魔王が魔王のコスプレしてる(と思われてる)
「おいっ、おい起きろ! 起きなさいったら」
そう声が聞こえ、目を開けた。
に、人間に囲まれている。そう思って身構えようとするが力が入らない。何とか立ち上がるので精いっぱいだった。眼前にいるのは、人間の女。紺色の服を着が漆黒の髪をよりひきたたせていた。周囲の視線が我だけで無く、この女にも集中しているとは、人間の中では美人の部類なのだろう。
「ここ渋谷。コスプレやるんだったら秋葉。秋葉原行ってよ。お仲間いるから」
なんか、言われているのは理解できるが意味が全くわからない。
魔法を使えば単語意外だったら理解できる。これはあらゆる種族を束ねる者の嗜みだ。
だが、今は魔法どころか瀕死の重傷を負っているのだ。
「ってか凝ってるねー。緑色の血まで演出して」
――ぐあああああっ、き、傷口をえぐるんじゃない!
「ほらっ、早く立って。そう言う演技はいいから」
こ、殺してやる。憎き人間め。身体さえ万全ならお前などっ。
「花ちゃん! そんなに雑に扱っちゃあだめだ。まあ、君みたいな女の子にはそのコスプレ魂がわからないのも無理はないが」
そう言いながら一人の男が人だかりから割り込み、馴れ馴れしく肩を叩いてきた。当然だが意味はわからない。
「交番長も好きですもんね、どうします?」
もう一人の女がそう言った。
「いいか? コスプレイヤーってのはあくまで役になりきるもんなんだ。こいつのやってるのは……『傷ついた魔族』ってとこかな。まあ、俺が知らないアニメってことはかなりの上級者。気合が入ってる事は間違いないな。こいつはこのまま瀕死のフリを貫き通すだろうよ」
「でも、こいつも渋谷でやんなくても……目立ちたかったんですかね?」
「……まあ、駅間違えたんだろう。しかし、それを言ってやるのは野暮ってもんだ。おい、パトカーに新聞誌敷いとけ。秋葉原まで送ろう」
何やらわからないが、二人の人間に運ばれ、知らない乗り物に乗せられた。