魔王、秋葉原へ行く
タオルとやらで身体を拭き、渡された服を素直に着た。
「やっと着替え終わったのね。じゃあ、行こっか」
花が不機嫌そうに我の前を歩く。
「……我をどこへ連れて行こうと言うのだ?」
「秋葉原よ、あんたのお仲間がいっぱいいるところ?」
「ほ、ほんとうか!? 我と同じ魔族がいると言うのか」
そう聞き返すと、面倒くさそうに頷く花。
「……何を企んでいる?」
「だーかーらーっ! 交番長の命令なの。連れて行ってやれって。じゃなきゃなんであんたなんかに……」
そう花はブツブツ呟きながら歩く。
そうか、あの交番長……親子揃って中々の徳を備えている。人間の中にも、こういう者たちがいること、深く覚えておかねばならぬ。
外へ出てしばらく歩くと、まるで別世界だった。中でも車や電車と言う名前のオーガより大きな乗り物の大きさには度肝抜かれた。この国では電気と言う雷属性の魔道具がはびこっているらしく、ぶつかると危険だ。しかし、この車の動き方に、規則性があることを発見した。どうやら、信号機という雷属性の魔道具が赤く点灯した時、止まる。
その電車とやらに乗り込んで、しばらく移動すると花が途中で降りた。
「早くっ! こっち来て、ここだから。ここが秋葉原」
ここが秋葉原……魔族の住む町か。
「……しかし、人間が多いな。花、こんなに人間がいるところに本当に魔族がいると言うのか?」
「……」
無視……か。こいつの性格の悪さにもだいぶ慣れた。
さて、どこに行けば我が手下に会えるやら。




