魔王が人間に事情聴取される
劣悪で野蛮な人間に翼と角をもがれ、激痛で思わず気を失いそうになったが、このまま意識を失えば人間どもから嬲りものにされるのは目に見えている。しかし、そんな想いとは裏腹に瞼が自然と落ちてくる。
「ちょっと! 寝たふりしないの」
そう強引に揺さぶられ、辛うじて意識が戻って来た。
この女は、不眠不休で我に拷問を受けさせる気なのだ。何という凶悪さ。
「今から調書書くから。名前は?」
人間は紙に何やら書き始めた。
「……我を知らぬと言うのか?」
「ネットで調べたんだけどアニメにも漫画にも無かったのよ。どうせ同人誌かなんかのコスプレでしょ? 知らんよそんなもん。むしろ、そんなんどうでもいいから本名は!?」
「レジストリア」
「……職業は?」
「魔王」
「歳は!」
「300歳」
「もうわかった! あんたが真面目に質問に答えないことはよーくわかった」
「無礼な! お前如きの問いに真摯に答えておるだろうが!」
「はいはい、ある意味真面目よ。そうやって我が道を進もうとするあなたは真面目だとお姉さんは思うわ。でも、あなたがそうやって意地張ってると、こっちだって身元の保証が出来ないでしょう? 別にこっちはあなたが犯罪者だって思ってないよ。ただ、親御さんに来て貰いたいだけなの」
「……ま、まさかお前、我を人質に父上を!?」
「なんでそーなるっ!」
結局、二時間ほど言い争いは続いた。