パーティーは全滅した
戦いは一進一退の攻防を極めたが当初の予想通り魔王軍優勢は変わりなかった。
「はぁ、はぁ、アレス! もう、限界だ。そろそろアレの出番だ!」
そう戦士リアンが叫ぶ。
「まだだ! まだみんな力を出し切ってない。アレは最後の手段だ」
「いえ、出すべきよ、アレス」
そう大賢者ラーミアも戦士リアンに同意した。
――まだだと言っとるだろうが!
「魔王レジストリア、私たちが何の準備もしてこなかったと思ったのですか! この時を決戦に選んだ理由、あなたにわかりますか!」
大賢者ラーミアは叫んだ――この野郎、勝手なことしやがって!
「……まさか、光のオーブを?」
途端に、魔王レジストリアの表情が大きく曇った。
「さあ、アレス。光のオーブをっ!」
全員の視線が一点に注がれた。
「あ、あれぇ? ない、ないぞぉ。確かに、絶対に、胸のポケットにしまってあったはずの、光のオーブがないぞぉ」
できるだけ大袈裟に、そして大声で叫んだ。
「ないって……アレス、どういうことだ?」
冷静な問いかけが武闘家シリュウから入った。
「いや、それがないんだ。光のオーブが。どういう訳か。俺は、確かに、胸ポケットに、しまったのに。ああ、さては魔王め。お前、まさか、光のオーブを盗んだなぁ!」
もはや死ぬのは確定なので、せめて魔王に罪をなすりつけようと必死に哀願した。
「えっと……いや、知らんが」
真面目か!
「ウソつけ! お前の言うことなんて、信じられる訳ないだろう。なあ、みんな」
そう周りに問いかけると、みんな明らかに、疑念のまなざしを向けていた。
「罠だ! これは罠だ! 俺たちに仲間割れをさせて、戦力を削ぐ作戦だ。くっそぉ、なんて卑怯な」
「愚か者! なんで魔王である我が、そんな卑怯な真似をする必要があるのだ! そう言うのは、お前ら人間のような弱者がする事であって、我はいつでも正々堂々勝負している」
大真面目か! 魔王のくせに。
「仕方ない、みんな。光のオーブなしで戦おう」
戦士リアンが投げやりに叫んだ。
「そうだ、魔王レジストリアっ! 俺たちは、光のオーブなんかなくても――」
「アレス……もし生き残れたら、殺す」
……はい。
残念ながら、パーティーは、全滅した。




