいいというものでもないでしょう。