表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/18

新たな作戦

「噂じゃ、あんたの従兄、騎士団長の息子だってね?」

「えっ? そうなの?」

「違うのかい? ただの噂かもしれないけどね。騎士団長は侯爵様だっていうから、あんたもお嬢様なんだと思ってたよ」

「私は……」

「ごめんね。立ち入ったこと聞いて」

 サイラスが借りてくれた家の近くには、砦に務める騎士が多く住んでいて、向かいの家のアルマさんの旦那さんも騎士をしている。アルマさんはお料理が得意なので、私に教えてくれている。やさしくて頼りになる人だ。

 アルマさんに教えてもらった料理は、さすがの出来上がりだ。胃袋を掴む野望はまだ捨てていない。

 

 サイラスが砦の勤務から帰って来た。

「いい匂いだな。腹減った」

 出迎えると、サイラスが台所から漂う香りを嗅いでいる。今日は自信作です。

「今日は、向かいの家のアルマさんに料理を教えてもらったの。今まで塩とバターぐらいしか知らなかったけれど、ハーブやにんにくも使ってみたの」

「そうか、すごく美味いぞ」

 相変わらずの食べっぷり。こんなに食べて貰えたら、作ったかいがあります。

「アルマさんがね、サイラスは騎士団長の息子だって。それに、騎士団長は侯爵様とも言っていた。本当?」

「まあな。勘当されているから、今は関係ないけどな」

 貴族の息子だと聞いていたけれど、まさか侯爵様だったなんて。この間買ってもらった本の主人公が、侯爵令嬢だった。雲の上の人だと思っていた。

「私は、サイラスの従妹ということになっているけれど、無理があると思う。やはり、使用人が良かったかも」

 ただの村人の私が、どうしたら侯爵子息と従妹になるのかがわからない。

「セシィの境遇を活かそう。俺の母親の妹が男と出奔して、おまえが出来たと。両親が亡くなって、俺が引き取ったということにすれば、完璧だな」

「お母さんって、貴族?」

「伯爵令嬢だった」

「無理だよ。私の母親は平民だし」

「細かいことは気にするな」

 私の育った国では、貴族を騙るだけで重罪だった。この国では捕まったりしないのかな。

「それにしても美味いな。さっさとセシィを嫁にやらんと、困ったことになるな」

 なんですと。頑張って美味しいものを作ったのに、追い出されそうになってる。

「なぜ、困るのよ?」

「一人になったら、騎士隊の飯を食うことになるが、こんな飯食っていたら、不味くて食えなくなるかもしれんからな」

「それなら、私がずっとご飯をつくるよ。嫁になんか行かない」

「それは駄目だ。いい男を見つけて、さっさと嫁に行け」

「私を追い出したい? 邪魔になった?」

「いや、従兄妹なんて微妙な間柄にしてしまったから、セシィがここにいついてしまうと、俺との関係を疑われてしまうからな」

「疑われたら困る?」

「俺は結婚なんてするつもりはないから困らんが、おまえは困るだろう」

「私も困らないもの」

「今は、子どもだからだ。やはり、兄妹設定にしておくべきだったか」

「私が侯爵家の娘って、無理がありすぎる」

「父の愛人の子とでも言っておけば、ばれない」

「お父さんって、愛人がいたの?」

「いや、母を溺愛していた。うっとうしいくらいだった」

「それじゃ、ばれるじゃない。とにかく、私は嫁になんか行きませんから」

 

 はぁ、胃袋掴む作戦も失敗かな。

 アルマさんにお化粧を教えてもらおうかな。ちょっとは大人の女として見てもらえるかもしれない。

 待っていろ、サイラス。こんな綺麗な女は見たことが無い。嫁に来てくれって言わせてみせる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ