魔王が人間にクソ魔王と呼ばれる
仙道花という女に変態扱いされた。人間とは全くもって不可解だ。いや、寧ろこれほど器量の狭いのが人間と言う生き物なのか。
「……魔王と人間、種族が違うからお前は我を『変態』と呼ぶのか? 問おう! お前の言う変態の定義はなんだ?」
「魔王とか人間とかはどうでもいいのよ! 年齢! あんたいい歳してこんな小さい女の子が好きなんてどうかしてるの! それは、どうかしてるのよ」
そう言いながら、花は非常に精巧に描かれた幼少の女である絵を指さした。
「だ、誰が今の話をしている! 我は今、300歳だと言っておるだろうが! 想像力の満たぬお前には理解できぬだろうが我も幼少期はあったのだ! 同年齢ぐらいの子に想いを寄せることくらいあるだろうが人間だって!」
「えっ……だってあんた16歳って――」
「人間の尺度と一緒にするな! 人間の16歳は成人くらいの大きさかもしれんが我ら魔族は違う。生まれてから約10年間は余りの魔力の大きさ故にずっと赤子のままなのだ。それから、人間と同様の成長が始まる。故に生育度で言えば、人間の5歳と同年齢ぐらいだ」
「な、なんて紛らわしい設定。知らんわよ、クソ同人誌のクソ物語のクソ魔王!」
そう荒々しく吐き捨てる、花。
――なんという分からず屋な女だ。我は『設定など知らぬ』と言っておるのに。そんなにこの国の人間たちはそんなにも魔族に馴染みが無いのだろうか。
「……いや、寧ろ哀れ。自身の想像を超える者に出会った時、認めることができぬ弱さ。矮小なる人間に出会ってしまった我が身を呪うしか、今は術がない」
「はぁ、もういいわ。とにかく、早くご飯食べて風呂入って。千草ちゃん、沸かしてくれた?」
「うん、さっき入れたからお湯入ってるはずだよ」
千草がニッコリと笑う。
「なんだ……そのお風呂と言うのは?」
「まさか、あんたお風呂も知らないって言うんじゃないでしょうね? シャワー派とか知らないわよ。どうでもいいからその汚れきった身体を綺麗にしなさい」
「くっ、貴様ぁ! 人間文化を知らないからと言って侮るとは器量が知れるぞ。お前だって魔族内における『魔族八大罪』の事など知らぬであろう! 一緒の事だ!」
「こ、このやろっ――」
そういいながら掴みかかろうとする花を必死で止める千草。
「花ちゃん、ちょっと落ち着いて。とにかく、お風呂入ろう魔王さん。気持ちいいから。ねっ?」
千草がそう言って笑いかける。
「うむ……まあ、お前がそう言うならばその『お風呂』とやら、入ってやってもいい」
そう言うと、千草はホッと大きい胸を撫で下ろしたようだった。
「じゃあ、案内するね」
「わかった。じゃあ、まずは千草。要領を得るためにお前が先に入れ」
「えっ!?」
明らかに顔が真っ赤になる千草。
「どうした、何もやましい事が無ければ入れるだろう? さてはお前何か罠を――」
「こーのーエーロー腐れ魔王がぁ!」
ぐわあああああああっ! またしても花に傷口をえぐられた。




