魔王と勇者が決闘してる
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一つの決着がつこうとしていた。
かつて無いほどの傷を負わされ、何匹もの仲間が死に絶えていた。
そんな状況にも関わらず、自然と笑みがこぼれていた。
「魔王レジストリア! なにがおかしい!」
勇者と呼ばれる人間が警戒心をこちらに向けた。
「……いや、これで最後。そう思うと自然にな。意味など無い」
そう自身の宿敵に答えた。
人間世界を蹂躙し続けて300年。よく、ここまで来たかと思わず笑いが込み上げてくる。
何のことは無い、魔の者として生を受け、人間を殺すことのみに全てを懸けた。
自身の命も、仲間の絆も命すら惜しげも無く懸けた。
我に刃を向ける者を悉く殲滅し、恐怖で大陸に君臨し続けた。
「……気が合うな、こちらも最後。全てをお前に注ぐだけだ」
そう勇者も不敵に笑った、あちらの陣営もすでに立っているのはこの男のみ。
当然、こちらにも恨みもある。共に人間殲滅を誓った唯一無二の戦友も殺されている。この勇者には何度殺しても足りないぐらいの憎悪がある。
しかしそれでも、ここまで死闘を尽くした共鳴。その場にはそれがあったのだと思う。
最後の生命を降り注ぎ、自身の魔力を高め始める。当然、相手の力の増大も感じ取れた。
死線を懸けた戦いに、今までの人生が走馬灯のように頭に巡る。
――そうか、一つだけ、あったな
この人生における唯一の未練。今まで誰にも言えなかった秘密。どれだけ詫びても、足りないぐらいの悔い。
「……いくぞ」
迷いを振り切り、勇者に向かって走った。
互いの刃を合わせ、壮絶な光がはじけ飛ぶ。意識がすでに途絶えながら、これが最後になると感じると、言わずにはいられなかった。
すまん同胞たちよ、俺には、忘れられぬ人間がいる。
それが勇者に聞こえていたのかどうかはわからない。
ただ、拡がる光と共に自身の肉体も消えていくのを感じた。