魔王が角も、もぎとられる
これは、一体、何の悪夢であろうか。
数万のモンスターと魔族を束ねその頂点として君臨し続けた我が、大陸中の人間を絶望と恐怖の冥府に叩き込んだこの我が、今まさに唯の女に拷問を受けているのだ。
ベリッ! ベリリリベリッベリッ!
もう片方の翼も捥がれ、またしても気が狂わんばかりの苦痛が全身に広がり、思わずのたうちまわってしまいそうだ。しかし、このような拷問に苦悶の表情を浮かべるなど、この女を喜ばせるだけだ。
「さて、残すはその角だけね」
「はぁ、はぁ、この……魔王の角までももぎ取ろうと言うのか!」
何たる屈辱。この300年間触れられたことなど、幾たびも無かったこの角を。
「いい加減にしなさい! またつければいいでしょ!」
つけれるか―!
ぐあああああああああああああああああああああああああ!
「あー、これも中々取れないな……額に接着剤つけるなんてある意味凄いよ、あなた。でも、危険だから、二度としちゃだめよ。交番長! 見てないで手伝ってくださいよ」
な、何やら全く同じ展開。
「は、花ちゃん、さすがに勘弁してやれば?」
――おい、もっと必死に止めろぉ!
「いいから引っ張ってください……せーのっ!」
ぐあああああああああああああああああああああああああ! やっぱり同じだった!
ベリッ!
と、取れた! 我が角がっ! 我が誇りと自尊心が!