生還と村落
目の前で次々と矢に貫かれていくゴブリンに、呆気にとられた遼は、3体のゴブリンが沈黙しても動けなかった。
「おい、そこのお前!森で呆けるな。死にたいのか!?」
そんな叱責を受けて、遼はようやく再起動した。
「あ、ああ、すまない。助かった」
そうして振り向いて、再び言葉を失う。透明感のある雰囲気、尖った耳。明らかに自分が知らない、否、ファンタジーの中でしか知らない人種だった。そして何より、美人だった。
「だから、呆けるな!」
「…いや、とんでもない美人で驚いた」
そんな事を口走りながら、我ながら存外余裕が有るなどと考えていたが、現実は得てして非情である。
「…こんな時代だ、衆道も理解はするが、私は御免だ」
人の夢と書いて儚い。日本産アイドルが裸足で逃げ出す別嬪さんは男だった。後々知る事になるが、エルフは男女の外見がほぼ同じだ。体脂肪率が共通して平均2%程しかないのだ。見分け方は耳で、女性はやや下向きをしている。
「とりあえず、ここは危険だ。村に案内するから付いて来い」
「……ああ、宜しく頼む」
ショックが抜け切っていない遼は、辛うじて返事をして、エルフの後に続いたのだった。
その後、会話も無く30分程歩いてエルフの集落に辿り着いた。村は鳴子と柵で囲われており、簡易な砦の様であった。
「とりあえず村長に会って報告をする。お前の今後も相談しなくてはな」
そうして入った村は、思った以上に文明レベルが低かった。なにせ、鉄が見当たらない。製鉃技術は有るかもしれないが、農具に使われていないのなら、未だ十分に発達していないのだろう。
村の様子を観察しながら進んで行くと、周囲の物より1回り大きな家屋に着いた。材質は日干し煉瓦よりはマシと言った所だ。もちろん平屋である。
「村長。狩人レザックだ。森で人間を拾った」
どうやら恩人のエルフはレザックと言うらしい。
「まあまあ、拾っただなんて。とりあえず、お入りなさいな」
そう言って姿を現したのは、鳥の羽や色鮮やかな石で身を飾ったエルフの老人だった。
一応、ヒロインも出す予定でいますが、まだ先のつもりです。
しかし、己の文才の低さに泣きそうですネ。
誤字には気を付けていますが、見つけたら教えて下さると嬉しいです。
序章は、次かその次くらいまでの予定です。