「憎しみ」
「なんで、僕だけ、みんなと仲良くなれないの?」
もう二度と神父様の前で、弱音は吐かないと決めたことを完全に忘れながら、アリアスは、瞳を濡らせながら、唇を全く動かさずに、ボソボソとアバン・クラシュエア神父に愚痴をこぼした。
「君は青い眼を持っているからだよ。でもね、キレイな眼だと、私は思うよ。周りは見る眼がないね、アリアスは優しいのに」
アバン神父は優しい表情でなだめる。
アリアスは、アバン神父がなぜか、いつも優しく助言してくれることに、安心感と同時に不気味さも感じていた。
薄暗い教会の中で、アリアスは、使い古した、白色の服の袖で顔を、拭く。この教会の中で、アリアスは、アバン神父と二人でくらしていた。何故、親がいないのか、アリアスの8歳の頭では分からなかった。
アリアスは、今日、友達を欲して区営児童学校に遅れて入学したが、どうやら入学した初日に、酷く同級生に罵声を浴びさせられて帰ってきたようだ。
「お前、なんだその眼 こっちくんなよ、」
「悪魔は、こっちくんなよ、」
アリアスに、同級生から、かけられた罵声がフラッシュバックしてくる。
アリアスは、初めて、今日、憎しみという感情を覚えた。
アバン神父は、入学のことについてあまり良く思っていなかったらしいが、アリアスが初めて強く興味を持ったようなので、入学を許可し、校長にも、説得をし、ようやく、一年かけて入学させてあげたが、アリアスの酷く打ちひしがれた状態を見て、不安を抱く。 少し門を開いてしまったような感覚だ。
青い眼を持つ人間は悪魔の契約者になりやすいと言われているため、生まれてきた赤ん坊がそうだった場合は、親に殺されることが多い。または、育てられた場合でも、他の人間から辛辣な扱いを受ける。
このネオタード国では、悪魔と契約した、契約者と呼ばれる人間があちこちで、悪行を行っているらしい。
そして、その契約者を討伐するため、悪魔払いという国家組織が存在する。 悪魔払いは、この国では、国民からの厚い信頼をされ、大きな権力を持っている
。
だが、実際のところ悪魔の実態や、悪魔払いの目的など、あやふやなことが多い。それでも、信頼を勝ち取っているのは、それほど契約者による影響が大きくそして、悪魔払いが契約者を薙ぎ倒しにしているからだろう。